第1話

文字数 1,125文字

私は歌に詳しくないので気のせいかもしれないが、世の中は恋の歌であふれていると思う。
恋は人生を彩るものではあるが、傷つくものだ。叶うかどうかわからないで不安な気持ちを抱えている人、叶わないと思いながらも相手を想わずにいられない人の心に、恋の歌が染み入ることがある。
恋はそれだけで詩的で、多くの人が尊いものだと崇めている。
だが、歌は切ない恋をしている人のためだけにあるだろうか?愛がすべて?いや、もっと他にもあるはずだ。恋や愛の他にも、日常にはやりきれないような無数の気持ちが浮遊していて、歌詞にのせられるのを今か今かと待っているのだ。
世の中には、ロックという世界があるらしい。ある人が言うには、ロックはもともと反骨精神から生まれたもので、恋の歌は少ないとか。ロックはブルースから発展したと聞き、全然別物のように思えるので驚いた。
1980年代はハードロックがメジャーで、1990年代は派生が生まれて、ミクスチャーロックが流行ったりした。
今回、NITRODAYというロックバンドを知り、新しいアルバムを聴いてみたら、これはハードロックとは対極をなし、それ以前からあるオルトナティブロックの中の、グランジというジャンルのようだった。グランジは、アメリカシアトル発祥で、ガレージロックとも言われており、シンプルな曲調をしている。NITRODAYのギターも、グランジ特有のチープな音がカッコいい。
アルバムは、全体的に聞きやすい曲が多く、聴いているうちに鼻歌のレパートリーが増えていることに気づく。
ボーカルの小室ぺいが書く歌詞にも引き込まれるものがあった。青少年のザワザワを通じて、季節の移ろいや、乾いた空気感まで感じられた。無力感、虚脱、焦燥、疾走感といった情感が、文学肌にしっくりくる。
ボーカルの高めの声とバンドの音で、時にはけだるげな希望をもって、時には悲痛に、世の中や自分自身への感情がしみ出た歌を歌うバンドだと思った。
個人的には、レモンドやユースのような影のある歌が好きだが、テレビで格闘技を観るせいか、ボクサーにも感情移入し、歌詞の最後の部分にもやられた、という感じがした。
様々な角度からアプローチした曲が揃っており、飽きが来ず、バランスのいい顔ぶれではないかと思う。
また、プロモーションビデオも手をかけて作られている印象を受け、楽しく観られるのでおすすめだ。
一曲聞いただけではNITRODAYらしさはわからないので、知らない人には、あらかたの曲を聞いてほしい。そもそも、らしさがあるかどうかは別だが。
複雑に生い茂ったロックの世界から、NITRODAYの歌が今よりもっと世の中に広がってほしいと願う。
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