【7時限目】他国の家庭教師

文字数 3,075文字

 ……というところです。本日の現代魔法の講義はここまでにしましょう。宿題についてですが……
2018/04/29 14:26
 はぁ、やっと終わり~? もう現代魔法は飽きちゃったわよぉ~

2018/04/29 14:28
まったく、なんて集中力の無いドラゴンなのでしょう。所詮は邪悪竜ですわね。
2018/04/29 14:29
ふっ。姫様、そう馬鹿にしたものでもないですよ。このあたりは難問ビッチの本領発揮、という感じでしょうか。
2018/04/29 14:32

……何か、癇に障る言葉ですわね。

その難問ビッチって、一体何ですの?
2018/04/29 14:33
簡単に言うと、バハムートさんは試験において、姫様とは全く逆の問題を抱えている……ということですよ。
2018/04/29 14:34
私と、全く逆の問題……?
2018/04/29 14:36
姫様は一つの難問に囚われて足踏みした結果、解けない問題が多く試験に落第してしまうタイプですが……彼女は難問の解き方を頭で閃いた瞬間に問題そのものに飽きてしまい、解くことを途中で放棄してしまうタイプなのです。
2018/04/29 14:37
解答法を思いつきながら、途中で解答を放棄する……絶頂を放棄するということ……?

エクスタシーへの冒涜ですわ!!

2018/04/29 14:39
うーん、何と言うか、問題の解答法を見つけた瞬間にモチべーションがゼロになってしまい、次の問題にさっさと取り掛かってしまう感じですね。


そう、問題を飽きたら捨てる……問題を取っ替え引っ替え……。

故に、難問ビッチ。

2018/04/29 14:41
問題を……飽きたら捨てるですって……!?
2018/04/29 14:48
だってぇ~、

問題(おとこ)なんて、試験用紙にウジャウジャいるじゃない~?

それなのに、一つの問題に固執するなんて、つまんな~い!

2018/04/29 14:49
このアホ竜……もとい、バハムートさんはこの習性のせいで試験は全問部分点だけしか取れていないのですよ。


ただ、途中までの解答は全て合っているので、ある意味では天才なんですが……

2018/04/29 14:52
わ、私は断じて認めませんわよ!!

こんな軽率が服を着て歩いているような邪悪龍ごときが、天才などと……!!


あなたも、講師の端くれなら馬鹿は休み休み言うことですわね!!

2018/04/29 14:54
ええ~、ちょっと、嫉妬してるのぉ~!

女のジェラシーは面倒臭いからやめて欲しいんですけど~~!

2018/04/29 14:55
まぁまぁ、二人共その辺でやめておきましょう。

あなた達はド変態という点は同じですが、欠点は真逆です。ですから、お互いを見て勉強することで必ず欠点克服の参考になるはずです!

2018/04/29 14:56
ええ~、参考になることなんてあるのかなぁ~?
2018/04/29 21:23
それは、こっちのセリフですわ!!
2018/04/29 21:23
やれやれ、困ったド変態共ですね……
2018/04/29 21:24
 姫は一つの問題に魅了されると、そこだけに固執してしまい全ての問題を解く事なく試験を終えてしまう。バハムートのように別の問題に『適度に浮気』することを覚えれば、正答率は上がる。


 逆にバハムートは一つ一つの問題から『やり逃げ』せず、最後まで付き合い切ることができるようになれば、全問正解はたやすいはず。


 この二人がお互いの足りない所を補完し合うことができれば、合格への大幅なステップアップになるのは間違いないのだが……。

2018/04/29 14:59
おや、今日はもう時間のようですね。

教材を片づけましょうか。

2018/04/29 15:09
あ、あの………
2018/04/29 15:10
 そそくさと片づけをしていると、一人の女性が話しかけてきた。


 見慣れない顔だが、フードの着いた漆黒のローブらしきもの……まるで、僕の着ている講師服と同じような服装をしていた。

 

 マフラーとフードのせいで、顔の表情までは細かく読み取れないが、若い女性のようだ。

2018/04/29 15:10
……あの、何か御用でしょうか?
2018/04/29 15:13
と、突然すみません!

先程からのあなた方の叫び声が路地まで聞こえてきたものですから、つい立ち聞きしてしまいまして……


その……失礼ですが、あなた方はレッドブック国王家の方々ではありませんか?

2018/04/29 15:13
あぁ、僕達はですね……
2018/04/29 21:46
あなた方とは無礼千万!!

レッドブック王家の人間は私一人ですわ!!

このような者達と私を一緒にするとは、なんたる屈辱か……!

2018/04/29 15:15
こ、これは大変失礼を……!

と、いうことはあなた様はもしや、カワイ姫様でいらっしゃいますか……?

2018/04/29 15:17
いかにも。私がそのレッドブック王家次期当主、【レッドブック・モシ・カワイ】ですわ。
2018/04/29 15:18
おお……! な、なんという幸運の巡り合わせでしょう……


あ、申し遅れました、私はチャート国で第一王子の家庭教師をしております【マーク】と申します。


姫様の御噂は、主君よりかねがね……

2018/04/29 15:20

チャ、チャート国ですって!?

