4:久しぶりの再開で急展開、みたいな。

文字数 892文字

(……ああ、もう。じれったいなぁ)
 ……ちょっと。

 終業時間が近いからって、いくらなんでも時計をガン見しすぎでしょうが。

 ――そ、そんなことないでござるよ!?
 いや、あなた。図星突かれたからって動揺しすぎじゃない?
 ……んん。急に声をかけられたからよ。

 と言うか、今日の定常業務はちゃんと終わってるでしょう。

 だったら、あまった時間をどう使ったっていいじゃないの。

 ……その時間にも給金が発生しているんだけどね。
 ――はっ、笑わせないでよ。

 私が暇で暇で仕方ない日が続いているってことは、

 これ以上なく良い状況だってことしょうに。

 ……まぁ、あなたが言っていることも正しいとは思うけれどね。

 世の中、正直なだけじゃ回らないことも多いものよ。そうでしょう?

 サイテーな事実ってやつね。イライラするから、こんな話は止めましょう。

 今日もこうやって――

 ――二人の会話を中断するように、電話の呼び出し音が部屋に鳴り響きました。
 その音を聞いて。

 サーニャちゃんはこの世の全てを嘆くように、大袈裟で大仰な所作で天を仰いで見せましたけれど。

 沙雪さんはそんなサーニャちゃんの様子を気にせずに電話を取りました。

 ――はい、承知しました。
 そして沙雪さんは電話先の相手と二三言葉を交わした後でそう告げると、通話を切りました。
 ちょうどその直後に、終業を告げるチャイムが鳴って。
 ――私は行かないわよ。
 電話は終業前に来ていたから、それはナシね。ご指名だもの。
 ラストオーダーの時間は普通、終業時間よりも前でしょうが!
 ……どこの飲食店の話よ、それ。いいから行くわよ。
 ――だああああ、もう! わかったわよ、行けばいいんでしょうがっ!

 残業強要のブラック企業なんてサイテー!

 これが終わったら転職先でも探す?
 そうさせてくれるんなら是非ともそうしたいところですけどねぇ!?
 まぁ難しいでしょうね。
 ……はぁああ、もう。そんなのわかってるっつーの。

 ――ああもう、ぱっと行ってさっと終わらせるわよ!

 ええ、そうなるように努めましょう。
 そんな会話を交わした後で。

 二人は揃ってこの部屋を出て行きました。

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登場人物紹介

名前:サーニャちゃん

特記事項:感情家、口がちょっと悪い


思ったことをすぐ口に出し、考えたことはすぐ行動に移す。

猪突猛進を地で行くような生き方は周囲に迷惑をかけることも多いけれど、悪人ではないので嫌われることはそんなにない。

名前:沙雪さん

特記事項:サーニャちゃんの友人、怒ると怖い


サーニャちゃんと付き合いの長い友人。

サーニャちゃんの扱いは慣れたものだが、引き起こすトラブルに慣れたわけではない。

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