3話―1

文字数 4,033文字

Fateful future shock


 すっきりとした青空が広がる、爽やかな朝。早朝ということもあり、ビル街はまだ静まっていた。
 アビニアとソラは銀色のキャンピングカーから降り、うんと体を伸ばす。二人は今日、ミルド島に帰る予定なのだ。

「朝ご飯くらい、食べていったらどうなのよ?」

 車内では[家族]が朝食の準備をしている。玄関先でメイラが呆れ返っているが、二人は同時に口を開いた。

「お構いなく。飛行機の時間もあるし」

 言葉が重なり、互いに睨み合う。メイラはぷっと吹き出し、豪快に笑った。

「仕方ないわね。でも何も食べないと倒れるわよ?」
「一口だけでもどうだ?」

 エプロン姿のノレインが横から顔を出し、ミートボールが刺さったフォークをこちらに手渡した。いがみ合う二人は我に返る。恥ずかしげに口に運び、同時に「美味しい!」と目を輝かせた。

「あらあら、いい食べっぷりね。気をつけて帰るのよ!」
「風邪引くんじゃないぞ!」

 二人はフォークを返し、荷物を手に歩き出した。

「君達も元気でね!」
「じゃあね! またゆっくりお話ししましょ♪」

 準備を中断したのか、車内から全員が出てこちらに手を振る。[家族]総出で見送りを受けたアビニアとソラは、広場を後にした。



 しばらくすると、アースとラウロに出会った公園に差しかかる。アビニアが市場の方角に向かおうとすると、腕を引き止められた。

「アビ、空港はそっちじゃないよ?」
「せっかくだから市場でお土産を買おうと思って。朝だったら選び放題な気がするんだよね」

 ソラは「ふーん」と聞き流し、変装用のサングラスを少しだけずらした。

「じゃあここでお別れね。次会うまでには、ちゃーんと彼氏作っておきなさいよぉ♪」
「余計なお世話だ!」

 アビニアを軽くあしらい、ソラは手を振りながら遠ざかってゆく。

「まったく、いっつも一言多いんだから……」

 アビニアは呆れたように睨み、苦笑する。喧嘩ばかりしている二人だが、仲は良いのだ。彼女の姿が見えなくなるまで見届けた後、市場へと歩き出した。

「すまない、少々時間をもらえないか?」

 その時、背後から誰かに呼び止められた。アビニアは振り返る。灰色の髪の男性が、虚ろな目でこちらを見ていた。

「何? 急いでるんだけど」
「お前さん、『未来を見通す巫女』だよな?」

 聞き慣れた言葉に、思わず眉をひそめる。自分は確かに占い師だが、ここはカルク島だ。ミルド島ではそこそこ有名だという自覚はあったが、カルク島では全く活動していない。
 何故だろう、とひたすら悩んでいると、ふとある言葉を思い出した。


――今回はなんと、ミルド島からスペシャルゲストが来てくれました! 未来を見通す巫女、アビニアです!


 顔から血の気が引いた。通り名を聞くとしたらあの時しかない。この人は[オリヂナル]の公演を見ていたのだ。

「その目で、俺の未来を見てほしいんだ」

 彼は切羽詰まった様子で、アビニアの両手を取った。体が強張る。きっと、いや絶対、この人は自分を女性と勘違いしている。
 アビニアはその手を振りほどこうとしたが、憔悴しきった灰色の瞳に見つめられ、肩をすくめた。彼の肩越しに時計を見やる。始発便の時間が刻一刻と迫っていた。

「(仕方ないか。困ってるようだし)」

 溜息を長々とつき、アビニアは男性を睨んだ。

「分かった。特別に未来を見てあげるよ」

 ベンチに腰かけ、商売道具の水晶玉を取り出す。テーブルはなく、膝の上に乗せたが特に問題はない。

「名前は?」

 男性はアビニアの目の高さまで腰を下ろした。

「ユノー・ミストリス」
「ユノー、ね。年齢は?」
「四十八」

 アビニアは思わず「えっ」と声を漏らす。疲れ切った様子だが、彼はアビニアと同じ二十代後半に見えたのだ。驚かれることに慣れているのか、ユノーは淡々と説明する。

「うん十年前、大きな事故で死にかけたことがあってな。運良く生き返ったがそれ以来、どうも老けたように感じないんだ。……まぁ、それは今関係ないか」

 アビニアは右手を顎に添え、考えこむ。命の危機に曝されると[潜在能力]が目覚める場合がある、という話を思い出したのだ。
 もし『老化しない』という[潜在能力]が存在するなら、この気味の悪い現象を説明出来る。ミックがこの人を見たなら分かるのにな、とアビニアはぼんやり思った。

