【3/13】 ダンゲロスSS(125)如月真琴VS榎本レン

如月真琴

エピソードの総文字数=3,207文字

如月真琴さんの執筆スペースはこちらです。

他の人は書き込んではダメですよ!

あるところに、女の子がおりました。

その娘は両親から日常的に虐待を受け、性格が歪み、いつしか自閉的な考えで人を傷つけ、人形以外との会話を拒絶し、メルヘンなもの以外に興味を示さなくなりましたとさ。

その考えはやがて魔人能力へと昇華し――『許せないもの』を見たとき、無自覚に発動するそうな。……それは、全てを「メルヘン」に変えてしまう、禁術。


世界を巻き込んだワンダーランドが――少女の目の前に現れるでしょう。

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ねぇ、フレディ。

あの空はどこまで続いているか……知ってる?

女の子の名前は、愛瑠世あむ。7歳の小学1年生でした。

――この年で魔人能力を発症することは極めて稀なこと。


そこに至るまでにどんな辛いことがあったか……。

気持ち良い能力の裏には、必ず痛々しい過去が付くものです。

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おい、あむのヤツ、またお人形さんとおしゃべりしてやがるぜ!

ハッハー、なぁ、お前友達居ないのかよー!

そもそも人形は学校に持ち込んだらダメって先生に何度注意されたら分かるんだよ。ほんとバカなヤツ……!!  お前頭おかしいんじゃねぇの?
はいはい、みんな席についてー。授業のチャイム鳴ってますよー。

あむさん、人形はいったんロッカーに仕舞いましょうね。

とにもかくにも、授業の準備をするですよー!

…………。

ねぇ、フレディ。私いつまでこんな窮屈で、退屈で、鬱蒼としていて、辛くて、悲しくて、地味で、メルヘンじゃない……あと5年も? あはは……耐えられるわけない。家に帰っても楽しくない。学校に居ても辛いだけ。ねぇ、私壊れちゃいそうだよ。どうすればいいの……フレディ?

あむは、いつも一人で悩んでいました。

そう――彼女の味方は誰も居ない。……正確には、彼女自身が助けを差し伸べる手に気付かないだけなのですが、彼女自身に「賛同」する手は一つもありませんでした。


――誰も彼もがメルヘンではない。

それだけで、彼女は死にそうになるほど辛い気持ちになるのでした。

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――――あは、フレディ。

私、気付いたよ。……みんな、メルヘンにすればいいんだ。


私の色で……染めればいいじゃない。

みんながメルヘンチックになれば……私も楽しいよ。

そうでしょう、フレディ?

物言わぬ人形は……心なしか、首を縦に振ったように見えました。

少女は心の底から……笑いがこみ上げてきて、こみ上げてきて、こみ上げてきて、こみ上げてきて、止まらなくなって……席を立ち上がり――。




あむは服をなびかせながら、くるくると回り――歌うようにその言葉を口にした。

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チック、タック、メルヘンチック――!!

この学校ごと――私のものにおなりなさい!!

少女の魔人能力――あい・めるへん・びーむが四方八方を撃ち尽くしました。

学校は一瞬にして姿を変え、生徒たちも、先生も……みんな、みんな、スタッフに変えて。今日からここが、毎日の遊園地。



これからの6年間を楽しく過ごすための――彼女の、お城が出来上がりました。

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あは、あは、あはは……なんだ、こんなに上手く行っちゃったんだ。

あは、あは、ははは……見てみて、かんらんしゃ、メリーゴーランド、コーヒーカップ、ジェットコースター、お化け屋敷……ご飯食べる場所もある! 何でもある! 何でもあるの! 楽しいわ、こんなに楽しいならもっと早く試してみるんだったわ……!!

ねぇ、フレディ?

……………………フレディ?
フレディさんは……もう、居ませんよ。

ごきげんよう、あむさん。私とお友達になりませんか?


私――アリスっていいます。

この遊園地の案内役とでも言いましょうか。

う、嘘……フレディ、消えちゃったんだ……。

じゃあ、探しに行かないとね。


アリス、あなたとってもメルヘンだわ!!

お友達にしてあげる! 付いてきて!

