第03話(3)

文字数 867文字

 マクスウェル家の一室。
 今日も、あの七瀬と話す事になっている。
「今日は、紅茶を入れてくれる人はいないんだね」
 ダニエルはそう言い、自分で紅茶をカップに入れ、紅茶を飲み干した。
 最近では、紅茶を入れるのはアリア――モニカの役割だった。
 あの子が、未だ、天使教と繋がっていて、自分を欺いてたとは思えない。
 彼女の目はとても純粋だった。まるで、自分に憧れを抱いていた――そう思っていたのに。
「今日はツツジの里の人が収監される日か。まさか、ツツジの里がノールオリゾン側だったとはね」
 となれば、七瀬は、それが嫌で、自分の下にいるのだろうか。
 詳しいことは、まだ、聞かないでおくが。
「ダニエル様、なんか考え事なん?」
「ああ、七瀬ちゃん。そうだね、ちょっと、君の事を考えてたよ」
「うちに気があるん?」
「まさか。そんな意味じゃないよ」
「それより、ダニエル様。情報屋のお姉さんから聞いたんやけど、エルマさんの予言ではな、このシュヴァルツ王国は復興するで」
 情報屋――ジュリア・アレンゼの事だ。
 ダニエルは、その言葉を聞いて、口元が緩む。これこそ望んでいた事実だ。
「エルマさんの言葉は効力があるけえなあ。うち、それ聞いて、ますますあんたに尽くしたくなったわあ」
「そう」
「でも、これで、あんさんがシュヴァルツ王国の第一貴族になるのは間違いないで」
「そんな事、考えてないよ。僕はただ、王様の治めていたシュヴァルツ王国を復興させたいだけだ」
「嘘、ばっかりやんなあ。まあ、うちもそんな感じであんさんに付きおうたし、これからもよろしゅう頼むなあ」
 七瀬は薄笑いをしたあと、ダニエルの部屋を後にした。
 ダニエルの家は、シュヴァルツ王国第三貴族だ。シュヴァルツ三大貴族の下位にいるのに、一番忠義を尽くしてきた。
 まさか、ソレイユ家、グローヴァー家がノールオリゾン側にいるとは。でも、これは好機だ。
 エルマの予言もある。これでもって、マクスウェル家を盛り立てていかなくては――ダニエルは、今は亡き父に誓ったのだった。
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登場人物紹介

エレン・ディル(16)

シュヴァルツ王国第二皇女の少女。

性格はほのぼの穏やかだが、王女としてのプライドはある。

フェイを心の底から信頼している。

亡国となったシュヴァルツ王国を再建する為に、奮闘する。

フェイ・ローレンス(17)

エレン姫に仕える護衛騎士。

クールで一匹狼だが、面倒見が良い。

エレンの事が好き。

エレンの夢の為に、フェイもまた奔走する。

セレナ・エーデル

ニコラが作った機械人形。

通称・仮初めの姫。

たどたどしく喋るのが印象的。

アレックとニコラを親のように感じている。

アレック・リトナー(20)

おちゃらけている謎の剣士。

セレナとニコラを連れて、旅をしている。

昔はセレナ姫の護衛騎士だった。

セレナ姫と瓜二つのセレナに特別な感情を抱いている。

ニコラ・オルセン(19)

腕の立つ技師。

部乱暴なしゃべり方で心は熱い。

アレックとはなんやかんやで仲が良い。

機械人形・セレナの親的存在。

香月七瀬(16)

ツツジの集落に住んでいた香月家の少女。

今は家出して、ダニエルの元にいる。

明るく元気な性格。

ダニエルの事を少々気になっている様子。

ダニエル・フォン・マクスウェル(25)

若き青紫男爵家領主。

シュヴァルツ王国を再建する為に奔走する。

物腰柔らかで爽やかな性格。

七瀬の事をなんやかんやで信頼している。

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