第28話 女難 其の六 R-18

文字数 4,899文字

撫子は十兵衛に腕枕され夜具の中で目を覚ました。
室内には明り障子を通して まだ昼間の日が差しており、庭の騒ぎは既に静まっているようで火鉢に掛けられた鉄瓶に湯の沸くシンシンという音だけが響く。
「お父様がいらっしゃったのは、夢…?」
眠っている十兵衛の(つむぎ)(えり)の合わせが少しはだけ、逞しい胸が覗いているのを見て撫子は我知らず その胸に顔を擦り寄せ口づけていた。
ー「いけない、こんな、はしたない事」ー
ハッとして唇を離すが、呼吸をするたびに十兵衛の匂いが胸を締め付けて熱に浮かされるようにくらくらし、足元から這い登る蛇のような、淫らな衝動が撫子の身に心に『求めよ』と誘惑する。
「十兵衛さま…」
聞こえるか聞こえぬかの小さな声で、喘ぐように熱い吐息と ともに慕ってやまぬ(つま)の名を呼びながら寝間着の(そで)を噛んで耐える撫子の瞳は涙を湛え、目元は紅を掃いたように赤く染まった。
ー「これは、どうしたものか…」ー
十兵衛は目を覚ましていた。
撫子が自分の胸に口づけた時に目が覚めたのだが、 すぐに離れてしまった為に様子を見ようと そのまま狸寝入りを決め込んだ。
しかし当の撫子は再び眠ること無く、十兵衛を起こすでもなくモジモジとしている。
身を震わせながらも(こら)える撫子の様子に、十兵衛は思い当たる節もあった。
今はもう そのような事は無いが、若い頃は人を斬ると その後に女を抱かずにいられなかったのを思い出す。
おそらくは、今の撫子も あの時の自分と同じような状態なのだろうと考えたのだった。
ー「抱いてやるのは容易(たやす)い事だが、それでは おれに気付かれぬよう堪えている撫子を傷付けてしまいかねん。それに、こういう姿も何とも艶っぽいではないか。求められれば、すぐに応じてやろうよ」ー
そのような事を考えながら、十兵衛は ついニヤついてしまいそうになる顔を締めた。
と、その時
「十兵衛さま」
今度はハッキリと呼ばわりながら撫子は再び十兵衛の胸板に口づけてきた。
ハァと かかる吐息も唇も いつもより熱く、全身が粟立つようにゾクゾクする。
このような姿を撫子が見せるのは初めての事であった為、もう少し楽しみたいというイタズラ心をおこした十兵衛は、そのまま寝たフリを続けた。
すると撫子は夜着をめくり横臥(おうが)する十兵衛の帯を解くと仰向けに倒し、前の合わせを開いて そっと胸に顔を伏せて頬擦りするが、動くたびに絹糸のような髪がサラサラと皮膚をなぞる感触が心地良く、十兵衛は思わず声が漏れそうになるのを飲み込む。
そのまま唇を十兵衛の腰まで滑らせた撫子が十兵衛の下帯の前みつを噛みながら前袋に手を重ねると、布越しに十兵衛の摩羅が窮屈そうに その白魚のような手を押し返すのが分かる。
「十兵衛さまは、意地悪でいらっしゃります。起きておられるのは、わかっておりますのよ。そのように寝たフリなどなさって…」
撫子の瞳からは、今にも白珠(しらたま)の涙がこぼれ落ちそうだ。
「すまぬ、おまえの健気(けなげ)な様子が可愛ゆらしうて、つい。それにしても、なぜ分かった?」
十兵衛は起き上がりながら撫子を自分の身体の上に抱き上げると、瞼に唇を寄せて涙を吸いながら問う。
「本当に お(やす)みの時は、(わたくし)を お離しになりませんもの…」
頬を濃い紅色に染めながら、拗ねたように唇を尖らせて答える撫子に
「そうなのか?それは自分では知らぬかったのう」
隻眼を(みは)ると
「次はバレてしまわぬように、気を付けよう」
と、にやりと笑って見せた。
「もう…」
十兵衛の肩に額を預けて甘える撫子は、尻に寝間着の上からでもわかる熱を持った硬いものが当たっているのを感じて ますます淫心を催し、横抱きにされた身体をひねって十兵衛の腰を跨ぐと下帯の中でいきり()つ摩羅を湯文字越しに自らの女割れにあてがい、その熱を味わうようにゆるゆると擦り付ける。
「…んうっ…」
吐息とともに小さな喘ぎを漏らす姿に十兵衛の摩羅は硬さを増し、撫子は熱に浮かされているように その快楽を貪った。
「いいのか?日も高い内から」
いつも言われる側の科白(せりふ)を言いつつ十兵衛の腰も(おの)ずと動きだす。
「十兵衛さま、さわって…」
うわごとのように囁きながら、撫子は寝間着の衿をくつろげると(あらわ)になった豊かな乳房に十兵衛の両の手を導いた。
