レオンくん☆パパになる
文字数 5,492文字
パープー。パープー。
タイミングよく、パトカーがサイレンをならしてやってきました。
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「警察だ!! 全員てをあげろ!!」
高圧的なたいどで教室にはいってきたのは、じゃがいも警察のぽてとくん。
じゃがいも警察というと、ファンタジー作品の設定にけちをつけたがるやっかいさんのようにもきこえますが、なんにでも首をつっこんであらさがしをしたがるという意味では、警察もにたようなものです。(あくまで女神さま個人のかんがえです)
そのため、ドリームランドのみんなにもきらわれていて、
「はあ? てをあげろって前足のことでいいのめえ?」
「拙者、どんぶりに白米をもっただけの雑なデザインであるからして、てあしに該当するものがないのでござるが、どうしたらいいかのう」
「そもそも事情聴取でてをあげる必要ないのでは……なつ?」
と、冷たくあしらわれてしまいます。
しかし相手は国家権力。ぽてとくんはいきなり逆ギレして、
「うるさい! うるさい! 犯人のめぼしがつかないならまとめて収容所おくりだ! あたまにマイクロチップをうめこまれて、よだれをたらしながらハードワークにはげむがいい!!」
「ちょっ……ドリームランドってそんなディストピアなのぴょん!? おねがいだからまってほしいぴょん! ぴょん子たちは人格をクリーンにされたくないし、犯人のめぼしだってついているんだぴょん!」
「ほうほう。ならばそいつをおしえろ!」
ぴょん子さんはびしっと、ライオンのレオンくんをゆびさしました。
ほかのみんなはハラハラしながらみまもりますが、レオンくんはけろっとしたまま。
「ん、まあそうくるよなあ。なにせライオンと牛のカップルだ。ぶっちゃけモーちゃんのおいしそうなからだをみて、ぺろっといただきたくなったのは一度や二度の話じゃない」
「じゃあやっぱり、がまんできなくなってやっちまったのかぴょん!!」
「ふふふ、かんがえるだけでぞくぞくするさ。モーちゃんとまじわりながら、A5ランクの肉をむさぼりくらう。性欲と食欲がどうじにみたされ、おれたちはほんとうのいみでひとつになる」
どう猛なけものの本性をあらわにしたレオンくん。
さっきまであんなに泣きじゃくっていたのに、いまはサイコパスらしく舌をべろりとだしたゲスがおです。
ところがレオンくん、このごにおよんでこういいました。
「しかし犯人はおれじゃない。アフリカうまれのライオンは、わざわざ牛を焼き肉にしようとはかんがえないぞ。今回はせっかく用意されているから無煙ロースターをつかってやるが、どちらかというと生のままのほうがすきなんだ」
「だれがそんな話をしんじるかぴょん! ぽてとくん、はやくあのサイコパスやろうをひっとらえるぴょん!」
「お、おう。……しかしだな、どうやらレオンくんにはアリバイがあるらしい」
じつはぴょん子さんとレオンくんがしゃべっているあいだ、ぽてとくんは無線で本部とやりとりしていました。
そのとき、かれのアリバイがはんめいしたらしいのです。
「モーちゃんがころされたと推定される昨夜未明から翌朝にかけてのあいだ、レオンくんがぴょん子さんのママといっしょにいるところが目撃されている」
「んぴょっ!? そういえば昨日、ママは家にかえってこなかったぴょん! てっきりいつものおしごとだとおもってたぴょん! ママはパパがなくなったあと、女手一つでぴょん子をそだてて……」
「クラブ→ホテルのコースでおたのしみだったようだな。ママおよびホテルの従業員から裏もとれた。人格に問題があるにしても、とりあえずレオンくんは犯人じゃない」
あまりのことに白目をむくぴょん子さん。
そのおかおをみながらレオンくんはにっこり。
「モーちゃんがいなくなったことだし、今日からおれはママ一筋だ。ほうら、あたらしいパパだよぴょん子」
「いやああああああ……ぴょんっ!!!!」
………………
わくわく☆ドリームランドは複数の企業による出資のもと、文房具や衣料品、お菓子やぬいぐるみといったグッズ販売が予定されており、来春からテレビアニメシリーズも放送される大型プロジェクトです。
テレビアニメの放送にあわせ、大手SNSと提携した新しいかたちのプロモーション、公式ホームページ上で遊べるミニゲームなどの企画も進行中で、保護者の方がお子さまといっしょに楽しめるコンテンツとして展開していきます。
(量販店向け告知情報より抜粋)
………………
