できること
文字数 1,191文字
マサアキが初めてダンジョンへ挑戦するにあたりベテランのマレスコとパルメに声をかけたのは、カレタカからパーティーを組むようにアドバイスをもらっていたからだ。
これまでにいくつかクエストを受けてレベルを上げてきたが、どれもお使いのようなものばかりでモンスターと戦ったりというのは一度もない。
だが、レベルが5になったところでそろそろ自分も冒険者らしいことをしたいと思い、冒険者ならダンジョンだろうと挑戦することにしたのだ。
二人はその日の食事代を出してくれるのなら付き合ってもいいと言ってくれた。
だからマサアキは装備を脱いでエプロンを身に着けるとギルドのキッチンに入る。
落ち込んでいる様子のマサアキを見てキョウコは少し驚いたような顔をしたが、結局は何も言わずに自分の作業に戻る。
キョウコの隣に立ったマサアキは料理の準備を始めた。
氷室にはマサアキが集めた食材も入っている。これらはギルドのクエストをクリアしていくうちに知り合った人たちから分けてもらったものだ。
鶏肉、ピーマン、タマネギ、ニンジン。それにキノコ類などを出す。
油を敷いたフライパンが十分に温まったところで野菜を入れて火を通す。
その間に角切りにした鶏肉に小麦粉をまぶし、こちらも炒める。
調味料を入れてとろみが出てきたところでナッツ類を加え、最後にごま油をかけたら完成だ。
ナッツの野菜炒めを教えてくれたキョウコに味見をお願いする。
二人はマサアキの作った料理に舌鼓を打ち、満足そうだった。
食事の間、マサアキは俯きっぱなしだった。
初めてモンスターと戦ったとはいえ情けなさ過ぎた。自分はもっとやれると思っていたのに全然だった。
それどころか二人を危険に晒してしまった。冒険者失格だと思った。
マサアキもようやく笑うことができた。
カレタカの言っていた通りだと思った。