4.僕のひとりごと。ねえ大事な君

文字数 1,126文字

ねえ大事な君、まやかしの言葉には気をつけてね。

「何故できないの」

「何故わかってくれないの」

「何故あんなことしたの」

「それは普通じゃない」

「それは間違い」

「それはおかしい」

「何もできないんだね」

「ダメだね、さようなら」

これらは全部、まやかしだよ。だからね、これらをずっと大事に心に刺しておくことはないよ。

君はきっとこれまで、そのとき考えうる一番良いものを選んできたと思う。それらは必ずしも実を結んだわけではないかもしれないけれど、君の精一杯が込められていたはずさ。

そんな君を否定できるヒトがどこにいるだろう。笑顔の裏でたくさんの汗と溜息と経験値を積み重ねて来た君を悪く言うなんて、誰ができるだろう。

ヒトはみな、世界の見え方が違う。これまでの経験から感じたこと、出会ったヒト、触れた言葉、そこから手に入れたものがみな違うから、世界の見え方が違う。隣にいても、違う。あるヒトにとって世界は明るい場所で、あるヒトにとって世界は暗い場所。あるヒトにとって幸せとは成果で、あるヒトにとって幸せとは消えない絆。

見え方も見方も自由で、違うことは素敵なこと。僕はそう思うよ。

だけどね、世界にはね、いろんなヒトがいるみたいだよ。自分と他人は同じように考え、同じひとつの世界を見ているはずだと信じているヒトに、僕はたくさん出会ったよ。

外界の心ない言葉は、行為は、君に向けられたものじゃない。相手の中で反響している違いと言う違和感。君が悪いわけじゃない、わかるかな。

優しい君はきっと、違和感に出くわすたびに反省したでしょう。後悔したでしょう。自分を責めたでしょう。そうやって己を磨きながらここまで歩いて来たのでしょう。

そして気づいたでしょう。違和感を払拭すべく周りに馴染もうとしても馴染みきれず、なかなか満たされないということを。

違う世界を生きる他人との間にある違和感をゼロにすることは難しいのかもしれない。けれど、違和感を違和感でなく魅力として見出し大事にしてくれるヒトがいるとしたら、それはきっと幸せなことだね。それは家族かもしれないし、恋人かもしれず、職場にいる顔見知りのあのヒトやこれから出逢うヒトかもしれない。大丈夫、不可逆な時間の中で羽ばたいている君なら必ず出会えるさ。相手が君を放っておかないかもしれないね。だってもう君は、まやかしの言葉から解き放たれ、望みと行動が手を繋ぎ始めたはずだからね。

大丈夫だよ、大事な君。君は弱くない。それは弱音じゃなく、隠してはならない本音じゃないかな。幸せになりたいという、希望じゃないかな。

大丈夫だよ、大事な君。君はひとりぼっちじゃない。僕の言葉は僕の想いで僕自身。いつでも逢いにおいでよ。

ねえ、大事な君。きっと幸せになってね。


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