「旅の支度!!」
文字数 3,377文字
~~~新堂助 ~~~
コクリコとの出会いから二週間後。
一学期の終業式が終わった日。
ケルンピアへ向けて旅立つ日。
俺はいったん家に戻ると、居間で旅支度の再確認をしてた。
ケルンピアに持っていくものを、畳の上に並べてた。
何を持っていくか昨夜までさんざん悩んでたけど、結局いつもの山ごもりの時と同じ装備にした。
大容量の登山バッグ。着替え歯磨き洗面用具。雨着にシュラフ、簡易テント、携帯コンロ、サバイバルキット。困ったときの携帯食料、飲料水、各種医薬品。ライター、マッチ、地図、コンパス、熊避けの鈴。身分証明証としてのパスポート。お金が少々。
……じゃっかん意味なさそうなものもあるけど、ま、いいだろ。
今回はなんせ場所が場所だけに、そもそも何が役立つかわからないし。
使い勝手よりも、いつもの相棒たちが一緒にいるっていう安心感のほうを重視した。
聞けば妙子は、普通の国内旅行用の荷物に加え、汎多元世界規格のノートパソコンを用意してた。機械世界マドロアの新製品で、いま全世界的に大流行してるものらしい。
各種族各言語に対応した翻訳ソフト。地域地図。動植物の生態や、世界の歴史を閲覧出来るエンサイクロペディアも入っていて、なるほど、聞けば聞くほど便利な代物だった。
「でも、お高かったんでしょう?」と聞いたら「経費 で落とした」としれっと返された。
カヤさんが重いため息をついていたから、相当値の張るものだったらしい。
御子神の準備も基本的には妙子と似たようなものだが、旅行バッグではなくずだ袋に入っていた。
そしてもちろん、現代の武士はノートパソコンではなく武器を持っていく。
愛用の竹刀に加えてもう一本。白木の鞘に納まった真剣だ。
なんでも御子神家秘蔵の品だとかで、ご丁寧に封印までされている。
あの楪 さんが、「どうしても必要な時以外、決して抜かないように。抜く時は死をも覚悟なさい」と、くれぐれも念を押してきたらしい。
ねえなにそれ。なんで抜いたほうが死ぬの? 邪神でも封印されてるの?
シロの準備はカヤさんが代わりに行った。
なぜかといえば、それはあいつが余計なものばかり持って行こうとするからだ。
風呂敷いっぱいのゲームとかマンガ本とか……友達の家に遊びに行くわけじゃあるまいし。
ま、個人的には楽しい旅行気分なんだけどさ。
かなーり、ウキウキなんだけどさ。
ひと通りの旅支度を終え、姉貴への書き置きを書いていると……。
「タスクタスクタスクー!」
今日も元気いっぱいのシロがやって来た。
ドタバタ、興奮した様子だ。
「どうじゃ! どうじゃどうじゃタスク! 似合うじゃろう! かっこよかろう!」
「へえ……」
シロの服装が、いつもと違った。
人型機械兵器に乗るパイロットが着るような感じの特殊スーツだ。
鮮やかなオレンジに赤のファイアパターン。質感はビニール地を思わせる。
爪先から首元までを隙間なく覆っていて、肌にぴったりフィットしてて、ボディラインがはっきり浮き出てる。
シロのお子様体型がよくわかる。
「パイロットスーツ! パイロットスーツじゃって! かっこよかろう!?」
いつもお仕着せの巫女服を着てるシロにとって、違った服装を出来るのは嬉しいことなのだ。
ぴょんぴょん跳ね回って決めポーズみたいなのを決めて、キラキラ笑顔を浮かべてる。
「おーおー、かっこいいかっこいい」
「そうじゃろう!? そうじゃよなあ!?」
「似合ってる似合ってる」
「うむうむ! うむうむうむ! さっすがタスクはよくわかっとるな!」
「未来的なフォルムのおまえには、ぴったりだよ」
「うむうむ……うむ?」
言葉の真意がわからず、首を傾げるシロ。
「ほ……本当に、この格好で行くのか?」
御子神が、心細げな声を出しながら現れた。
「御子神……おまえ……」