「それで? 何に困っているの?」
「仕事を失った」

 ユノーは一層暗い面持ちで俯いた。

「宝飾品の加工をする会社に長年勤めていたんだが、つい先日解雇された。俺は独身だ。頼れる親族もいない。新しい仕事も見つからない。頼む。俺が未来で生きているか、仕事が見つかったか、見通してくれ!」

 再び両手を取られそうになり、アビニアは退け反った。

「わ、分かったから。この水晶玉をよーく見て」

 ユノーはアビニアの膝の上の水晶玉を見つめた。気を取り直し、アビニアは水晶玉に映るユノーの両目を捉える。

「君の未来が見える……」

 水晶玉を通して映像が流れ出す。アビニアは[未来透視]による診断結果を、ぽつりぽつりと語り始めた。

「君は狭い部屋に一人でいる。臙脂色の壁に、工具がぶら下がってるようだね。おや、何かを持って立ち上がった。宝飾品のようだけど、何だろう? 階段を上って扉を叩いた。その部屋には、……えっ?」

 アビニアは声を詰まらせた。部屋の中には、自分自身がいたのだ。診断中だというのに、あまりの衝撃で言葉が出ない。見えた未来は止まることなく先に進む。
 ユノーはアビニアに近寄り、黒真珠の指輪を左手の薬指にはめた。アビニアは困惑しながらも、何故か嬉しそうだ。ユノーはアビニアを抱きしめると、口元に顔を寄せ……

 アビニアは未来から目を逸らした。映像は途切れ、穏やかな公園に戻る。心臓の鼓動がうるさい。その未来が何を意味するかは分からず、分かりたくもなかった。

「おいどうしたんだ? 部屋の中には何が」
「きっ、君には教えられない!」

 アビニアはユノーの言葉を遮る。水晶玉を慌ててリュックにしまい、逃げるようにこの場を後にした。

「(あれは僕のアパートだ! 何であの人が……?)」

 冷や汗が止まらない。アビニアは市場に寄ることも忘れ、空港に向かった。今なら始発便に間に合う。一刻も早くユノーから離れなければ、という考えしか頭になかった。
 アビニアが見た未来は、当事者が行動を見直さない限り必ずやって来る。だが、今見えた光景が自分の『未来』だと信じたくなかった。

「(落ち着け。未来は、変えられるんだ……!)」

 彼を突き放すことで、『未来』を回避出来る。そう信じたかった。


――
 季節は過ぎ、ミルド島に厳しい冬が訪れようとしていた。
 アビニアは目を覚まし、カーテンを開ける。窓の向こうの道路にはうっすらと雪が積もっていた。凍えた両手で、薪ストーブに火を灯した。枕の横に置いた眼鏡をかけ、部屋が暖まるのを待つ。

 ここは、アビニアが住むアパート兼仕事場だ。元々は路上の占い師だったが、未来を変えられた客がお礼として、この建物をまるごと譲ってくれたのだ。
 幅は狭く、両隣は他のビルが建っていたが、住みやすく治安も良い。故郷であるセントブロード孤児院(SB)に近いこともあり、アビニアはこの町を気に入っていた。

 暖房が効いてきたようだ。アビニアはフリース製のガウンを肩にかけ、階段を下りた。
 このアパートは三階建てで六戸入っていたが、SBの技師に改築してもらった。自室は三階、広々としたワンルームである。二階にはダイニングキッチンと水回り、そして物置。
 一階は外へ通じる玄関が直線上に二箇所あったことから、二部屋になるよう壁で仕切っている。アビニアは公道に面した方の部屋を、占いの館として使っていた。

 キッチンに立ち、朝食を作る。背後から何やら音が響いたが、物置代わりの一角から物が崩れ落ちたようだ。アビニアは舌打ちすると、片づける訳でもなく調理に戻った。

「(そういえば……あの時見た『未来』だと、綺麗に片づいてたな)」

 淡々と卵を割りながら思い返す。ユノーの未来に映っていた『臙脂色の壁の部屋』は確かにここであり、しかも現在散らかり放題の物置だった。
 あの日以来、ユノーは姿を見せていない。彼は生きているのだろうか、と一瞬心配になったが『未来』を思い出し、無理やり思考を追い出した。