いつもにない様子に嬉しい驚きを感じた十兵衛は、すくい上げるように重みのある乳を揉みしだきながら、その先端の梅桃(ゆすらうめ)のような赤い膨らみを口に含むと撫子の身体が弓なりに反るのを抱きすくめ、更に舌で転がしてやると
「は、ああぁ……っんん…」
もはや堪える様子も無く甘い声を上げながら、撫子は十兵衛の下帯を解きにかかった。
「どうしたというのだ?今日は随分と、ん!」
十兵衛の言葉を唇で(さえぎ)り舌を絡めて吸いながら、なおも もどかしそうに下帯の みつを(ゆる)めようとするのを見かねて十兵衛は自ら下帯を外し、撫子の手を摩羅に添えさせた。
先走りの蜜を(こぼ)す それを手のひらで包み込むようにして優しく しごかれると、その心地好さに十兵衛の腰は小さく跳ねるように小刻みに動いて応える。
その間も休む事なく愛撫され続けた撫子の乳は朱鷺色(ときいろ)に染まり、先端もこりこりと固く しこってきた。
名残惜しげに糸を引いて唇を離した撫子は焦点の定まらぬ瞳を十兵衛へ向け
「いじわる。乳ばかり お可愛がりになって…、」
と、少し怒ったように濡れた唇を噛んで見せる。
「乳ばかりじゃ嫌か?おまえが折角おれの為に大きくしてくれたものを、可愛がらぬ訳にはいくまいて。ん?」
そう言う間も十兵衛は撫子の乳房を弄び、キュッと乳首をひねった。
「ひっ!あんん…っはぁ、あ…。お乳、ばっかりじゃ…嫌ぁ…」
「ほう。では、どこをどうして欲しいか おれに教えてくれ。それとも、言うのが恥ずかしいのなら お前の好きに振る舞って良いぞ」
()れる様子を愉しむように言う十兵衛に、撫子は赤い唇を弦月の形にニッと笑わせ
「本当にござりますか?」
と言うと、十兵衛の胸を押して枕に倒し、湯文字を(めく)り上げ童女(どうじょ)のように すべすべとした女割れを(あらわ)にして身体を反らせ見せつけるように指で開くと、すでに糸を引くまでに淫蜜を滴らせる ほと口に十兵衛の摩羅をあてがい、ゆっくりと腰を沈め始めた。
「いっ!な、撫子!?」
考えていた反応と違う行動に十兵衛が驚いて上体を起こそうとするも、撫子はそれを手で制し
「どうなさいまして?あたくしの、好きに…振る舞って良いと、仰られたでは、ありませぬか…」
うっとりと湿り気を帯びたような声で、ハァと息をつきながら言う撫子に隻眼を(みは)ったが、されるがままに頭を枕に戻す。
「んっ、んん…あ…はぁ、あ、あ…」
日毎夜毎(ひごとよごと)に可愛がられているとはいえ、いまだ初枕より日も浅く固い(つぼみ)(おもむき)を残す ほと口は なかなかに(やす)くは摩羅を受け入れ(がた)く、 撫子が眉を寄せ苦しげに浅く呼吸をするたび、大きな乳が震えるように ゆさゆさと揺れるのを見上げながら、少しずつ包み込まれ締め付けられていく摩羅の求めるままに十兵衛は腰を突き上げたい衝動を抑え
「痛くはないのか?指か舌でほぐしてやらぬでもよいのか?」
と聞くが、撫子はかぶりを振って
「…少し、んっ…窮屈で、は、ござりま…すが…、あ…、ご覧になって、ちゃんと…あんっ…」
小さな悲鳴を上げるのと同じくして、ちゅっと濡れた音をたて十兵衛の摩羅は撫子の ほと に根元まで呑み込まれた。
こつぼ口に亀頭が当たり脳髄のしびれる ような喜悦を感じた撫子が、ぶるぶると身を震わせて後ろに倒れそうになるのを十兵衛は手を掴んで支えてやると、軽く()ったものであろうか、ほと も ほと口も摩羅を なぶるように それぞれ ぴくぴくと蠢く。
そのまま十兵衛の胸に倒れ込んできた撫子は、目に涙をにじませて
「十兵衛さま、今しばらく、このままに… 」
切なげに訴える。
「おまえという女は…。まことに()いのう」
十兵衛は囁きながら撫子を抱きしめて、その背や頭をなでてやると尻を掴んで腰を突き上げた。
「はっ!…あぁ、…お待ちくだ…さりま、せ、やぁ、…あ、あ、あぁ…」
「待たぬ。待てる訳などあろうか。おまえが、おれを このようにしたのではないか…」
撫子の懇願も虚しく、十兵衛はますます激しく腰を突き上げ続けながら、その摩羅はいつも撫子の ほとが気を遣る前におこす変化を感じとっていた。(ひだ)が逆立ち狭くなったと感じるほどにきゅうきゅうと締め付けて、腰を引くと(カリ)の笠が(めく)れてしまいそうになる。
「気を遣りそうなのだろう?(こら)えずとも良いぞ。ん?」
自身が気を遣りそうなのを必死に(こら)え、撫子に促す。
「嫌っ!お許…し、を…、やぁ…あ…はぁ…、!…」
十兵衛の胸から身を起こし逃げようとするも抱き寄せられ、抗えぬ快楽(けらく)の海に呑み込まれたのだった。
