生を受けた、『異端の子』

文字数 640文字

──分娩室に響き渡る産声を聞き留め、出産に立ち会った母産医が、安堵したような笑みを浮かべた。
そして産まれたばかりの赤子を抱き抱え、分娩台の上へ寝かされている女性の傍らへとそっと寝かせる。

「お母さん、元気な男の子ですよ。初めてのご出産、誠におめでとうございます」

「ありがとうございます……! ホントに、ありがとうございます……!!」

女性はこれ以上ないともいえる笑顔を見せ、医師らにしきりに感謝の意を伝える。ただただ、ひたすらに。
そして彼女手を握り締めている一人の男性へと顔を向け、「やったね」と微笑んだ。彼もそれに微笑み返す。

「ママ。この子の名前は、どうするんだっけ?」

そう問われた彼女は分娩室から見える夜空──ブルームーンをその視界に収め、暫し考えてから、赤子を見つつ口を開いた。

「『蒼月(あおい)』。ブルームーンの日に生まれたから……蒼月に、しましょう?」

明らかにその場で考えついたであろう名ではあるが、母は更に深い意味を込めていたのだ。そこからしては、十分に納得し得る名であった。

ブルームーンが意味するのは、『極めて稀』。
……そう、この赤子の内部を知っているが故に、彼女はそのような名を付けたのだろう。








──蒼月と名付けられた赤子は、代々人々に伝えられてきた、忌み子だった。
右眼に宿る蒼い光が、その象徴である。
そして、この世界で最も、異端と呼ばれる存在である事も。


~to be continued.
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