第1話
文字数 880文字
ご近所さんは、言っていました。
あの、おばあちゃんはよっぽど花が好きなのね。
でも、どうしてあの畑には花が咲かないのかしら。
もう、諦めたら良いのにと。
そんな噂話をされながら、今日も口をへの字にして、おばあちゃんが畑にやってきました。
その畑は、おばあちゃんの家から歩いて5分ほど
の所にあります。広々とした畑です。
畑なのですが野菜は作りません。
この畑には花しか作らないのです。
への字口のおばあちゃんはそう決めたのです。
でも、今のところ1本も花は咲いていません
それどころか、1つの芽も出ていません。
ですが、今日も茶色の地面に水を勢いよく
まきました。
すみからすみまで、これでもかと言うくらい
まきました。
もうそろそろチューリップが芽を出してもよい頃です。でも茶色の地面はピクリとも動きません。静かなままです。
ある年、への字口のおばあちゃんは
今年の夏、絶対にひまわりを咲かせてやると、
シマシマの種を蒔きました。でも何日たっても
茶色の地面は静かなままです。
その静かな地面に、これでもかと毎日ビタビタになるくらい水をやるのです。
ある年、秋には畑一面にコスモスを咲かせるんだと、たくさんの種を蒔いていましたが、気持ちの良い涼しい風が吹いてきても、やはり茶色の地面は静かなままです。
なぜか、この花畑は毎年種を蒔いても、球根を植えても花が咲く事はありませんでした。
毎年と言うより、今まで1度も花畑から芽が出た事がないのです。
30年の間、1度もです。
ご近所さんは、最初にいろいろ言いました。
種に土をかぶせすぎたのかしらね、
土の栄養が足りないのかしらね、
もしかして、水のかけ過ぎかも、
もしかしてもしかして、季節を間違えた種を植えていたりして、なんて笑っていました。
でも、おばあちゃんは誰の話にも耳を傾けず知らん顔。
種を植え、水をやり、種を植え、水をやり、
黙々とそれを繰り返しているうちに、1度も花を咲かせる事なく30年が過ぎてしまいました。
いつしか、おばあちゃんに畑の話をする人はいなくなりました。
みんな心の中では、への字口のおばあちゃんの事を「かわいそうな人」だと、思って見ていたのです。
あの、おばあちゃんはよっぽど花が好きなのね。
でも、どうしてあの畑には花が咲かないのかしら。
もう、諦めたら良いのにと。
そんな噂話をされながら、今日も口をへの字にして、おばあちゃんが畑にやってきました。
その畑は、おばあちゃんの家から歩いて5分ほど
の所にあります。広々とした畑です。
畑なのですが野菜は作りません。
この畑には花しか作らないのです。
への字口のおばあちゃんはそう決めたのです。
でも、今のところ1本も花は咲いていません
それどころか、1つの芽も出ていません。
ですが、今日も茶色の地面に水を勢いよく
まきました。
すみからすみまで、これでもかと言うくらい
まきました。
もうそろそろチューリップが芽を出してもよい頃です。でも茶色の地面はピクリとも動きません。静かなままです。
ある年、への字口のおばあちゃんは
今年の夏、絶対にひまわりを咲かせてやると、
シマシマの種を蒔きました。でも何日たっても
茶色の地面は静かなままです。
その静かな地面に、これでもかと毎日ビタビタになるくらい水をやるのです。
ある年、秋には畑一面にコスモスを咲かせるんだと、たくさんの種を蒔いていましたが、気持ちの良い涼しい風が吹いてきても、やはり茶色の地面は静かなままです。
なぜか、この花畑は毎年種を蒔いても、球根を植えても花が咲く事はありませんでした。
毎年と言うより、今まで1度も花畑から芽が出た事がないのです。
30年の間、1度もです。
ご近所さんは、最初にいろいろ言いました。
種に土をかぶせすぎたのかしらね、
土の栄養が足りないのかしらね、
もしかして、水のかけ過ぎかも、
もしかしてもしかして、季節を間違えた種を植えていたりして、なんて笑っていました。
でも、おばあちゃんは誰の話にも耳を傾けず知らん顔。
種を植え、水をやり、種を植え、水をやり、
黙々とそれを繰り返しているうちに、1度も花を咲かせる事なく30年が過ぎてしまいました。
いつしか、おばあちゃんに畑の話をする人はいなくなりました。
みんな心の中では、への字口のおばあちゃんの事を「かわいそうな人」だと、思って見ていたのです。
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