「で、けっきょく犯人はだれなのでござろう。はやく事件を解決しないと、みんなまとめてマイクロチップをうめこまれて、ロボットのようにはたらくはめになるでござるよ」
「いやだああ! アへがおになってこきつかわれるくらいなら、サイコパスやろうにあつあつのソーセージをぶちこまれるほうがまだマシだ。ほら、ぴょん子さんもしっかりしてよ!」
「そうなつ! レオンくんからママをまもる方法はあとでかんがえるなつ!」
トーストくんとどーなつちゃんにはげまされて、白目をむいていたぴょん子さんも正気にかえります。
そしてツッコミ役としての冷静さをとりもどしたかのじょは、おもいだしたようにこういいました。
「りんごの妖精あっぷるちゃんがまだきてないぴょん。ドリームランドでさわぎがおこれば、いつもならだれよりもはやくかけつけるはずなのに、ぴょん」
「いわれてみれば……ふしぎなつね。あっぷるちゃんはモーちゃんとならぶにんきもので、かけだしの地下アイドルだから、ここぞとばかりにめだとうとするはずなのになつ」
おやおや、まだ登場していないお友だちがいたみたいですね。
あっぷるちゃんは18禁エロゲ声でしゃべるあざといかんじのおんなのこで、じつをいうと来春より放送予定のテレビアニメでオープニングソングをうたうことがきまっている、わくわく☆ドリームランドのセンターをはるキャラクターです。
現場に主役級のメンバーがきていない。
そのことにようやくきづいたみんなは、ざわざわとおちつかないごようす。
「モーちゃんとあっぷるちゃんが口論しているところをみたことがあるめえ。なんでもどっちがオープニングソングをうたうかで、もめてためえ」
「けっきょくはあっぷるちゃんがうたうことになったでござるが、納得のいかないモーちゃんは番組スポンサーや制作スタッフにねまわしをしていたようでござるよ。いわゆる枕営業というやつでござる」
「そのことに危機感をおぼえたあっぷるちゃんが、モーちゃんをバラバラに? たしかにお友だちを焼き肉にしようなんて、よほどのうらみがなければできっこないよね。……おんなのこってこわいなあ」
トーストくんたちはそういって、ぶるぶるとふるえます。
みんなの話をきいたぴょん子さんは、ぽてとくんにこういいました。
「ということであっぷるちゃんがあやしいぴょん。まだ登場していないお友だちが犯人だなんて、ミステリとしては興ざめもいいところぴょんが、とにかくあっぷるちゃんのゆくえをさがしたほうがいいぴょん」
「なるほど。アニメの主役あらそいに勝つために、あっぷるちゃんがモーちゃんを体育館裏によびだして殺害したあと、教室にはこんでバラバラにしたということか」
「ちょっとまってくれ。あっぷるちゃんならここにいるかもしれない」
話の途中でそういったのは、ゲスやろうのレオンくんです。
みんなそろって教室をみまわしますが、やっぱりあっぷるちゃんのすがたはありません。
なにいってんだこいつ……? という空気の中、レオンくんはいいました。
「あっぷるちゃんは国産のブランドりんごで、ことあるごとに糖度が15%以上あることをじまんしていた。まあ、そういうところが鼻につくおんなではあったが、モーちゃんとはいいライバルで、けっしてバラバラにしようなんて考えるやつじゃなかったぞ」
レオンくんは、ふたたび無煙ロースターにちかよっていきます。
そしてなにをするかとおもえば、秘伝のタレがはいった瓶をもって、
「みんな、瓶にはられたラベルをみてくれ。したのほうに原材料名が記載されているのがわかるだろう」
「んん……? それがいったいなんだというのだぴょん?」
レオンくんのいうとおり、ラベルにはこうかいてありました。
………………
名称:秘伝のタレ(焼肉用)
原材料:しょうゆ、砂糖、たまねぎ、にんにく、ごま油、みそ、ごま、酢、食塩、香辛料、りんご(国産ブランド品で糖度15%以上)、調味料(アミノ酸など)、増粘多糖類(原料の一部に小麦を含む)
賞味期限:瓶裏面に記載
保存方法:直射日光は避け常温で保管してください
製造者:サイコパスやろう
………………
「まさか、こんなことって……ぴょん!」
「そうだ。あっぷるちゃんはこの瓶の中にいる。全身をすりおろされたあと、秘伝のタレにぶちこまれ、ほのかな甘みをひきだす隠し味として利用されてしまったのだ」
ああ、なんということでしょう。
事件の被害者はモーちゃんだけではなかったのです。
ほんとうならドリームランドの主役になるはずだったあっぷるちゃんもまた、おそろしい犯人のてによって、焼き肉の味をひきたてるタレにされていたのでした。
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