第2話 ゲートフラッグ

文字数 853文字

「おい、大丈夫か?」
 入院しているタケルに面会に来たコウスケが聞いた。
「大丈夫なわけないだろ、アキレス腱断裂なんだから」
 タケルはベッドの上で顔をしかめながら言った。
「まあ、自業自得だよ。ふざけてたんだから」
「ふざけてたのはお前もだろ」
 コウスケは笑いながらベッドの横にある椅子に座った。
「入院は長くなるの?」
 一応心配そうな声でタケルに聞いた。
「あと2、3日で退院できるみたい。でも、そこからリハビリが大変らしい」
「リハビリかぁ」
「普通に歩けるようになるまで1、2か月、軽い運動ができるようになるまで3、4か月、今まで通りスポーツができるようになるまでには半年くらいかな」
 タケルはため息をついた。
「大変だな」
「学校が休みで良かったよ」
 タケルは笑顔で言った。
「でも、休みじゃなかったら怪我してなかったかもな」
 コウスケも笑って言った。
「そういうことを言うなよ。いったいお前は何しに来たんだよ」
「そうそう、これを持ってきた」
と言ってコウスケはカバンからゲーフラを出し、タケルに広げて見せた。
「ジャーン! どう?」
 そこには『コウスケ ガンバレ!』と書かれていた。
「なんだよそれ!」
「ゲーフラ」
 コウスケは真顔で答えた。
「分かってるよ。だけどなんなんだよ」
「お前を応援しようと思って。ヒマだし」
「ヒマだからかよ」
 タケルは少し照れながら言った。
「学校も休みだし、セレッソの試合もないからさ。お前のために作ってみた」
 タケルは黙ってそれを見ていた。
「来月には学校も始まるだろうし、早く歩けるようにならないとな。それにJリーグが再開する時には観に行けるようにしておかないとね」
 コウスケは大きな笑顔で言った。
 タケルは小さくうなずいた。
「リハビリがんばれよ」
 タケルは大きくうなずいた。言葉は出なかった。
 コウスケの笑顔はさらに大きくなった。
「それで、試合再開の時のためにゲーフラ作ろうよ。材料も持ってきたからさ。どうせヒマだろ?」
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