ゴーレムの目にも涙
文字数 1,871文字
小物の魔物たちにたびたび襲われる村がそこにはあった。その村は魔物たちの通り道となっていたのだ。
そんな村で育った3人の少年がいた。剣が得意なルノー、クールで褐色の、魔法を使うマサァ、そして瓶底の丸眼鏡をした気弱なハッチだ。3人はなぜだか馬が合い、良くつるんでいた。
そうして3人が全員15才を迎えた時、ルノーがマサァとハッチに言う。
「俺らももう15になったしさ、夜は毎晩パトロールしねぇか?」
「いいんじゃないか?」
同意を示すマサァに対して、気弱なハッチは、
「で、でも、夜の魔物は強いって……」
あまり乗り気ではなさそうだ。
「ハッチ、お前がいちばん強いんだからな、大丈夫だって!」
ルノーの言葉に押されて、ハッチも夜のパトロールを了承するのだった。
そうして3人は毎晩パトロールを行ったのだが、これと言って魔物は出てこなかった。
そんなある日。
昼間で寝ていた3人は外の喧騒に眠い目をこすりながら家を出た。
すると神父が、
「ゴーレムが来たぞ!みなさん逃げてください!」
避難を誘導する神父と人波をかき分けて、3人はいつも集まっていた木の下に集まった。
「ここは俺らが戦う番だ!」
「そうだな」
「だ、大丈夫なのかな……」
「自信持てって、ハッチ」
3人は人波と反対の方向へ向かって駆けだした。
村を出てすぐのところに、噂のゴーレムがいた。ただ、そのゴーレムは噂のように大きなものではなかった。背丈はルノーたちと変わらない。それでも村を脅かす存在であることに変わりはないため、ルノーたちは戦闘態勢に入る。
「な、なんだよ、お前たち。オイラ、母ちゃんを探してるんだ!」
悲痛なゴーレムの声に、ルノーたちは面食らう。
「母ちゃんって、どこではぐれたんだよ」
ルノーの言葉に泣きそうになりながらゴーレムは言う。
「この村を母ちゃんが飛び越えていった。オイラ、まだこの村を飛び越えられないから。だから、ここを通ろうって思ったんだ!」
ゴーレムの言葉に、ルノーたちはどうしたものかと思案した。
「なんか、可哀想じゃないか?」
「母親と離れ離れなんて、それは哀れだ」
「で、でも、ゴーレムに変わりないんじゃ……」
ハッチの言葉に2人は非難の目を向ける。
「こいつをこのままにはしておけないだろ?」
ルノーの言葉に、ハッチはじゃあどうするのか、と尋ねる。
「こいつを、村の端まで無事に送り届ける!」
ルノーの決断に異を唱える者はいなかった。
まずは村人たちに襲われてもゴーレムが怪我をしないように、ハッチが風の守護魔法をゴーレムにかけた。ゴーレムは初めての感覚にウキウキとしているようだ。
そしてマサァは魔法でゴーレムの姿を人間の姿へと変える。しかし魔法がまだ完璧ではないため、肌の色はゴーレムのそれだった。
最後にルノーが先頭を歩いていき、村の中へと入っていく。
神父が誘導した結果、女子供は町にはいなかった。代わりに屈強な男たちが斧やナタを持ってうろうろしていた。
「見つかったらまずいな。こっちだ」
ルノーは町の中を熟知していた。そのため、大人が通れないような細い道を選んで進んでいく。
子供特有の獣道を通るゴーレムとルノー達の頭には葉っぱがついていた。
小さな冒険を楽しむように3人と1匹は道をどんどんと進んでいく。
大人たちは少年たちのすれすれの道を歩いていく。
そのたびにハッチの心臓は口から飛び出しそうになるのだが、ルノーの堂々とした態度で落ち着きを取り戻していた。
そうして無事に村の端に辿り着くことができた。
ルノーは自慢の剣の腕を見せることが出来なかったことが少し不満ではあったものの、何だか良いことをしている気がして気分が良い。
マサァが魔法をとくと、ゴーレムは普段の姿へと戻った。そして最後にハッチが風の守護を外す。
「母ちゃん、どこだよ」
ルノーの言葉にゴーレムが耳を澄ませた。そうして鼻をぴくぴくとすると、
「あっちだ!」
そう言って駆けだした。
ルノーたちも追いかけて行く。
そうして辿り着いた先に、ルノーたちよりも何倍も大きなゴーレムが岩のようにじっとしていた。
「母ちゃん!」
「坊や!」
再会を果たした親子は抱き合い、泣いていた。
それを見たルノーも思わずもらい泣きしている。
マサァはそっと、ゴーレムたちに人目につきにくい魔法をかけてやった。これで親子の旅路を邪魔されにくくなるだろう。
15才になって初めて目にした魔物は、大人たちの言うような酷いものではなかった。ルノーたちは、なんとか魔物との共存が出来ないものかと、この日を境に考えていくのだった。
