第63話  最大の試練 5

文字数 2,304文字

 ※


 聖奈や平八さんに提案されたのはこんな感じだった。


 ・イジめられてる事実はこちらから絶対言わない。

 ・スマホに関しては、見て見ぬふりをする。

 ・気取られないように、平然を装う。

 ・常に良いお兄さんお姉さんとして励ましてやる。 

だけど華凛ちゃんが、楓蓮に告白したのなら、その時は好きにすればいい。

私達は約束を守った形になるし、それはそれで……いいと思う

左様ですな。しかし。彼女は言わないでしょう。

きっとこの問題が解決してから楓蓮お嬢様に報告すると思われます。

あと、スマホは二台持たせてある。一つは自分の部屋に置いておくように言ってある。

万が一、同じような事があれば、楓蓮にスマホを借りる必要も無いからね。


あと……華凛ちゃんに気付かれないように、少しばかり監視を付ける事にしたわ。何かあればすぐに対応させる。だから……安心して

 そこまでやってくれるのか。 聖奈の対応にただただ頭が下がるばかりであった。

 それが華凛の為になるのであれば……


 俺はただ……あいつを見守るだけしか……出来ない。

 ※


 話が終わる頃には0時を回っていた。

 平八さんに車で送ってもらうのはいいのだが、何故か聖奈も着替えて乗ってくる。



 だが今の俺には突っ込みも出来ず、車が発進した後も、ずーっと窓の外を見ていた。

平八。七時ごろ迎えにきて

承知しました。


もも。まろ。今日は私と共に参りましょう。

 俺の家に泊まるつもりなのか? 

 そうとしか思えなかったが、何も言わなかった。


 あっという間にマンション前に到着すると、平八さんは一礼して走り去っていった。


 当然聖奈は俺の横にいる。

いこっ

 どちらともなく手を繋ぐと、一緒に階段を上がった。

 握られた手から聖奈の暖かさが伝わってくると、ギュっと握り返していた。 





 玄関を開けると、数時間前と同じ光景が目に入る。




 俺はすぐに華凛の部屋に入ると、まだぐっすり眠っているようだった。その時こいつの寝顔を見るなり、また涙が流れてしまう。


こんなに近くにいるのに……何も出来ないなんて。

 嗚咽を吐きそうになると、ささっと部屋を出た。


 すぐに聖奈が抱きしめてくれた。この時ばかりはこいつの身体に触れるだけで、とても安心するのだった。

私も悔しい。楓蓮のように……いじめた奴をボッコボコにして何もかも無茶苦茶にしたいよ。

だけど……私達がやってしまうと、結局何も変わらない。

それは華凛ちゃんが一番分かってる。



一人で頑張ろうとしてる。だから一緒に見守ろう。あの子の為に

 聖奈はそう言って一緒に寝ようと言ってくれたので、俺の部屋に招き入れると、すぐにベッドになだれ込んでいた。

なぁ聖奈。俺はさ……あいつの為に、良かれと思って色々やってきた。

だけど、俺がやってきたことは、華凛の為には……ならなかったのか?

 ショックだった。

 何もかもがぶっ壊れた。そんな気さえする。


 あいつの為だと思いやってきた事が……すべて……


 自信喪失だ。兄である自信が……無くなってしまいそうなんだ。

そんな事は無い。凄い良いお兄ちゃんよ。あなたを凄く慕ってる。それが何よりの証拠じゃない
あ、あいつが困るとさ、ほっとけなくて……俺が全部……それが結果的に……
もういいよ。今日はもう……寝よう
 ごめん。ちょっと喋らせてくれ。このままなんて……寝れない。

あいつも頑張ってる。以前よりもすげー喋れるようになったし、挨拶も出来るようになった。


学校も休まずに行ってくれるし……本人だって楽しいって言ってたのに……

大体イジメられる原因は分かってるんだ。

100%この入れ替わり体質のせいだよ。これがあるから……俺達は普通に暮らせない。

否応にも入れ替わらなければならない

 聖奈は俺の頭を撫でながらうんうんと頷いてくれる。
普通に人と付き合えない。学校行ってる間にリミットが来ちまうから放課後なんて当然遊べない。友達付き合いが出来ない。それって致命的なんだ

しかも凛は俺よりも男でいられる時間が短い。

下手すりゃ五時限目くらいにリミットが来る。家に帰って来る前にフラフラな時もあるんだ

この入れ替わり体質のせいで、良い事なんて全然無かった。

リミットが無ければいいのに、何でこんな……つまらん制限があるのかずっと腹が立つんだ

 その無念さを必死に分かってもらうべく、ずっと聖奈にしがみ付いていた。



 それから俺は、聖奈に色んな事を話していた。今まで生きた中で嬉しかったことや悲しかったこと。


 全てを聖奈に打ち明けていた。


 今まで人に言えないようなことも全て……

 お前が転校し、いなくなってから、今までのことを全て話していた。



 俺はきっと聖奈に……入れ替わり体質である、この苦しみを分かってもらいたかったんだと思う。


 そして……

楓蓮はよく頑張ってるわ。私がよく知ってる。

 そう言われたかった。少しでも認めて欲しかった。


 俺は……俺なりに一生懸命だったのだと。

本当はさ、聖奈が居なくなってから……ずっと一人寂しかった。

俺に何でもしていいから……戻ってきて欲しかった

 自分では何も出来ない。


 今まで生きて来た中で、自分がこれほど無力だと思ったのはこれが初めてだった。

お願い。華凛を助けて……
分かったわ。私に任せなさい。

 その言葉を聞いた時、俺はまた……昔のように涙を流した。


 

 こうして俺は、凛のイジメには気づかないフリをしつつ、様子を見守ることとなった。

 口で言うのは容易いが、俺にその役が演じられるかどうか、今でさえ自信がない。


 凛が自分で解決しようとしているのなら……

 自分を変えようとしているのなら……


 俺は、解決するその日まで、耐えるしかない。


――――――――――


 4章 終わり



 

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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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