【3時限目】難問フェチという闇

文字数 1,913文字

 過去問100年分テストの開始から10日目(10日間ぶっ通しで姫は泊まり込み中)。

 教室内では相変わらず、ペンのカツカツカツ……という無機質な音のみが響いていた。

2018/03/17 14:45
(何か、おかしい……)
2018/03/17 18:35
 この10日間、僕は注意深く姫の様子を見続けていた。目の前で観察し、どの程度まで基礎学力があるのか、またどういう考え方をして問題に取り組んでいるのかを把握するためだった。

 

 しかし……

2018/03/17 21:59

……んくっ!

2018/03/17 18:48
(まただ……)
2018/03/17 18:50

………ん、んはぁっ♡

2018/03/17 18:51
(……やっぱりだ。たまに見せる、この尋常ならざる姫の苦しみ方……明らかに普通ではないな……)
2018/03/17 18:55
(天使といえど、さすがに10日間の泊まり込みは厳しかったか……。それとも、試験中のストレスからくる過呼吸のようなものだろうか……?)
2018/03/17 19:24
 先程からの姫のただならぬ様子に不自然さを感じていた僕は、その要因が非常に気がかりになっていた。
2018/03/22 13:46
(今度は、完全に動きが止まった……そういえば、今の問題に取りかかってから一層苦しむ感じが強まったような……)
2018/03/17 22:00
こ、この問題……なんて難しい……の……!

……き、きくっ、この問題効くうっ!!

2018/03/17 22:03
(まずい! さすがにこれ以上は倒れてしまいそうだ!!)


姫様、今すぐテストの中止を――!!

2018/03/17 22:14
 急いで姫に駆け寄ると、勢いで眼鏡とマフラーが床に落ち、姫の素顔が顕わになった。
2018/03/17 22:16
2018/03/17 18:57
 そこには恍惚の表情で、マスクを涎まみれにした姫のあられもない姿があった……
2018/03/17 19:25
ひ、姫様……?

そのお姿は……!?

2018/03/17 22:19
み、見ましたわね……

私の、絶対の秘密を………!

2018/03/17 22:20

 激しい羞恥心からか、姫の顔が耳まで真っ赤になる。加えて……恍惚の表情、止まらない涎、明らかに乱れている呼吸……

 

 学生時代から勉強漬けで、異性との接触などほとんどなかった僕だが、さすがに姫の現状は察してしまった。

 

 ……いや、察したくはなかったが。

2018/03/17 22:20
姫様……あなた、まさか……
2018/03/17 22:25
おやめなさいっ!!


……それ以上、何もおっしゃらないことです!!

でなければ、私…解放してしまいます。

999年に及ぶ浪人生活で宿った…天使でありながら、世界を黒く浸潤する力を解き放ってしまいますっ!!

この……ダークマターを!!


2018/03/17 22:25
 そう言った姫の周りは、得体の知れない黒く禍々しいオーラで包まれ、やがてそれは空間をも侵食し始めた。


 明らかに、やばい雰囲気だ……


 もし、ダークマターとやらが解放されたとしたら、少なくともこの部屋くらいは簡単に吹っ飛んでしまうのだろう……と、思った。

2018/03/17 22:31
わぁああ、おやめくださいっ!!

分かりました、分かりましたから、

ダークマターはひとまず中止しましょう!!

2018/03/17 22:32
ほ、本当ですわね………

約束ですわよ。もし違えたら、絶対に許しませんことよっ!!

2018/03/17 22:33
わ、分かりました。

ですが、私が講師である以上、姫様の勉強の『妨げ』になる要素は把握しておかねばなりません。ですから、姫様の口から今の状況を説明してくださいませんか!

2018/03/17 22:34
 僕の言葉で少し落ち着きを取り戻した姫は肩を落とし、その場にへたり込んだ。それと共に、禍々しいオーラも綺麗に消え去っていた。
2018/03/17 22:37
い、いいでしょう……
2018/03/17 22:39

2018/03/17 22:40
 暫く間を置き、眼鏡とマフラーをかけて平常時に戻った姫は少しずつ自分のことを話し始めた。
2018/03/17 22:40
……なんと申せばよいか……

私は、普通とは少し変わった状況で気分が高揚……いえ、性的興奮を感じてしまう体質なのです……

2018/03/17 22:42
確か、先程『現代魔法』の『問3』に差しかかった時、あなたの筆はぴたりと止まり、悩み始めましたね。そして、そこからのあなたは、どんどん様子がおかしくなった…あの症状が、その体質に起因すると…?
2018/03/17 22:43
……その通りです。

実は、私は……


難問フェチ


なのです……

2018/03/17 23:12
な、難問フェチ!?
2018/03/17 23:13

元々は、いわゆる生物同士によるM的な状況に興奮するだけの体質だったのですが……999年にも及ぶ枯れ切った青春の末、ついには無生物である試験の『問題』までもがMを感じる対象になってしまって……

2018/03/17 23:03
試験の問題が性の対象、ですか……
2018/04/03 11:40

……う、うぅ、やっぱり嫌ですわ! こんなはしたない告白を、会って間もないあなたなどに……

2018/04/02 19:20
姫様、落ち着いてください。

あの症状が改善できれば、受験にも良い効能をもたらすはずです……お辛いでしょうが、最後までお話しください!

2018/03/17 23:04

わ、分かりましたわ……

私は、難問に相対した時、その問題自身が擬人化して私を責めてくるような妄想に囚われるのです。生物でない物にさえなじられる自分に興奮し、遂には試験に全く集中できず不合格、ということの繰り返しで……

2018/03/17 23:00
なるほど……999年もの禁欲生活が、その境地にあなたを至らしめてしまった…そういう事なのですね。
2018/03/17 23:09
そう……私は受験だけでなく、


この症状とも900年


戦い続けてきたのです……!!

2018/03/17 23:14
 ……いや、大分前に元凶確定してますよね……それ。
2020/06/27 12:48
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登場人物紹介

◾サトル(29歳/♂)

異能力総合学院予備門の講師。

地球でも塾講師をしていた。

ある罪の免除のため、予備門の講師にされてしまった。

丁寧かつ控え目なドS。


彼の眼が開かれた時、何かが起こるような起こらないような。

◾カワイ姫(1019歳/♀)

異世界のとある小国、レッドブック王家の姫様。天使。

異能力総合学院を目指す受験生。

ガリ勉風だが999年浪人中。

王族気質の自信家かつ傲慢なドM。


ただでさえM気質ではあるが、真価が発揮されるのは難問に直面した時。試験問題を脳内擬人化し、問題を解くことができない自分を問題が責めてくるという妄想をして最大限興奮するという奇特すぎる性癖を持つ。


彼女が眼鏡を外した時、何かが起こるような起こらないような。

■バハムート(2500歳/♀)

見た目ビッチ、中身もビッチなフェロモン剥き出しの邪悪竜。

カワイ姫と同じく異能力総合学院入学を目指す受験生。

勉強と掛け合わせた性癖があるらしいが詳細は謎に包まれている。


一国を燃やし尽くす威力を持つ【メガフレア】を吐くことをライフワークとしている。

■マーク(?歳/♀?)

レッドブック国の同盟国・チャート国で第一王子の家庭教師を務める人物。

両国の友好条約締結1000年の祝賀に先行し、友好の証としてレッドブック王家に家庭教師助手として派遣されて来た。

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