俺は思わず立ち上がり、一瞬言葉を失った。
さっきも言ったように、パイロットスーツはボディラインがはっきり浮き出るデザインだ。
シロの場合はお子様体型が、御子神の場合は……。
「……エッロ! エッロいなあー! おまえが着ると!」
引き締まった足首、肉感的な太もも、ぷりんとしたお尻、ぺたんと引っ込んだお腹、そして……。
「ば、バカ! 見るな! そんな目でジロジロ見るな! あとエロいとか言うな!」
「いやエロいよ! めちゃめちゃエロいっておまえ! なにそれ! なにその胸! 乳房! おっぱい!」
「おっぱ……!? はああ!?」
「中に何が入ってんだよ! あれか!? 夢が詰まってんのか!? 俺たち男子の夢と希望が詰まってんのか!? だからそんなにデカいのか!?」
「ううううううぅっ!? で、デカいとか言うな! だからっ、そんなに見るな!」
「うわあー!? て、手で隠したー!? バッカだなぁおまえ! そのほうがなおさらいやらしいよ! ちょっと胸が潰れてさあ! むにゅっと弾力を感じさせてさあ! より破壊力が増してるよ! 本気で目に毒だよ!」
「……ぬうううううぅっ!?」
御子神はもうどうしていいかわからなくなって、目をぐるぐる回して混乱状態に陥った。
「え、ちょ……わらわの時と反応が違っとらんか?」
シロが抗議してきた。
「おかしくないか? おかしいじゃろう? わらわには、胸がどうとか言ってくれなかったではないか」
だってあなたには無いものですし。
「み、御子神……! なんか俺、辛抱たまらなくなってきた! ちょっとでいい! ちょっとでいいから触らせてくれ!」
「さ、さ、触るぅぅぅっ!? 何を言ってるんだ貴様は!?」
俺の提案に、御子神は声を上擦らせる。
「先っちょでいいから! ほら! 小指! 小指でいくから!」
「そ、そういう問題ではない! 程度の問題ではない!」
「いいじゃいいじゃん! だって俺とおまえは許嫁なわけだろ!? だったら将来的にはそのおっぱいは俺のものなわけじゃん! だったら今触ったっていいわけじゃん! ほら、前借り的な意味でさ! いや返さないけどさ!」
「バカ! バカバカバカ! そ、そ、そんな破廉恥な真似が出来るか! こんな……こんなところでそんなことをさせるわけにいくものか!」
「だったらよそへ行こうぜ! ふたりだけだったらいいわけだろ!? どこがいい!? トイレ!? 寝室!? お風呂場!? ……お風呂場だな! いまわかった! ティンときた! お風呂場がいい! あそこが一番シチュエーション的にいやらしい!」
「バカ! 旦那様はバカだ!」
「おかしい! おかしいぞタスク! わらわにもそんな風に言え! 触りたいとか暗がりに連れ込みたいとか言え! 夫として言うべきじゃ! わらわが正妻のはずじゃぞ!?」
「流線形ボディは黙ってろ!」
「りゅ、りゅ、流線形じゃとおおおおおお!?」
「ひっ……!? 旦那様、なぜ私の手を握って……!? そ、そんな強引に、どこへ連れて行こうというのだ!」
「だからさっきから言ってんだろうが! お風呂場だよ! すりガラスの向こうでふたりきりになろうって言ってんだよ!」
「や……やだ! 無理無理! そんなの無理だ! まだ私たちには早すぎる!」
涙目で抵抗する御子神。
「うるせえ! おっまえ、この前の晩俺に何をしようとしたのか忘れたのか! あれに比べたらこんなの屁でもねえよ!」
「だ、だ、だってあれは……私もおかしくなっていたから……! そ、それに私はっ、攻めるのは得意だがっ、攻められるのは苦手なのだ!」
「奇遇だな! 俺も攻めるのは大好きだ!」
「そうだと思った!」
──バリバリバリバリッ。
「うおあっ!?」
「ひぎぃっ!?」
「なんでわらわまで!?」
カヤさんの電撃が、俺ら3人を平等に撃った。
俺らはたまらず、床に倒れ込んだ。
