1。BOYミーツGIRL
文字数 694文字
この光の穴の先には、ゆったりとした空間があった。
最初は大好きな風景だった。
それは10代で見た地平線。そこに沈んでいく太陽。なんて自分の存在は小さいのかと涙が出たのを覚えてる。その異国の情景がこの光の穴の先にはあった。
そして、何度目かに、様相を変えて、大きな水槽が現れるようになった。
それは大きな水族館にあるような巨大な水槽。水槽の中では、体長6mほどのエイが1匹泳いでいた。
それはとても雄大で、妙な緊張感のあるものだった。怖さもあるのになぜかずっと見ていられた。
そうして、ある時、ここには
色白で、透けていきそうなほどの透明感のある肌艶、それでいて、健康そうな唇の色と潤いのある瞳……。ふんわりと流れる髪質は、きっと柔らかく手に触れるとドキドキするのだろう。
そんな容姿の彼は、いつもチェロを手にして、落ち着いた雰囲気の椅子に座っていた。それ自体は派手ではない普通の椅子。けれど、座りやすそうな椅子。
そこに座っている彼は、今にもチェロを奏でそうな体制なのだが、一向に弦を弾かない。
それを、私はずっと見つめていた。
演奏は始まっていない。
けれど、そこにそうしている佇まいが、あまりにも目を惹いて。美しくて、優しい、暖かな時間と空間だった。
音が聞こえるわけでもないが、とても穏やかな気持ちになり、ずっと見ていられた。
「だれ?」
気がつくと、彼の瞳が私の方に向けられている。
こういう状況は今までなくて、すぐに現状把握が出来ない私……。
「……だれ?」
再びの質問に、ハッと我に返る。
「……ごめんなさい…」
なんと間抜けな返事をしたことだろう。
最初は大好きな風景だった。
それは10代で見た地平線。そこに沈んでいく太陽。なんて自分の存在は小さいのかと涙が出たのを覚えてる。その異国の情景がこの光の穴の先にはあった。
そして、何度目かに、様相を変えて、大きな水槽が現れるようになった。
それは大きな水族館にあるような巨大な水槽。水槽の中では、体長6mほどのエイが1匹泳いでいた。
それはとても雄大で、妙な緊張感のあるものだった。怖さもあるのになぜかずっと見ていられた。
そうして、ある時、ここには
彼
が現れるようになった。色白で、透けていきそうなほどの透明感のある肌艶、それでいて、健康そうな唇の色と潤いのある瞳……。ふんわりと流れる髪質は、きっと柔らかく手に触れるとドキドキするのだろう。
そんな容姿の彼は、いつもチェロを手にして、落ち着いた雰囲気の椅子に座っていた。それ自体は派手ではない普通の椅子。けれど、座りやすそうな椅子。
そこに座っている彼は、今にもチェロを奏でそうな体制なのだが、一向に弦を弾かない。
それを、私はずっと見つめていた。
演奏は始まっていない。
けれど、そこにそうしている佇まいが、あまりにも目を惹いて。美しくて、優しい、暖かな時間と空間だった。
音が聞こえるわけでもないが、とても穏やかな気持ちになり、ずっと見ていられた。
「だれ?」
気がつくと、彼の瞳が私の方に向けられている。
こういう状況は今までなくて、すぐに現状把握が出来ない私……。
「……だれ?」
再びの質問に、ハッと我に返る。
「……ごめんなさい…」
なんと間抜けな返事をしたことだろう。
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