あとがきに代えて・たそがれ
文字数 516文字
今日、夕暮れの街を歩いていたら、ささやかですがたいせつに記憶しておきたい光景を見ました。
若いお母さんがとてもちっちゃな子の手をとって、ゆっくり、ゆっくりと歩いています。ちっちゃな子はお母さんに車道側を守られながら、よちよちこきざみに足を動かし、がんばって前に進みます。そしてその子のもう片方の手を、小学校に入っているかいないか、自身まだ幼い女の子が支えてあげて、気づかいながらゆっくり歩いているのでした。
道の交わる場所では、その女の子が先に顔を出して安全確認をし、自転車などが来ると、ちっちゃな子が前に出ないように留めるしぐさをします。
こんなに幼いうちから、もうお姉ちゃんとして自覚を持ってるんだ……! と驚きもし、また微笑ましくも思いました。
暗くなりかけている道を、風船が三つ、先んじた春の微風に運ばれていくようで、ずっと見ていたい光景でした。
三人のじゃまをしてはいけないと思って、後方で少し距離をおきゆっくりとわたしも歩き、ちょっとの間だけ観察させてもらったのちに、歩を速め車道側で追いこしました。
しばらく歩いてから後ろをふり向いたら、その三人の姿は消えていたので、黄昏時がつかの間見せた幻だったのかもしれません。
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