「……ちょっとうるさいんで、静かにしてもらえますかね」
カヤさんが、笑っていない笑顔で立っていた。
コクリコとの出会いから二週間後。
一学期の終業式が終わった日。
ケルンピアへ向けて旅立つ日。
俺はいったん家に戻ると、居間で旅支度の再確認をしてた。
ケルンピアに持っていくものを、畳の上に並べてた。
何を持っていくか昨夜までさんざん悩んでたけど、結局いつもの山ごもりの時と同じ装備にした。
大容量の登山バッグ。着替え歯磨き洗面用具。雨着にシュラフ、簡易テント、携帯コンロ、サバイバルキット。困ったときの携帯食料、飲料水、各種医薬品。ライター、マッチ、地図、コンパス、熊避けの鈴。身分証明証としてのパスポート。お金が少々。
……じゃっかん意味なさそうなものもあるけど、ま、いいだろ。
今回はなんせ場所が場所だけに、そもそも何が役立つかわからないし。
使い勝手よりも、いつもの相棒たちが一緒にいるっていう安心感のほうを重視した。
聞けば妙子は、普通の国内旅行用の荷物に加え、汎多元世界規格のノートパソコンを用意してた。機械世界マドロアの新製品で、いま全世界的に大流行してるものらしい。
各種族各言語に対応した翻訳ソフト。地域地図。動植物の生態や、世界の歴史を閲覧出来るエンサイクロペディアも入っていて、なるほど、聞けば聞くほど便利な代物だった。
「でも、お高かったんでしょう?」と聞いたら「
カヤさんが重いため息をついていたから、相当値の張るものだったらしい。
御子神の準備も基本的には妙子と似たようなものだが、旅行バッグではなくずだ袋に入っていた。
そしてもちろん、現代の武士はノートパソコンではなく武器を持っていく。
愛用の竹刀に加えてもう一本。白木の鞘に納まった真剣だ。
なんでも御子神家秘蔵の品だとかで、ご丁寧に封印までされている。
あの
ねえなにそれ。なんで抜いたほうが死ぬの? 邪神でも封印されてるの?
シロの準備はカヤさんが代わりに行った。
なぜかといえば、それはあいつが余計なものばかり持って行こうとするからだ。
風呂敷いっぱいのゲームとかマンガ本とか……友達の家に遊びに行くわけじゃあるまいし。
ま、個人的には楽しい旅行気分なんだけどさ。
かなーり、ウキウキなんだけどさ。
ひと通りの旅支度を終え、姉貴への書き置きを書いていると……。
「タスクタスクタスクー!」
今日も元気いっぱいのシロがやって来た。
ドタバタ、興奮した様子だ。
「どうじゃ! どうじゃどうじゃタスク! 似合うじゃろう! かっこよかろう!」
「へえ……」
シロの服装が、いつもと違った。
人型機械兵器に乗るパイロットが着るような感じの特殊スーツだ。
鮮やかなオレンジに赤のファイアパターン。質感はビニール地を思わせる。
爪先から首元までを隙間なく覆っていて、肌にぴったりフィットしてて、ボディラインがはっきり浮き出てる。
シロのお子様体型がよくわかる。
「パイロットスーツ! パイロットスーツじゃって! かっこよかろう!?」
いつもお仕着せの巫女服を着てるシロにとって、違った服装を出来るのは嬉しいことなのだ。
ぴょんぴょん跳ね回って決めポーズみたいなのを決めて、キラキラ笑顔を浮かべてる。
「おーおー、かっこいいかっこいい」
「そうじゃろう!? そうじゃよなあ!?」
「似合ってる似合ってる」
「うむうむ! うむうむうむ! さっすがタスクはよくわかっとるな!」
「未来的なフォルムのおまえには、ぴったりだよ」
「うむうむ……うむ?」
言葉の真意がわからず、首を傾げるシロ。
「ほ……本当に、この格好で行くのか?」
御子神が、心細げな声を出しながら現れた。
「御子神……おまえ……」
俺は思わず立ち上がり、一瞬言葉を失った。
さっきも言ったように、パイロットスーツはボディラインがはっきり浮き出るデザインだ。