「(考えるのはよそう。寒気がする)」

 完成したスクランブルエッグとトースト、淹れたてのインスタントコーヒーを手に三階へ戻る。寝室はすっかり暖まっていた。

 アビニアが『未来』をどうしても回避したかったのは、理由がある。同級生には『変態』と呼ばれる、男好きの男子が複数いたのだ。
 初めて『家』に来た時には既に、同級生男子は全員陥落していた。自分もそうなるのが嫌で、アビニアは[潜在能力(未来透視)]を駆使して彼らを回避し続けてきた。そのおかげで今日まで無傷でいられたのだが、もし『未来』を変えられなかったとしたら。考えただけでも恐ろしい。

 軽い朝食を済ませ、身支度を始める。占い師『ミルドの巫女』の衣装に着替え、眼鏡を外してコンタクトレンズを装着した。一見寒そうな格好だが、暖房が効いていれば問題はない。
 一階が暖まるのを待っていると、玄関からノックの音が聞こえた。そういえば、まだ鍵は開けていない。アビニアはドアに近寄り開錠する。その瞬間、ドアが勢い良く開いた。

「ようやく、見つけた……!」

 アビニアは凍りついた。現れた訪問者は随分と痩せこけているが、間違いなくユノーだった。

「な、何で君が⁉ 帰って! 今すぐ帰って‼」
「俺はお前さんを訪ねて来たんだ! 頼む、助けてくれ!」

 咄嗟にドアを閉めようとすると、強い力で止められる。次第にみしみしと軋み出したが、ユノーは急に力尽きた。

「え、ちょっと! 大丈夫⁉」

 倒れた彼を激しく揺さぶるが、反応はない。もしこのまま放ってしまったら。アビニアは仕方なく、ユノーをアパートに運びこんだ。


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登場人物紹介

【ノレイン・バックランド】

 男、35歳。[オリヂナル]団長。SB第1期生。

 焦げ茶色の癖っ毛に丸まった口髭が印象的。

 喜怒哀楽が激しくおっちょこちょい。

 髪が薄いことを気にしている。趣味は手品と文章を書くこと。愛称は『ルイン』。

 [潜在能力]は『他の生物の[潜在能力]を目覚めさせる』こと。

【メイラ・バックランド】

 女、32歳。ノレインの妻。SB第3期生。

 カールがかかったオレンジ色の髪をポニーテールにしている。

 お転婆で気が強い。怒ると多彩な格闘技を繰り出す。

 趣味は写真撮影。口癖は「まぁ何とかなるでしょ」。

 [オリヂナル]では火の輪潜り担当。[潜在能力]は『一時的に運動能力を高める』こと。

【ラウロ・リース】

 男、25歳。

 腰までの長さの薄茶色の髪を一纏めにしている。

 容姿・体型のせいで必ず女性に間違われる。明るく振舞うが素直になれない一面がある。

 ある事情から[家族]に素性を隠している。優秀なツッコミ役。趣味はジョギング。

 [オリヂナル]では道化師担当。[潜在能力]は『治癒能力が高い』こと。

【ナタル・シーラ・リバー】

 女、19歳。RC社長の娘。

 肩までのストレートの金髪。瞳は緑色。右耳に赤いイヤリングを着けている。

 母親を殺害した父親に復讐を誓う。勇敢で頼もしい性格。RCを欺くため男装している。特技は武術。

 [オリヂナル]では動物のトレーナー担当。[潜在能力]は『一時的に筋力を上げられる』こと。

【アビニア・パール】

 男、28歳。SB第5期生。占い師『ミルドの巫女』。

 黒い長髪で声が高く、女性に間違えられる。ひねくれた性格の毒舌家だが、お人好しの一面を持つ。

 幼少期の影響で常に女装をしている。職業柄、体を鍛えている。ソラとは犬猿の仲。愛称は『アビ』。

 [潜在能力]は『相手の未来が見える』こと。

【ソラ・リバリィ】

 女、25歳(初登場時は24歳)。SB第7期生。『Sola』の名で歌手活動をしている。

 天真爛漫な性格。空色の長髪を一筋、両耳元で結んでいる。特技はアコーディオンの弾き語り。

 音楽の才能は素晴しいが、それ以外はポンコツ。自他共に認める腐女子。アビニアとは犬猿の仲。

 [潜在能力]は『相手の感情を操る』こと。