そんな村で育った3人の少年がいた。剣が得意なルノー、クールで褐色の、魔法を使うマサァ、そして瓶底の丸眼鏡をした気弱なハッチだ。3人はなぜだか馬が合い、良くつるんでいた。
そうして3人が全員15才を迎えた時、ルノーがマサァとハッチに言う。
「俺らももう15になったしさ、夜は毎晩パトロールしねぇか?」
「いいんじゃないか?」
同意を示すマサァに対して、気弱なハッチは、
「で、でも、夜の魔物は強いって……」
あまり乗り気ではなさそうだ。
「ハッチ、お前がいちばん強いんだからな、大丈夫だって!」
ルノーの言葉に押されて、ハッチも夜のパトロールを了承するのだった。
そうして3人は毎晩パトロールを行ったのだが、これと言って魔物は出てこなかった。
そんなある日。
昼間で寝ていた3人は外の喧騒に眠い目をこすりながら家を出た。
すると神父が、
「ゴーレムが来たぞ!みなさん逃げてください!」
避難を誘導する神父と人波をかき分けて、3人はいつも集まっていた木の下に集まった。
「ここは俺らが戦う番だ!」
「そうだな」
「だ、大丈夫なのかな……」
「自信持てって、ハッチ」
3人は人波と反対の方向へ向かって駆けだした。
村を出てすぐのところに、噂のゴーレムがいた。ただ、そのゴーレムは噂のように大きなものではなかった。背丈はルノーたちと変わらない。それでも村を脅かす存在であることに変わりはないため、ルノーたちは戦闘態勢に入る。
「な、なんだよ、お前たち。オイラ、母ちゃんを探してるんだ!」
悲痛なゴーレムの声に、ルノーたちは面食らう。
「母ちゃんって、どこではぐれたんだよ」
ルノーの言葉に泣きそうになりながらゴーレムは言う。
「この村を母ちゃんが飛び越えていった。オイラ、まだこの村を飛び越えられないから。だから、ここを通ろうって思ったんだ!」
ゴーレムの言葉に、ルノーたちはどうしたものかと思案した。
「なんか、可哀想じゃないか?」
「母親と離れ離れなんて、それは哀れだ」
「で、でも、ゴーレムに変わりないんじゃ……」
ハッチの言葉に2人は非難の目を向ける。
「こいつをこのままにはしておけないだろ?」
ルノーの言葉に、ハッチはじゃあどうするのか、と尋ねる。
「こいつを、村の端まで無事に送り届ける!」
ルノーの決断に異を唱える者はいなかった。
まずは村人たちに襲われてもゴーレムが怪我をしないように、ハッチが風の守護魔法をゴーレムにかけた。ゴーレムは初めての感覚にウキウキとしているようだ。
そしてマサァは魔法でゴーレムの姿を人間の姿へと変える。しかし魔法がまだ完璧ではないため、肌の色はゴーレムのそれだった。
最後にルノーが先頭を歩いていき、村の中へと入っていく。
神父が誘導した結果、女子供は町にはいなかった。代わりに屈強な男たちが斧やナタを持ってうろうろしていた。
「見つかったらまずいな。こっちだ」
ルノーは町の中を熟知していた。そのため、大人が通れないような細い道を選んで進んでいく。
子供特有の獣道を通るゴーレムとルノー達の頭には葉っぱがついていた。
小さな冒険を楽しむように3人と1匹は道をどんどんと進んでいく。
大人たちは少年たちのすれすれの道を歩いていく。
そのたびにハッチの心臓は口から飛び出しそうになるのだが、ルノーの堂々とした態度で落ち着きを取り戻していた。
そうして無事に村の端に辿り着くことができた。
ルノーは自慢の剣の腕を見せることが出来なかったことが少し不満ではあったものの、何だか良いことをしている気がして気分が良い。
マサァが魔法をとくと、ゴーレムは普段の姿へと戻った。そして最後にハッチが風の守護を外す。
「母ちゃん、どこだよ」
ルノーの言葉にゴーレムが耳を澄ませた。そうして鼻をぴくぴくとすると、
「あっちだ!」
そう言って駆けだした。
ルノーたちも追いかけて行く。
そうして辿り着いた先に、ルノーたちよりも何倍も大きなゴーレムが岩のようにじっとしていた。
「母ちゃん!」
「坊や!」
再会を果たした親子は抱き合い、泣いていた。
それを見たルノーも思わずもらい泣きしている。
マサァはそっと、ゴーレムたちに人目につきにくい魔法をかけてやった。これで親子の旅路を邪魔されにくくなるだろう。
15才になって初めて目にした魔物は、大人たちの言うような酷いものではなかった。ルノーたちは、なんとか魔物との共存が出来ないものかと、この日を境に考えていくのだった。