シロの場合はお子様体型が、御子神の場合は……。
「……エッロ! エッロいなあー! おまえが着ると!」
引き締まった足首、肉感的な太もも、ぷりんとしたお尻、ぺたんと引っ込んだお腹、そして……。
「ば、バカ! 見るな! そんな目でジロジロ見るな! あとエロいとか言うな!」
「いやエロいよ! めちゃめちゃエロいっておまえ! なにそれ! なにその胸! 乳房! おっぱい!」
「おっぱ……!? はああ!?」
「中に何が入ってんだよ! あれか!? 夢が詰まってんのか!? 俺たち男子の夢と希望が詰まってんのか!? だからそんなにデカいのか!?」
「ううううううぅっ!? で、デカいとか言うな! だからっ、そんなに見るな!」
「うわあー!? て、手で隠したー!? バッカだなぁおまえ! そのほうがなおさらいやらしいよ! ちょっと胸が潰れてさあ! むにゅっと弾力を感じさせてさあ! より破壊力が増してるよ! 本気で目に毒だよ!」
「……ぬうううううぅっ!?」
御子神はもうどうしていいかわからなくなって、目をぐるぐる回して混乱状態に陥った。
「え、ちょ……わらわの時と反応が違っとらんか?」
シロが抗議してきた。
「おかしくないか? おかしいじゃろう? わらわには、胸がどうとか言ってくれなかったではないか」
だってあなたには無いものですし。
「み、御子神……! なんか俺、辛抱たまらなくなってきた! ちょっとでいい! ちょっとでいいから触らせてくれ!」
「さ、さ、触るぅぅぅっ!? 何を言ってるんだ貴様は!?」
俺の提案に、御子神は声を上擦らせる。
「先っちょでいいから! ほら! 小指! 小指でいくから!」
「そ、そういう問題ではない! 程度の問題ではない!」
「いいじゃいいじゃん! だって俺とおまえは許嫁なわけだろ!? だったら将来的にはそのおっぱいは俺のものなわけじゃん! だったら今触ったっていいわけじゃん! ほら、前借り的な意味でさ! いや返さないけどさ!」
「バカ! バカバカバカ! そ、そ、そんな破廉恥な真似が出来るか! こんな……こんなところでそんなことをさせるわけにいくものか!」
「だったらよそへ行こうぜ! ふたりだけだったらいいわけだろ!? どこがいい!? トイレ!? 寝室!? お風呂場!? ……お風呂場だな! いまわかった! ティンときた! お風呂場がいい! あそこが一番シチュエーション的にいやらしい!」
「バカ! 旦那様はバカだ!」
「おかしい! おかしいぞタスク! わらわにもそんな風に言え! 触りたいとか暗がりに連れ込みたいとか言え! 夫として言うべきじゃ! わらわが正妻のはずじゃぞ!?」
「流線形ボディは黙ってろ!」
「りゅ、りゅ、流線形じゃとおおおおおお!?」
「ひっ……!? 旦那様、なぜ私の手を握って……!? そ、そんな強引に、どこへ連れて行こうというのだ!」
「だからさっきから言ってんだろうが! お風呂場だよ! すりガラスの向こうでふたりきりになろうって言ってんだよ!」
「や……やだ! 無理無理! そんなの無理だ! まだ私たちには早すぎる!」
涙目で抵抗する御子神。
「うるせえ! おっまえ、この前の晩俺に何をしようとしたのか忘れたのか! あれに比べたらこんなの屁でもねえよ!」
「だ、だ、だってあれは……私もおかしくなっていたから……! そ、それに私はっ、攻めるのは得意だがっ、攻められるのは苦手なのだ!」
「奇遇だな! 俺も攻めるのは大好きだ!」
「そうだと思った!」
──バリバリバリバリッ。
「うおあっ!?」
「ひぎぃっ!?」
「なんでわらわまで!?」
カヤさんの電撃が、俺ら3人を平等に撃った。
俺らはたまらず、床に倒れ込んだ。
「……ちょっとうるさいんで、静かにしてもらえますかね」
カヤさんが、笑っていない笑顔で立っていた。