第26話 少女の願い

文字数 1,033文字

(…声を荒げたのは、僕のスマホの中にいる女の子だった。)
…あーらら。聞かれちゃってたか。
…全部、私のせいなの…!
私のせいで、松岡君は…!
違う!!君は何も悪くない!!!

全部、俺が勝手に…!!

…まあ、もう潮時だよね。

全部話してあげなよ、梓鏗ちゃん。

…はい。
…私、悔しかったんです。
昔から体が弱くて、運動会でみんなの足引っ張っちゃって…。だから、中学校最後の運動会くらい、活躍したくて…。
…だから、松岡君と一緒に競技の練習をしてたんです。
…でも、運動会の前に体調が悪化して、病院に逆戻り…
…私、運動会に行きたかった。

本番で練習の成果を出したら、松岡君も喜んでくれると思ってたのに…。

…だから、松岡君はきっと、私の気持ちを汲んで、運動会を私の退院後に延期させようとしてくれたんだと思います…。
…だから、こんな事を…。
…、みんな!!本当にすまない!!!

どうしても、梓鏗君の事が放っておけなかったんだ!!!

毎日熱心に練習に励んでいた梓鏗君の願いを、どうしても叶えてあげたかったんだ!!!
…松岡君。
みんなの運動会を台無しにして、本当に申し訳ないと思ってる…!!

償いができるなら、なんだってする!!!

…いやいや、そんなに謝んなよ。
俺の活躍が無かったことになっちまったのはちょっと悔しいけど…でも、次はもっと活躍してやるぜ!!
…松岡、そんな事情があったなんて、知らなかった。すまない。
次は、梓鏗さんも一緒の、大運動会だね!
先輩方、今度こそブッ潰してやりますんで、覚悟してくださいよ〜?
…みんな!
おいおい、ちょっと待て。何かいい感じの雰囲気になってるが、君たち何か忘れてないか?
…え?
俺だよ、俺!!

んもう、松岡君ってば!!

俺の脚をおしゃかにしておいて忘れるとか、酷くない!?

ったく、運動会を延期したいがためだけに、俺の脚をペチャンコにすることなかったんじゃないの〜!?
…え?何の事だ!!?
は?とぼけても無駄だぞ。私だって殺されかけたんだからな。
殺されかけたって…何の事だ!!?

俺は、倉庫の細工と、紙切れ入りの大玉をみんなの前で割ることしかやってないぞ!!?

…え。
(じゃあ、一体誰が林野先生に怪我を…?)



(その翌週、運動会が再び開催された。…梓鏗さんは、お医者さんから許可が下りたらしく、競技に参加する事ができた。)
(梓鏗さんの活躍のおかげで、僕ら3年生は見事優勝を果たした。)
(…こうして、僕らの大運動会は幕を閉じた。…しかし、家並さんを殺そうとした犯人については、未だに謎のままだ。)
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登場人物紹介

和戸 尊(わと たける)

14歳。中学3年生。

通称ワトソン君。

転校生の紗音に振り回される苦労人。

家並 紗音(やなみ しゃのん)

14歳。中学3年生。

御簾照中に転入してきた迷探偵。

厨二病を拗らせており、自身をシャーロック・ホームズの生まれ変わりだと信じ込んでいる。


天明 一才(てんめい かずさ)

14歳。中学3年生。

イケメンで文武両道の生徒会長。

とある事件に巻き込まれてしまい…?

樋貝 芽亜里(ひがい めあり)

14歳。中学3年生。

紗音たちのクラスメイトの女の子。

双子の兄がとある事件に巻き込まれてしまい…?

林野 幸(りんの みゆき)

23歳。自称王子様。

謎多き青年。

とある事件で、紗音たちと出会う。


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