どうすれば父は、私に心を残さず「身勝手」に終わる事が出来るのだろう
文字数 415文字
賃貸契約書類の記入をしていた最中の事、
思い掛けず【現実】に直面した。
ついこの間還暦を迎えたばかりだった筈の父は、いつの間にか72歳になっていた。
あぁそうか。父が還暦だったのは私が21の時だ。
もうそんなに経ってしまっていたのかと。
親に失礼だと重々承知した上で、無性に泣きたくなった。
今生きて居てくれる人にこんな事考えるべきでは無いかも知れない。
今在ってくれる命の終わりを思ってしまうのは、
生者に対する冒涜なのかも分からない。
それでも「間に合わせたい」と思わずには居られない。
生きて居てくれる【今】じゃなきゃ、きっとこんな事考えられない。
だからごめん、父さん。
父が今思い残しているものって何だろう。
父が私に思う「心残り」って何なのだろう。
どうすれば父は、私達に【心】を残さず身勝手に終わる事が出来るのだろう。
どうすれば父は、私達に「悲しみ」だけ遺して逝く事が出来るのだろう。
どうすれば私は、父の杞憂をことごとく絶やして行けるのだろう。