第6話 マスク
文字数 2,198文字
新型コロナウイルスの世界的感染拡大によって、我々の生活は大きく変わった。
手洗いの徹底、手指の消毒、あらゆる不要不急の自粛、ソーシャルディスタンスの保持、換気の徹底、そしてもっとも特徴的で、かつ見た目の大きな変化は、マスクの装着である。
俺は眼鏡をしているのだが、マスクをしていると寒い時期には息ですぐ曇る。暑い時期は汗で蒸れるし、水滴が眼鏡に付く。まったく、嫌な世の中になったものである。
ところで、まさか勘違いをしている人はいないと思うが、マスクをしていれば、自分が感染しにくくなるわけではない。相手に感染するリスクを、軽減するためのマスクである。
こうなる少し前、2019年くらいに『マスクには、感染防止効果はない』という研究結果が発表されていたことをご存じだろうか。
要するに『マスクをしていても、している人に感染するのを防ぐ効果はほとんどない』という意味である。だが、くしゃみや咳、しゃべりの際に飛ぶ唾の飛沫を防ぐことは可能だ。
つまりマスクをするのは、自分のためではなくまわりのため。とはいえ、まわりに伝染さなければ、全体の感染者数が抑えられ、自分に感染するリスクも低下する。
情けは人のためならず、というわけだ。
今や、あらゆる店舗や施設において、マスクなしでの訪問はNGとなっている。勤務中にマスクを義務付けている事業所も多いし、世の中にはすさまじい数のマスクが出回っている。
もはや、マスクはしていて当たり前のアイテムだ。以前ならどんなお店でも、マスクをしていると顔を隠していると思われて妙な顔をされたが、今やマスクをしていないと嫌な顔をされる。
身体的、精神的な理由があってマスクをしない、出来ない人もいるが、ほとんどの人がマスクを持っているわけで、それだけ大量のマスクが出回っているのだから、ポイ捨てゴミにマスクが占める割合は、かなりなものとなるのも道理。
しかもマスクは顔面に密着していたわけで、拾うことによる一定の感染リスクまである。
すべてのポイ捨てゴミはもともと他人の触っていたものだし、どんな使い方をしていたか分からないので、感染リスクはあるとも言えるが、危険度はやはりマスクがトップクラスではないだろうか。
よって、俺は散歩時には、必ず豚革の作業用手袋を着用し、直接触らないようにしている。豚革の手袋は、軍手と違って防御力が高い。感染はもちろん、尖ったものや危険物でケガをすることを防ぐ効果もあって大変な便利アイテムである。
さて、マスクは毎日数個、多い時は十個以上も落ちている。種類も多彩で、オーソドックスな不織布製から布製、様々にデザインされ、デコレーションされたオリジナルのマスクもよく拾う。
たまにパッケージそのままの新品マスクも落ちていて、使用しようかどうしようか迷うこともあるが、さすがに気持ち悪いし、万が一のこともあるかも知れないので、すべて捨てることにしている。
ドラッグストアのレジ袋に、ペットボトルやスナック菓子の袋などと一緒に、未開封のマスクが入っていたことも、一度ならずある。たぶん買ったのを忘れて、ゴミと一緒に捨ててしまったのだろうが、まあ、ポイ捨てするようなバカだから、そういう間抜けな真似をするのだろう。ポイ捨て犯に、同情の余地などない。
マスクを観察すると、ポイ捨てする人間にもいろいろいる事が分かる。
男がしていたとすぐ分かるでかいのもあるし、内側にファンデーションや口紅が付いていて、女性のモノとすぐわかるものもある。
散歩コースは通学路と重なっている部分もあって、明らかに子供がしていたと思われる小さいマスクも落ちているが、これはわざと落としたのではないと信じたい。
もちろん、たくさん出回っているし、毎日持ち歩くわけだから、大人マスクにもうっかり落としたものもあるだろう。ただ、丁寧にたたんで紐の部分で縛り上げた状態で捨ててあるものも多く、そういうのは明らかにポイ捨てと断定していいと思う。
マスクは材質にもよるが、総じて自然界で分解しない。
不織布にしても布にしても、樹脂製のものが多く、要するにプラスチックの仲間だから、容易に分解するわけがないのだ。
ポイ捨て人間の中には、分解しないからといってどうだというのか、放っておけばいい、というようなことを言う輩もいるが、そうではない。
分解しない、ということは様々な条件下で生物の行動を阻害したり、悪影響を与えたりするということだ。たとえば、水鳥の足に引っかかれば取れなくなることも考えられるし、飲み込めば消化できなくて死ぬ可能性もある。
海まで流れ着き、浮遊しているのが多数確認されてもいるようだが、これがウミガメやイルカなどに呑み込まれたりするのかどうか、環境中でどのような挙動を示し、どのように影響を与えるのかは、まだよく分かっていない。
生態系に与える影響だけではない。農地に落ちれば、いつまでも分解せずに耕運機に絡みつくし、道路の排水口に引っかかって、水を溢れさせるという点では、吸い殻を凌ぐ迷惑さである。
また樹脂製ということは、日光などで劣化して砕け、昨今話題のマイクロプラスチック化もするだろう。
意図的にポイ捨てするなどは論外だが、わざとであろうとなかろうと、周囲への悪影響は同じことだ。決してうっかり落としたりしないよう、気を付けてほしいものである。
