#04 こうもりの大群
文字数 1,714文字
遠くの空からゴロゴロと
前方にうっすらと浮かび上がる扉。
二人はとうとうデボルド=ベルモール公爵家、通称“魔物たちの館”へたどり着いたのである。
ギィギィギィ──────……。
鈍い音を立てて、扉は開く。
目の前に広がる真っ暗な暗闇。
ランプの明かりだけを頼りに、二人はキョロキョロと辺りを見回しながら館に入った。
すると、そのときだった。
暗闇の中からキーキーという高い音と、バサバサと何かが飛んでくるような音が聞こえたのは。
二人は館の奥を照らす。
黄色く光る黒い物体が、キーキーと鳴きながら、二人に迫ってくる。
ブリュノは叫ぶと、ぼうっと突っ立ったままでいるジゼルの体をグイッと引き寄せた。
ガシャンッ!
その拍子に、ジゼルの手からランプが滑り落ちてしまう。
ジゼルの体に覆い被さるように、ブリュノは床に伏せた。
二人の上をけたたましい鳴き声とともに、すさまじい速さでコウモリが飛び去っていった。
ブリュノはそう言うと、階段を照らした。
階段の壁に掛けられた無数の肖像画。
歴代の当主か、家族の肖像画だろうか。
ジゼルは肖像画をながめながら、ブリュノの後に続く。
階段の踊り場に掛けられた、1枚の肖像画に目を留める。
無表情で、ぞっとするような鋭い目つきの男性に────。
先ほどのコウモリの大群が森の中へとやってくる。
木の枝に1匹ずつ順番にぶら下がると、キィキィキィと甲高い声で笑い出した。
そう語るのは、あのときブリュノが助けてあげた老人。
肩を震わせながら、見る見るゴブリンの姿に変化する。
コウモリたちは口々にそう言うと、さらに森の奥へと飛び去っていった。
ゴロゴロ…………。
ゴロゴロ…………。
遠くの空で雷鳴とともに
ドミニクは空を見上げてつぶやく。