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文字数 622文字

 週末、俺は携帯を契約して新嶋に会いに行った。以前と同じようにゲームコーナー前のベンチに立ち入ると、今度は直ぐに声をかけられた。
 俺達はゲームコーナーには立ち入らず、一階にあるレストラン街に向かう。比較的安価なイタリアンレストランの名簿に書き込み、十五分待つと席に案内された。
「契約出来て良かったね」
「遂に、って感じだわ」
 メニュー表をピザと飲み物を注文をする。品が来るのを待つ間に、メッセージアプリで連絡先を交換した。
「手紙のこと、先生に話した」
 出し抜けに言った俺の言葉に、新嶋は「そうなんだ」と控えめの声で目を伏せた。
「凄いなぁ碌は。自分は気づけなかったよ」
「気づくって…お前は悪くないだろ」
「そんなことはない。実際に暴力をふるっているんだから、駄目なんだよ」
 新嶋が冷水を口に含んだのを見て、俺もそれに倣う。
「汰瀬は今でも俺のことが好きだったらしい」
「そうなんだ」
「新嶋は?」
 俺の言葉に、新嶋は動きを止めたように見えた。
「俺は……そうだな。友達になりたいと思ってたよ、碌と」
「いいよ、別に」
「俺も変な奴だよな……汰瀬に意地悪いことしようと思って告白するなんて」
 注文した料理が運ばれてくる頃には、恋人関係が解消されていた。
 ある意味、俺への感情を求めた汰瀬は純粋な奴だったんじゃなかろうか。
 テーブルに置かれたメロンクリームソーダを眺めながら考えることかと言えば違うが、キザな態度を取り続ける自分にはそれが最も見合うと思ってしまった。
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