第17話 初体験

文字数 1,027文字

 行彦のことが好きだ。行彦とのキスは、たまらなく素敵だ。でも、もうそれだけでは満足出来ない自分がいる。もっと先に進みたい。もっと……。
 つい最近、キスを覚えたばかりだというのに、自分は、なんと貪欲でスケベなのかと呆れる。だが伸は、部屋のベッドの上で、火照る体を持て余しながら考える。
 今まで、同性に興味を持ったことがなかったので、その方面の知識が乏しい。キスより先は、男同士で、いったい、何をどうやって……?
 だが、すべては杞憂だった。
 
 
 伸が、後ろ手にドアを閉めるなり、行彦が、胸に飛び込んで来た。
「伸くん……」
 切なげな表情で見つめる行彦にキスをする。だが、舌を入れようとしたとき、不意に行彦の唇が離れた。
 驚いている伸を見つめたまま、行彦が手を引く。そのままベッドまで行き、絡み合うように倒れ込んだ。
 
 下から見上げる行彦の目が濡れている。体が熱い。激情が体の中で渦巻く。でも……。
 どうしていいかわからず、行彦を組み敷いたまま固まっていると、行彦が手に触れた。そのまま伸の手を取って、自分の胸へと導く。
「外して」
 言われるまま、パジャマのボタンに手をかける。手間取りながら、すべて外すと、驚くほど白くて滑らかな素肌が現れた。
 
 
 その後も、行彦の誘導に従い、すべてはスムーズに進んだ。何もかもが初めての体験だったが、行彦は美しく淫らで、伸は我を忘れ、行彦の体を貪るように味わった。
 あまりの快感に、最後は、声を上げながら果てた。
 
 
 甘く痺れるような余韻に浸りながら、かたわらに寄り添う行彦に目をやる。二人は裸のまま、ブランケットにくるまっている。
「行彦」
 小さく呼ぶと、行彦は、閉じていた目を開けた。まだ赤らんでいる頬が、なまめかしい。
「俺、なんて言っていいか……」
 驚きの連続で、まだ頭の中が混乱しているが、なんとか感動の気持ちを伝えたい。言葉を探していると、行彦が、恥ずかしそうに微笑んだ。
「伸くん、素敵だったよ」
「行彦も……」

 ブランケットの中で、行彦が、伸の手に触れた。二人は、指と指を絡ませる。伸は、天井のシャンデリアを見つめながら言った。
「俺、初めてだったから、どうしていいかわからなかったけど、行彦がリードしてくれたから……」
 行彦が、伸の肩に頬を寄せる。
「僕だって初めてだよ。でも、伸くんに気持ちよくなってもらいたくて、無我夢中だったんだ。伸くんのことが大好きだから……」
「……すごく気持ちよかった。それに、俺も、大好きだよ」
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