【ユノー・ミストリス】

 男、48歳。カルク島出身の宝石職人。

 人情深い性格。運が悪く『疫病神』と呼ばれていたが、[オリヂナル]の公演をきっかけに人生が変わり、現在はアビニアのアパートで宝飾品の工房を営む。

 事故で意識不明になって以来、老化が止まったらしい。見た目は20代後半。

【チェスカ・ブラウニー】

 男、27歳。RC諜報部長。

 薄桃色の長髪を一本に束ねている。瞳は灰白色。灰色の額縁眼鏡をかけている。

 物腰が柔らかく、どんな相手でも丁寧に接する。

 諜報班時代のフィードの部下で、彼のことは『チーフ』と呼ぶ。

【フィード・アックス】

 男、30歳。RC社長代理。

 青い髪をオールバックにしている。蛇のような細い目が印象的。

 冷酷な性格で無表情だが、独占欲が強く負けず嫌い。

 ナタルの教育係を務めていた。鼻を鳴らすのが癖。

 [潜在能力]は『舌に麻痺させる成分を持つ』こと。

【アース・オレスト】

 男、10歳。

 さらさらした黒い短髪。

 実の父親から虐待を受け、『笑う』ことが出来ない。

 控えめで物静かだが、優れた行動力がある。特技は水泳。年齢の割にしっかり者。

 [オリヂナル]では水中ショー担当。[潜在能力]は『酸素がない状態でも呼吸出来る』こと。

【ミック・ラガー】

 女、10歳。モレノの妹。

 ふわふわした栗色の長髪。

 引っ込み思案で無口。古びた青いペンダントを着けている。

 世話を焼きたがるモレノを疎ましく思っている。アースのことが気になっている。

 [オリヂナル]ではジャグリング担当。[潜在能力]は『相手の[潜在能力]が分かる』こと。

【ヒビロ・ファインディ】

 男、35歳。SB第1期生。[世界政府]の国際犯罪捜査員。

 赤茶色の肩までの短髪。前髪は中央で分けている。飄々とした掴み所のない性格。

 長身で、同性も見惚れる端正な顔立ち。同性が好きな『変態』。

 ノレインを巡り、メイラと激闘を繰り返してきた。

 [潜在能力]は『相手に催眠術をかける』こと。

【シドナ・リリック】

 女、28歳。ミルド島出身の[世界政府]国際犯罪捜査員。シドルの姉で、ヒビロの部下。

 明るい緑色のストレートの長髪。真面目でしっかり者。策士な一面を持つ。

 海難事故により、[潜在能力]に目覚めている(『相手の記憶を操作する』こと)。

【アンヌ】

 女、24歳。ミルド島の女怪盗。『猫』。

 肩までの黒い巻毛。瞳は黄色。露出度の高い服装を好む。

 我が儘で気まぐれだが、一途な一面も見せる。

 ユーリットを女性恐怖症に陥れた張本人だが、事件後何故か彼に好意を抱くようになった。

【ウェルダ・シアコール】

 女、27歳。SB第6期生。SB近所の交番勤務。

 赤みがかった肩までの黒髪。瞳は茶色。

 曲がったことは嫌いな性格だが、面倒臭がり。ソラの親友。

 [地方政府]に在籍したことがある。ソラとアビニアに振り回されたせいか、しっかり者になった。

 [潜在能力]は『手を介して加熱出来る』こと。

【デラ&ドリ・バックランド】

 男、12歳。バックランド家の双子の兄弟。

 明るい茶色の癖っ毛。無邪気で神出鬼没。

 見た目も性格も瓜二つだが、「似ている」と言われることを嫌がる。

 [オリヂナル]では助手担当。[潜在能力]は『相手の過去を読み取ること』(デラ)、『相手の脳にアクセス出来ること』(ドリ)。

【モレノ・ラガー】

 男、15歳。ミックの兄。

 真っ直ぐな栗色の短髪。

 陽気な盛り上げ役。帽子をいつも被っており、服装は派手派手しい。

 割と世間知らずな面がある。妹離れが出来ない。

 [オリヂナル]では高所担当。[潜在能力]は『一時的にバランス能力を高める』こと。

【ミン・カルトス】

 女、12歳。SBの生徒。生まれて間もない頃、SBに捨てられた過去を持つ。

 黒髪を低い位置でツインテールにしている。チェック柄のワンピースが好み。

