第二幕(3)

文字数 423文字

針葉樹林を抜けるのに3日かかった。3日目は早めにテントを張り、罠をしかけた。

ペスリをとらえようというのだ。ペスリは、ゲセンでは大きい獣の部類に入る。地球のキタキツネくらいの大きさで、ふかふかで銀色の極上の毛皮を持ち、草食で、卵生だ。

エストラヴェンは毛皮を惜しげもなく捨てて、肉でシチューを作ってくれた。僕はぺろりとたいらげた。もう少しで彼の分まで食べてしまうところだった。

翌日は運悪く、気温が上がり、雨になった。
エストラヴェンはタフだ。あくまでクールで、忍耐づよい。彼のすべすべした黒髪が、水鳥の羽のように雨のしずくをはじいている。これくらい、彼には、なんということもない……のだろう……(苦痛に顔をゆがめる)
どうしました?
なんでもない。
なんでもなくないでしょう。
ちょっと、腹が。
(はっとして)シチューかな。
肉を、食べたのは、ひさしぶりだったから。
私のせいだ。私がちゃんと――
大丈夫。
大丈夫じゃないだろう。
えっ、ちょっと待って。

今日は、ここまで。

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登場人物紹介

ゲンリー・アイ

地球出身。惑星同盟《エキュメン》の特使。惑星《冬》ことゲセンに単身降り立ち、カーハイド帝国の皇帝に開国をうながす。長身。性格は誠実で直情的。推定される容貌はアフリカ系。男性。

セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェン


ゲセン出身。帝国カーハイドにおける《王の耳》(宰相に相当する最高実力者)。ゲンリーの使命の重要性をただ一人理解する。やや小柄(ゲセン人の平均的体躯)。性格は慎重かつ大胆。推定される容貌はアジアあるいはエスキモー系。中性(両性具有)。

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