第35話 催事場

文字数 735文字

 わが町の某マルエイ百貨店8Fの催事場で、中古・廃盤レコード/CDセールをやっていた。2万枚もの品揃え、とのこと。CDを入念に物色して、気がつけば3時間近く、そこにいた。

 ショパンのピアノ協奏曲の1番が聴きたかった。
 4、5年前、レンタルでフジコ・ヘミングのピアノによるそれを録音し、この頃になってやっと聴いて、好印象だったからだ。

 マルタ・アルゲリッチのピアノ、シャルル・デュトワ指揮のを選ぶ。アルゲリッチさんの名前は、昔々にFMで聴いたかして、悪くない印象として記憶の奥に留まっていたからだ。

 ゲンスブールも1枚だけあった。「アンナ」というサウンド・トラック。アンナ・カリーナと、ジャン・クロード・ブリアリが主に歌っている。女と男の痴情のもつれ、倦怠、耽美。素晴らしいメロディーに乗った、涙ぐましい楽曲が、2、3、入っている。

 モーツァルトでは、大好きなアルフレッド・ブレンデルさんのピアノによるものを、2枚。
 協奏曲の9番と25番、これはチャールズ・マッケラスさんの指揮。マッケラスさんも、昔々の記憶から引き出された。
 この9番、「ジュノム」は、とても微笑ましい。聴いていると、心の張りが、どんどん溶けていく。25番は軽快に荘厳で、胸を張ってシャンシャン歩きたくなる。

 そしてソナタの11、10、16番。
 このブレンデルさんの11番は、ぼくが20歳の頃にエアチェックしたものを、今までもよく繰り返し聴いてきた。だが、このCDに入っている11番の録音は、1999年なのだ。歳を取ったブレンデルさんは、どんなふうにこの11番を奏でているんだろう。これから聴く。とても楽しみだ。
 シューベルトも、少し気になっている。
 現在・過去・未来。
 兎にも角にも、音楽は素晴らしい。
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