 おとなしい性格だがお喋り好き。SB近所の町で幼い子供達の世話を手伝っている。

 コンバーとは実の兄妹のような間柄だった。

 [潜在能力]は『一時的に体を金属に変えられる』こと。

【レント・ヴィンス】

 男、年齢不詳(見た目は30代)。SBを開設した考古学者。

 癖のついた紺色の短髪。丸い眼鏡を身に着けている。服装はだらしない。

 常に笑顔で慈悲深い。片づけが苦手で部屋は散らかっている。

【ミディ・ホート】

 男、11歳。SB近所の町に引っ越してきた少年。

 朱色の短髪。引っ込み思案だが友達想い。

 子供達の世話をするミンと出会い、彼女を手伝うようになった。

【リベラ・ブラックウィンド】

 女、32歳。SB第3期生。SB近所で診療所を営む。ニティアの妻。

 毛先に癖がある黒い長髪。右の口元のほくろが印象的。

 おっとりとした性格。元々体が弱く、病気がちである。

 メイラの親友。趣味は人の恋愛話を聞くこと。

 [潜在能力]は『相手の体調・感情が分かる』こと。

【ニティア・ブラックウィンド】

 男、35歳。SB第1期生。リベラの診療所の薬剤師。リベラの夫。

 白いストレートの短髪。白黒のマフラーを常に身に着けている。

 極端な無口で、ほとんど喋らないが行動に可愛げがある。

 筋肉質で、体はかなり鍛えられている。趣味は釣り。

 [潜在能力]は『風を操る』こと。

【リタ・ウィック】

 女、10歳。SBの生徒。

 焦げ茶色の肩までの短髪。動き易いズボンを身に着けており、時々少年に間違われる。

 SBを代表する問題児。フロライト兄妹とは悪友で、常にファビを振り回している。

 [潜在能力]は『衝撃波を操る』こと。

【サファノ・フロライト】

 男、8歳。SBの生徒。ルビナの兄。

 紫に近い青い短髪。好きな色は青。やんちゃな性格で、イタズラ大好き。

 ルビナとは双子だが二卵性らしく、あまり似ていない。

 [潜在能力]は『体全体から光を発生させる』こと。

【ルビナ・フロライト】

 女、8歳。SBの生徒。サファノの妹。

 橙に近い赤い長髪。好きな色は赤。

 性格はサファノと似ており、イタズラ大好き。

 [潜在能力]は『体の一部分から光を発生させる』こと。

【コンバー・カインドウィル】

 男、19歳。SBの卒業生。

 黒に近い茶色の短髪。優しい笑顔がトレードマークで、滅多に怒らない温和な性格。

 教師志望で卒業後は文系の大学に通っていたが、転落事故に遭ったファビを[潜在能力]で助け、亡くなった。

 [潜在能力]は『自分と相手の体の状態を交換出来る』こと。

【ギール・グリー】
 男、41歳。グリーンウルフ社の社長。『狼』。
 深緑色の短髪。大柄で強面。威圧感を常に放つ。
 傲慢な性格だが、その割に社員を大事にしている。
 フィードとは昔から面識があるようだが、互いに嫌悪している。
 座右の銘は「働かざる者食うべからず」。

【ラッシュ・シーウェイ】
 男、26歳。RC視察部員。
 黄緑色の短髪を立たせているが、身長が低くカバー出来ていない。
 誰に対しても生意気だが、小心者で臆病。おまけに運が悪く、とばっちりが多い。
 グリーンウルフ社を視察した際ギールに気に入られてしまい、出向扱いとなった。

【サリディナ・ミラード】
 女、29歳。グリーンウルフ社の専務。
 モスグリーンの長髪をきっちりまとめている。首筋にサソリのタトゥーが刻まれている。
 沈着冷静な性格。仕事には私情を挟まず厳格に対応する。

【セドック・ティール】
 男、39歳。グリーンウルフ社の副社長。
 黄土色の短髪。長身だが威圧感はない。
 非常に温和な性格。ギールとは昔からの知り合いらしい。

【イオ・ハウディア】
 男、20歳。ローレンの助手。
 偶然見かけたローレンに一目惚れし、大学を辞めて研究所に入所した。
 黒に近い茶色の短髪に、真っ赤な首輪をつけている。
 人当たりが良く忠実だが、人間としての情は欠落している。
 『犬』であり、生まれた時から自分の『飼い主』を探していた。