「イったな?嫌だ嫌だと言いながら、おまえは可愛ゆらしいのう」
ニヤニヤと(とろ)けた笑みを浮かべながら、(おのれ)の摩羅で撫子が気を遣ったのを確かめ満足げに言う十兵衛に、
「お待…ちを、と、お願い…申し…ました、も…のを…」
(だい)(しょう)に ほとが痙攣するたび訪れる快感の波に身を震わせつ、切れ切れに答える撫子は涙を落とす。
「どうした?痛くしてしもうたか?すまぬ、そのような積もりでは…」
慌てる十兵衛に撫子はかぶりを振る。
「そうではありませぬ…。ただ、(わたくし)は、十兵衛さまを、もっと心地よく、して、さしあげたかったの、です…。」
「あ?それは、なんと…?」
「ん…、いつも(わたくし)ばかり()くしていただいて、幾度も気を…。十兵衛さまを、もっと悦くしてさしあげたくて。でも、またいつものように、わたくしばかり…。それでは、嫌なのでござりますぅ……」
そう言ってキュッと目を(つぶ)った拍子に、更にポロポロと十兵衛の胸に涙の粒がこぼれると、十兵衛はフッと笑った。
「何か、可笑(おか)しゅうござりますか…?」
「いや、これは おまえにでは無いよ。おれは駄目な男だ。おまえの可愛い女心が、全く分かっておらぬのだから」
十兵衛は体を起こして唐草居茶臼に撫子を抱き直すと手で涙を拭ってやり、小鳥のするように何度も撫子の口を吸う。
「分かっておるとは思うが、男は女人(にょにん)(ちご)うて一晩にそう何度も気を遣る事は出来ぬ。その代わりに、おれは おまえをイかせて愉しんでおるのだ。それに、その時のおまえの表情(かお)は、えも言われぬほど美しい。おれだけが見ることの出来る、おれだけのおまえだ…」
優しく言い聞かせながら頬をなで、今度は深く舌を絡めて口を吸うと、撫子もそれに応えて十兵衛の舌を吸いながら腰を揺らしてきた。
撫子の ほとの中は、十兵衛の摩羅をしっかりと離さぬように締め付けながら喰わえ込み、こつぼ口が亀頭を口取りするように吸い付きねぶる。
「すまぬな。男振(おとこぶ)ってはみたものの、もう辛抱出来そうに無い」
ハァ、と気を逸らすように大きな吐息を漏らしながら苦笑いすると、繋がった身体が離れぬように撫子を揚羽本手になるように押し倒すと、十兵衛は摩羅が ほと口から抜けそうになる寸前まで腰を引き、改めて ゆっくりと奥まで押し進むと こつぼ口に鈴口を擦り付けるように動いた。
それを何度も繰り返すと「あ…、あ…、」と撫子は小刻みに声を上げ、(ふたた)び ほとの(ひだ)が逆立ちながら十兵衛の摩羅に吐精を促すように絞り上げる。
「十兵衛、さま、撫子は、気を…、……あ、あぁ…、」
撫子の切なげな悲鳴のような()がり声を聞きながら、十兵衛はその耳を甘噛みし
「おれも、もう、はぁ…、撫子…、いく、んんっ!」
激しく腰を打ち付けながら何度も精を放つと、撫子はそれを こつぼに受け止めながらビクビクと身を打ち震わせつ、気を遣った。
十兵衛が動きを止めると、撫子は足を十兵衛の腰に絡め、消え入りそうな声で
「まだ、離れては嫌ですぅ…」
と言う。
「ほれ、その表情(かお)よ。おれは おまえの その表情(かお)が見たいのだ」
隻眼を細めて愛おしげに撫子を見、乱れた髪をなでてやり摩羅が抜けぬように用心しながら抱き締めてやると、安心したものか そのまま眠り込んでしまった。
「まったく、可愛い女房どのには いつも驚かされてばかりだ。おれは勿体ないほどの果報者よの」
十兵衛は独り言ちると、撫子を起こさぬよう用心して夜着を掛け直した。
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登場人物紹介

柳生十兵衛三巌

主人公

剣豪として知られる柳生家当主で少し助平なイケおじ


河原 撫子

ヒロイン

美人で爆乳で淫らな十兵衛の嫁

柳生但馬守宗矩

故人

主人公・十兵衛の父

助平ジジイ

河原 市朗

ヒロイン・撫子の父

幼少の頃の十兵衛の傅役だった

イケオジィ

河原 すず

ヒロイン・撫子の母

若い頃、十兵衛の母・おりんの方様の侍女だった

ばあや

撫子のばあや

撫子が生まれる前は、すずの侍女だった

徳川家光

三代将軍


お藤

宗矩の側室

六丸の母

柳生 六丸

十兵衛の末弟

宗矩と お藤の子


お蔦

茶店の娘

撫子の幼なじみ


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