ベテラン交渉人の失敗 7

文字数 518文字

「どうして機動隊がここに?」

橘は思いもよらない事態に驚く。

動揺も収まらぬまま、状況は目まぐるしく変化する。

犯人は女性店員の腕を掴み、引き寄せた。

動転している犯人の動きが一つ一つ大きい。

犯人は女性店員を羽交い締めして首元にナイフを突き付けた。

勢い余ってナイフの先端が女性店員の首元に触れる。

その傷口から、ぷちゅっと出血する。

血は細い線を作り、首を通り、鎖骨の凹凸に沿って流れて、胸元に入る。

機動隊は店内で止まり、こう着状態になった。

「俺はお前を信じてた! トイレから帰ってきたら、俺はもう終わりにしようと思ってた!」

激昂した犯人は目は怯えていた。

ナイフの先端が震えている。

もうこうなっては交渉は出来ない。

「俺は捕まりたくない!」

犯人は女性店員を突き飛ばして、ナイフを自らの首に持っていく。

橘は小部屋に踏み込んだ。

犯人のナイフを持つ腕を掴もうとする。

しかし、犯人はナイフを振り回し、近づく事も出来ない。

橘が小部屋に入るのを見て、機動隊も小部屋の前まで近づいた。

女性店員は機動隊に保護される。

機動隊も踏み込もうとする。

しかし、小部屋の狭い空間に入る余地が無かった。

その時だった。

犯人は、「あー!」と叫び、ナイフの先端を橘に向けて振り下ろした。
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