花束

文字数 315文字

花束は包まれて淡い光を帯び
あなたはそれを手にしている
月が空に浮かんで星が輝き
雲が風に流れていく
微笑んだ裏には嫌悪があって
無数の靴音が耳に響いてやまない
人々は折り重なって一方向に進み
わずかな興味はあなたに惹かれていく
憂鬱な沈黙は空に浮かぶ星座を
結んでいく言葉の数々
何も言わずに逃げ出した後
視線の雨が降ってそれに溺れる
正体不明の空の向こうは
きっと殺伐としてどこまでも続いている
平穏な空間の中で
傷は少しずつ消えていって
心が剥かれていく
遠い夏の記憶のような景色は
どこか別の場所にあって
絵画で見たような不穏な神経の過敏さが
今日も相変わらず辺りを覆っている
あなたに渡した花束は
枯れていった幻想の数々を集めて
何かを意味していると今でも思っていた

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