第3話 空へ

文字数 1,218文字

『最近巷では、手軽な宇宙ドライブが流行っています。見てください!みなさん続々と、宇宙に向かって走っていきます!』



『いやぁ、まさかフツーの車で宇宙に行ける日が来るとは思いませんでしたねー!』

『ほんと、ロケットじゃないと無理だと思ってましたからねー!』




テレビの中から、そんな会話が聞こえる。

何年か前から、
『そろそろロケットじゃなくてフツーの車で宇宙に行けるんじゃないか?』と、誰かが言い出し、世界中の金持ちが道楽で資金を出し合い、宇宙につながる坂道を早急に造り始めた。

それがついに開通し、各惑星へつながる道路ができあがったのだ。

どーやって造ったのか、詳しいことは知らない。

金持ちの考えることはわからないな、そう思いながらテレビ画面を見ていた。



『今日は素敵なゲストの方をお招きしています!この、《宇宙への道プロジェクト》を発案し、多大なる資金を提供した、こちらの方です!』

オレは、飲んでいたお茶を吹いた。

こんなに驚いたのは、人生で2度目だ。


『元・「冥王星主婦」の高橋カツ子さんです!高橋さんは、こんなにお若いのに、もう103歳でいらっしゃるんですよね!本当に驚きの若さですね!』

『冥王星効果でーす!』

画面の中でダブルピースしてるのは、オレの母だ。

『高橋さんは、最近お悩みがあると伺いましたが、どのようなお悩みをお持ちなんでしょうか?』

『そうなの、私も若く見えるったって、もう100越えてるじゃない?地球の重力がきつくって~。冥王星ならまだジャンプで移動できたし、あ~、冥王に帰りたいな~って、常日頃思ってたわけなのよ~。ふふ、帰るったって、地球で生まれたのに変な話なんだけどねっ。冥王には30年いたんだからさ、あっちが第2の故郷?みたいなもんなのよね~。』

『そうなんですね~、重力がキツくなってしまっては、さぞお辛いでしょうね。』

『ほんっとそう。この年にはキツいわよぉ!地球のお年寄りはそれだけで頑張ってるって言っていいと思うの、私!それでね、私も冥王に帰りたいし、ちょーっとでも手軽に行けたらいいなぁ、じゃあ、道路造っちゃえばいいんじゃない!車でブーンて行けたらサイコー!と思って、ナサとかに相談したら、こーなっちゃった、ってわけ!なんとか私の生きてるうちに、急いでお願い!って!言ってみるもんよね~!』

『でも、高橋さんのおかげで、みなさん手軽に宇宙に行けるようになったんですから、本当に素晴らしいご提案をされたと思いますよ!』

『そう!?それなら良かった~!そう言ってもらえると、ほんっと、試しに言ってみて良かったわ~!』

『高橋さん、では、ご覧になっている皆さんに何か一言、お願いします!』

『皆さんも、人生楽しみましょー!レッツ、宇宙ドライブ!』


言い出しっぺはオレの母、高橋カツ子(103)だった。




冥王星のこと、冥王って言うなよ…。
友達みたいに、NASAのこと軽々しくナサって言うなよ…。



オレは空を見ながら思った。




母はもう、立派な宇宙人だ。



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