はい、有難き幸せでございます。

――それではあむさん、お化け屋敷の方で人形の気配がするので、まずはそこから探しに行きませんか?

そ、そうなの!?

う、うん……お化け屋敷はちょっと苦手だけど、フレディを探すためだもの……いいわ、行きましょう! アリス!

◇ ◇ ◇

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それからあむとアリスは、一日中、くたくたになるまでフレディを探し続けました。

お化け屋敷も、観覧車も、コーヒーカップも、メリーゴーランドも、フードコーナーも、ジェットコースターも……あらゆる場所を探しても、フレディは見つかりませんでした。


でも……あむは、とても満足げでした。

アリスという新しい友達が出来たこと、色んなアトラクションに乗って楽しかったこと……家族のことも学校のことも全部忘れるぐらい、彼女は満たされていました。

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はぁ、はぁ、はぁ……。

フレディ……居なくなっちゃったのかなぁ。

あむさん、今日はもう遅いので、休みましょう。

この城の中に寝室……あなただけの部屋がありますよ。

え? でも遅くなったらパパとママが――……。

ううん……ありがとう、アリス。

いえ、もうご家族のことは考えなくても良いのですよ。

あなたがメルヘンチックに変えてしまったじゃないですか……。


それより、いっぱい休んで、明日からまた、フレディを探しましょう。

遊園地はもっと広い、色んな場所があります。

さぁ、このお薬を飲んで。
え? ……これは、何?
明日を……未来を、もっと楽しむためのお薬です。

あなたはまだ若い……たくさん遊ぶために、ぜひ飲んでみてください。


――その先に明るい未来があることを、私は約束します。

う、うん……分かったわ。

……苦くない、わよね?

あなたが望めば、甘露にもなる薬ですよ。

――素直に受け入れるなら、ちっとも苦くありません。

…………ごくん。



全く苦くないわ! えへへ。

なんだ……これで明日ももーっと楽しめるのよね!

あは、うふふ、うふふふふ……!

あれ、瞼が下がって……開かない。

アリス……ずっと私から、離れないで……ね……。

おやすみなさい、あむさん。

どうか……この先の人生が、幸せに満ちて、辛くないものでありますように。

◇ ◇ ◇

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遠くから――少女を呼ぶ、声がします。

それは叱咤の怒号ではなく、嘲り笑う声でもなく……揺すられるような、優しい声。

眠ったままの少女を呼び覚ます……天使の声でした。

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う、うーん……。

あら、ここは……どこ、かしら。

ここは……私の……部屋……?

あれ、でも……どうして。

おはようございます、あむさん。

――よかったぁ、なかなか起きないから、ちょっと心配したんですよ?

ふふ、可愛い寝顔でした。もう意識はハッキリしていますか?

あ、あんた誰……!?


……って、もしかして、アリス?

でも……姿が全然違うし。

……その姿もすっごくメルヘンで、嫌いじゃないけど。

はい。私は沙凪繭。気軽にまゆちゃんとかって呼んでください。

世界から悪しき魔人能力を消すために旅を続けていました。

そんな中、偶然この学校に立ち寄ったところ、あなたの能力に巻き込まれて人形に変えられてしまったんですね。……能力ごと変えられたらどうしようもありませんでしたが、間一髪で貴女を救う事ができました。

な、何がなんだかさっぱりよ……!

でも……私の能力が解けたってことは……まさか……。


はい、そうなんですよ。

あなたはもう――真人間です。


幸い、罹りたての能力だったので治癒も早く済みました。

もう何も心配することはありません。

そ、そんな……!!

私には辛い学校だって家族だってあるのよ!

能力が無くなったら……これから先、どうやって生きれば……!

全て私に委ねてください……。

アフターケアも私の仕事です。これから先、いっぱい辛いことがあっても、それは、自分の力で乗り越えていくものです。それを能力に頼ってズルしては……いつか、手痛いしっぺ返しをくらうでしょう。私と二人で……もっと楽しく生きられないか、考えてみませんか?

…………そうね。

フレディ、アリス……私には、新しい家族がいる。

――もう、楽になっても、いいのかな、って。

おしまい。

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そこまで!

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