文字数 357文字

 嘘を付くと、体のどこかに黒いバツが付く世界。まるで羽根突きで羽を落とした時のように、体のどこかにバツが付く。

 物を壊した時、宿題を忘れた時。私達は難を逃れる為にバツを付ける。

 友達のテストの点数の方が高かった時、部活で同級生が良い成績を残した時。自尊心を守る為にバツを付ける。

 夢を諦めた時、輝いている友達を見た時。私達は自分に蓋をする為にバツを付ける。

 街を歩けば、すれ違うほとんどの人達は真っ黒。その度に私は自分の腕を見る。

 そこには紛れもなく私の腕が、ちゃんと肌色でそこにある。

 大丈夫、大丈夫。
 私の腕は黒くない、私は真っ黒じゃない。

 だから「アレ」はきっと私じゃない。

 毎晩お風呂に入る時に、鏡に映る真っ黒い何か。

「アレ」はきっと私じゃない。

 大丈夫、大丈夫。
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