【ローレン・ライズ】
 男、46歳。ミルド島北部にある研究所の所長。
 以前起こした不祥事が原因で『穢れた科学者』と呼ばれ、忌み嫌われている。
 癖の強い金色の長髪に眼鏡姿。瞳は黒。目つきが悪く、猫背気味。
 研究のことになると周りが見えなくなる。
 研究所は不祥事後RC傘下になり、担当のフィードやチェスカにサンプルを押しつけている。

【ナト】
 女、6歳。チェスカの養子。
 チェスカに指示され、男装をしている。パステルブルーの短髪に白いキャップといった少年のような格好。
 この年の少女にしては冷静で、勉強が趣味。学力は大人にも匹敵する。
 元々孤児だったが、チェスカに拾われて以来RC諜報部で生活している。

【スコード=ニグル】

 男、21歳。ポーン島ニグル族の住民で、トゥーイの側近。

 濃い茶色に白が混じる肩までの短髪。冷静で物静かだが、少し抜けている。

 若いながらも剣術に優れ、側近になってからはガウィの弟子になる。

 トゥーイのことは幼い頃から気にかけている。

【トゥーイ=ニグル】

 女、17歳。ポーン島ニグル族長老の孫で、[鍵]の守護者。

 濃い茶色に黄色が混じる髪をお下げにしている。

 責任感が強く時々無茶をするが、年頃の少女らしい一面も持つ。

 甘い物に目がない。カルデムのことを尊敬しており、幼い頃からついて回っていた。

【ヤウィ=ニグル】

 男、84歳。ポーン島ニグル族長老で、トゥーイの祖父。

 ぼさぼさの白髪に、黄色が混じる。見た目はほぼ農民。

 根が呑気なため、多少の物事には動じない。

 トゥーイと同じように無茶をしがちである。よくぎっくり腰をやらかす。

【ガウィ=ニグル】

 男、52歳。ポーン島ニグル族次期長老で、トゥーイの父親。

 濃い茶色の髪を短く刈りこんでいる。毛先は黄色。

 厳格で神経質だが民からの信頼は厚い。狩猟部隊の長を務めており、屈強な肉体を持つ。

 トゥーイを[鍵]の守護者に推薦した張本人だが、何かと子離れが出来ていない。

【ダルク】
 男、30歳。フィロ島の『狩人』で、『鷹』。
 真っ直ぐな氷色の長髪。義父の形見のサングラスをかけている。瞳は赤色。
 冷静な性格で、『狩人』であることに誇りを持つ。猟銃の名手。
 元は孤児だったが義父ヨザを『熊』に殺害され、復讐を誓う。

【クレイ】
 男、21歳。フィロ島の『狩人』で、『虎』。
 少々癖のある氷色の短髪。瞳は黄色。
 感情がコロコロ変わり、落ち着きがない。人懐こい性格だが、狩りの時は別人のようになる。
 ダルクを本当の兄のように慕っており、彼と共に『熊』を狩ることを決心する。

【ヨザ・グラシア】

 男、享年49歳。フィロ島の『狩人』で、ダルクとクレイの育ての親。

 瞳は紫色。猟銃使いであり、黒いサングラスをかけていた。

 7年前『熊』に襲われ、殺されてしまった。

【ハビータ・ジェニアン】
 女、57歳。フィロ市場の責任者。
 ウェーブのかかった氷色の短髪。瞳の色はライトグレー。
 世話焼きな性格で、出店者達に慕われている。
 ヨザの幼馴染であり、長い間親交があった。

【ベイツ・ブライン】
 男、56歳。フィロ島出身の[世界政府]国際裁判官。
 元『狩人』であり、『しきたり』をまとめた指南書の著者。
 瞳は茶色。顔面には一本の大きな傷が走っている。

【ハルモ・ラスキー】
 女、年齢不詳(見た目は10代前半)。フィロ市場の名物売り子。
 さらさらした氷色の長髪。瞳は白色。見た目は少女だが胸だけは大きい。
 よくドジを踏むが、フィロ島の食材については誰よりも詳しい。
『狩人』達とは仲が良く、彼らのことは何かと気にかけている。

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