第73話 直接強制の次は間接強制

文字数 2,145文字

 子の引き渡しに応じないと、まずは、司法という国家権力による合法的な未成年者略取である強制執行が行われます。
 話し合いで引き渡しが行われるなら何の問題もありませんが、そもそも話し合いができる人間なら、離婚や子供の養育に関する話し合いが日常生活の中で普通に行われるはず。当然、相手のことを考えるし、自分の思いもきちんと伝えて、子供にとって最善の結果を模索するでしょう。
 結婚相手や子供の思いなどを一切無視できる人間だからこそ、突然の連れ去りが行われ、事実を無視する理不尽で不公正な家事審判に突入して、泥沼化していきます。家庭裁判所がやっているのは全くの家庭破壊で、家庭崩壊幇助とかいう罪名をつけたいぐらいです。いつか機会があれば、「自分の家庭さえ維持できれば、他人の家庭なんてどうでもいいと思っているのですか」と裁判官に面と向かって問い質してみたい。
 家庭裁判所から派遣された執行官が、「おとうさんがいいー!」と泣き叫び、嫌がる子供の身体的精神的自由を合法的に奪って、強制的に奪取していくのが直接強制で、これに失敗すると、金で脅しをかける間接強制が行われます。
 もちろん、家裁の裁判官の任意で行われるわけでなく、「泣いてもかまわないから、子供を引きはがしてください!」と命じる母親の依頼に従って、国家権力によって淡々と強制執行が行われます。世間一般で知られていないだけで、近代的な法治国家である日本では、こういう子の人権を徹底的に無視した法的措置が為されているのです。
 恐いでしょう?
 恐くないですか?
 これが本当の日本の姿です。
 直接強制が執行不能に終わると、次は間接強制です。
 間接強制の決定が下される前も、支払いの命令が出た後も、申立人が申請すれば、何度でも直接強制は行われます。何度か執行不能で終わったあとも、妻の怒りが暴発して騒ぎ続けるのか、夜十時以降、家の前で一時間以上、裁判所の車が止まったままでした。残業ご苦労様です。
 同じ言葉で夜中に二時間以上責められ続けた、地獄の結婚生活を思い出します。
 執行官様、ご愁傷さまです。私の結婚生活は、そういう苦痛の夜が日常でした。現場の執行官には痛いほどよく分かったはずです。裁判官、あなたが娘を引き渡せと言った母親の実態です。

 平成二十五年四月二日、家庭裁判所から審尋書が届きました。

 民事執行法一七三条三項により次のとおり審尋する。

           記

 別紙のとおり債権者(申立人)から間接強制の申立てがあったので、意見があれば、この書面が到達してから十日以内に書面をもって意見を述べられたい。

 四月一日に出された間接強制申立書も添付されている。

 申立ての趣旨
(一)債務者は、債権者に対し、両名の間の子である神代メイを引き渡せ。
(二)債務者が本決定送達の日から三日以内に前項記載の債務を履行しないときは、債務者は債権者に対し、上記期間の経過の翌日から履行済みまで一日につき、金五万円の割合による金員を支払え。

 申立ての理由の中に、金額の根拠が記されている。
「債務者が、子の引き渡しに強硬に拒絶するなどしており、その翻意を促すためには相応に高額の金額であるべきことや、子に会えないことによる債務者の精神的苦痛が甚大であることからして、申立の趣旨(二)記載の金額とするのが相当である。」

 子に会えない苦痛って、自分で嘘をついて会いに来づらくしておいて、さらに裁判までしてこじらせて、会えなくしたのは妻自身なのに。
 確かにこちらも「戻ってきて一緒に暮らそう」と言ったし、それに対して元妻も「戻りたい」と嘘を言って、泣いて謝罪の演技までするから、話がややこしくなっただけで、最初から正直に「離婚したい。子供は自分が育てたい」と言えば、ここまで大事に至らなかったはず。
 強硬に拒絶しているのは、
一.「お父さんと一緒にいたい」と泣く子の意思を優先し、
二.幼児虐待さえしかねない元妻の精神状態を危惧して、
三.調査官が調査報告書に嘘を書いたことで家裁自体に不信感があるから。
 最初から、我が子の思いを裏切ってまで、引き渡すつもりは毛頭ない。
 一日五万円、一か月渡さなかったら、五万円×三十日=百五十万円。
 半年渡さなかったら、百五十万円×六か月=九百万円、一年なら千八百万円。
 実際の年収をはるかに超える額を支払えと決定した場合に、合理的な判断能力があれば、まずこの金額を支払うなんてありえないが、裁判を起こすこと自体が異常事態だから、こういう異常な金額を要求してしまうのかもしれない。
 これに対して、こちらの弁護士が「審尋と言うなら、直接意見を聞いてください」と家裁に物申したので、実際に意見を言う場が設けられた。
 裁判官の卑怯なのは、当日開始時に「間接強制に関する意見だけを言ってください」と釘を刺す。審判の不服には耳を貸すつもりはない様子で、嘘を書いた調査官二名は顔も出さない。
 この頃はまだ裁判所が正義の機関だと勘違いしていたので、粛々と「金額の問題ではありません。娘の命と意思を最優先に考えるから、引き渡すつもりはないです」と正直に答えただけで終わった。
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