手洗いの徹底、手指の消毒、あらゆる不要不急の自粛、ソーシャルディスタンスの保持、換気の徹底、そしてもっとも特徴的で、かつ見た目の大きな変化は、マスクの装着である。
俺は眼鏡をしているのだが、マスクをしていると寒い時期には息ですぐ曇る。暑い時期は汗で蒸れるし、水滴が眼鏡に付く。まったく、嫌な世の中になったものである。
ところで、まさか勘違いをしている人はいないと思うが、マスクをしていれば、自分が感染しにくくなるわけではない。相手に感染するリスクを、軽減するためのマスクである。
こうなる少し前、2019年くらいに『マスクには、感染防止効果はない』という研究結果が発表されていたことをご存じだろうか。
要するに『マスクをしていても、している人に感染するのを防ぐ効果はほとんどない』という意味である。だが、くしゃみや咳、しゃべりの際に飛ぶ唾の飛沫を防ぐことは可能だ。
つまりマスクをするのは、自分のためではなくまわりのため。とはいえ、まわりに伝染さなければ、全体の感染者数が抑えられ、自分に感染するリスクも低下する。
情けは人のためならず、というわけだ。
今や、あらゆる店舗や施設において、マスクなしでの訪問はNGとなっている。勤務中にマスクを義務付けている事業所も多いし、世の中にはすさまじい数のマスクが出回っている。
もはや、マスクはしていて当たり前のアイテムだ。以前ならどんなお店でも、マスクをしていると顔を隠していると思われて妙な顔をされたが、今やマスクをしていないと嫌な顔をされる。
身体的、精神的な理由があってマスクをしない、出来ない人もいるが、ほとんどの人がマスクを持っているわけで、それだけ大量のマスクが出回っているのだから、ポイ捨てゴミにマスクが占める割合は、かなりなものとなるのも道理。
しかもマスクは顔面に密着していたわけで、拾うことによる一定の感染リスクまである。
すべてのポイ捨てゴミはもともと他人の触っていたものだし、どんな使い方をしていたか分からないので、感染リスクはあるとも言えるが、危険度はやはりマスクがトップクラスではないだろうか。
よって、俺は散歩時には、必ず豚革の作業用手袋を着用し、直接触らないようにしている。豚革の手袋は、軍手と違って防御力が高い。感染はもちろん、尖ったものや危険物でケガをすることを防ぐ効果もあって大変な便利アイテムである。
さて、マスクは毎日数個、多い時は十個以上も落ちている。種類も多彩で、オーソドックスな不織布製から布製、様々にデザインされ、デコレーションされたオリジナルのマスクもよく拾う。
たまにパッケージそのままの新品マスクも落ちていて、使用しようかどうしようか迷うこともあるが、さすがに気持ち悪いし、万が一のこともあるかも知れないので、すべて捨てることにしている。
ドラッグストアのレジ袋に、ペットボトルやスナック菓子の袋などと一緒に、未開封のマスクが入っていたことも、一度ならずある。たぶん買ったのを忘れて、ゴミと一緒に捨ててしまったのだろうが、まあ、ポイ捨てするようなバカだから、そういう間抜けな真似をするのだろう。ポイ捨て犯に、同情の余地などない。
マスクを観察すると、ポイ捨てする人間にもいろいろいる事が分かる。
男がしていたとすぐ分かるでかいのもあるし、内側にファンデーションや口紅が付いていて、女性のモノとすぐわかるものもある。
散歩コースは通学路と重なっている部分もあって、明らかに子供がしていたと思われる小さいマスクも落ちているが、これはわざと落としたのではないと信じたい。
もちろん、たくさん出回っているし、毎日持ち歩くわけだから、大人マスクにもうっかり落としたものもあるだろう。ただ、丁寧にたたんで紐の部分で縛り上げた状態で捨ててあるものも多く、そういうのは明らかにポイ捨てと断定していいと思う。
マスクは材質にもよるが、総じて自然界で分解しない。
不織布にしても布にしても、樹脂製のものが多く、要するにプラスチックの仲間だから、容易に分解するわけがないのだ。
ポイ捨て人間の中には、分解しないからといってどうだというのか、放っておけばいい、というようなことを言う輩もいるが、そうではない。
分解しない、ということは様々な条件下で生物の行動を阻害したり、悪影響を与えたりするということだ。たとえば、水鳥の足に引っかかれば取れなくなることも考えられるし、飲み込めば消化できなくて死ぬ可能性もある。
海まで流れ着き、浮遊しているのが多数確認されてもいるようだが、これがウミガメやイルカなどに呑み込まれたりするのかどうか、環境中でどのような挙動を示し、どのように影響を与えるのかは、まだよく分かっていない。
生態系に与える影響だけではない。農地に落ちれば、いつまでも分解せずに耕運機に絡みつくし、道路の排水口に引っかかって、水を溢れさせるという点では、吸い殻を凌ぐ迷惑さである。
また樹脂製ということは、日光などで劣化して砕け、昨今話題のマイクロプラスチック化もするだろう。
意図的にポイ捨てするなどは論外だが、わざとであろうとなかろうと、周囲への悪影響は同じことだ。決してうっかり落としたりしないよう、気を付けてほしいものである。