2018/04/29 15:23
は、はい。その通りでございます。
2018/04/29 15:25
こ、これは失礼。思わず大声を出してしまいましたわ。それにしても、チャート国とは……まだ存続していたのですね。


てっきり、1000年前の戦争で滅んだとばかり……

2018/04/29 15:26
……はい。恥ずかしながら、現在まで長らえております。残念ながら、領地は最盛時の百分の一ほどになってしまっておりますが……
2018/04/29 15:28

そうだったのですか……。

私、1000年近くほぼ引きこもっていたせいで世情には疎くて……。


まぁ、あなたが何者なのかは分かりました。


……それで、そのチャート王家の家庭教師が、私に何の御用ですの?
2018/04/29 15:29
は、はい。私は現チャート国国主・イーテンハイ様より勅命を受け、レッドブック城に向かっている途中でございました。


まさか、その途中でカワイ姫様にお会いできるとは思っておりませんでしたが……

2018/04/29 15:30
城に向かっていたですって……?

なぜです?

2018/04/29 15:31
はい、実は来年……70798年は、貴国と我がチャート国との友好条約締結後1000年という記念の年なのです。


その記念の年をより華やかに迎えるため、また先立っての友好の証として、私が貴国にて姫様の家庭教師をさせていただくよう主君の命を受け、馳せ参じたという次第です。

2018/04/29 15:31
なるほどねぇ~、そんな記念の年に相手国の姫様の1000浪が決まったりしたら、式典とかに泥を塗るようなものだもんねぇ~
2018/04/29 22:32
邪悪竜、あなたは黙っていなさい!!


……しかし、そのようなこと、私は全く聞いておりませんが?

2018/04/29 15:33
あ、そういえば裁判の後、王様からそんなお話を伺ったような気がします……。


まぁ、姫様が落第すれば式典の成功どころか王位継承権すら失うんですからね。

受験の助けになるものなら、なんでも利用する腹積もりなんでしょう。

2018/04/29 15:36
そ、そうなれば、あなたも免罪されず投獄されるのですよ!

そんな他人ごとみたいに……


2018/04/29 15:36

ま、まぁそれはさておき……。

王様の話によると、チャート国との間でとっくに話はついていたようです。

私としても、助手的なスタッフが欲しかったので歓迎すると言いましたし。


尤も、こんなに早く派遣されて来るとは予想外でしたが。

2018/04/29 15:37
まったく、お父様の悪い癖ですわ。また私の預り知らない所で事を進めて……!
2018/04/29 16:04
何にせよ、先生が一人増えるってことでしょう~?

なんか賑やかになっていいじゃない~!

私、人が多い方が好きぃ~!

2018/04/29 16:06
バハムートさんはすぐに環境に飽きちゃいますからねぇ。

あなたの超速マンネリを防ぐためにも、人が多いに越したことはないかもしれませんね。

2018/04/29 16:07
そ、そう言っていただけると幸いです!

頑張らせていただきますので、よろしくお願いいたします!

2018/04/29 16:08
うーん……まぁ、お父様が決めてしまったことでしたら、仕方ないですわね……


丁度今から、私達は城内に戻るところですが……あなたも一緒にいらっしゃいますか?

2018/04/29 16:09
は、はい、是非とも!

ご配慮ありがとうございます!!

2018/04/29 16:10
 こうして、僕達【異能力総合学院予備門・特進クラス】は姫様と同等のド変態クラスメート、さらに謎だらけの新たな講師を含む総勢4名の体制となった。


 そう、僕達の命運を懸けた受験戦争はこれから始まるのだ!

2018/04/29 16:11

2018/04/29 16:12

………はい、手筈通りに。


ご安心を。

必ずやカワイ姫の1000浪を達成し、クーデターの基盤を築いてご覧に入れます。


ふふ、ようやく始まるのですね。


我々の、復讐劇が……!

2018/04/29 16:17

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

第1章 終わり

第2章 へ続く

2018/04/29 16:20
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登場人物紹介

◾サトル(29歳/♂)

異能力総合学院予備門の講師。

地球でも塾講師をしていた。

ある罪の免除のため、予備門の講師にされてしまった。

丁寧かつ控え目なドS。


彼の眼が開かれた時、何かが起こるような起こらないような。

◾カワイ姫(1019歳/♀)

異世界のとある小国、レッドブック王家の姫様。天使。

異能力総合学院を目指す受験生。

ガリ勉風だが999年浪人中。

王族気質の自信家かつ傲慢なドM。


ただでさえM気質ではあるが、真価が発揮されるのは難問に直面した時。試験問題を脳内擬人化し、問題を解くことができない自分を問題が責めてくるという妄想をして最大限興奮するという奇特すぎる性癖を持つ。


彼女が眼鏡を外した時、何かが起こるような起こらないような。

■バハムート(2500歳/♀)

見た目ビッチ、中身もビッチなフェロモン剥き出しの邪悪竜。

カワイ姫と同じく異能力総合学院入学を目指す受験生。

勉強と掛け合わせた性癖があるらしいが詳細は謎に包まれている。


一国を燃やし尽くす威力を持つ【メガフレア】を吐くことをライフワークとしている。

■マーク(?歳/♀?)

レッドブック国の同盟国・チャート国で第一王子の家庭教師を務める人物。

両国の友好条約締結1000年の祝賀に先行し、友好の証としてレッドブック王家に家庭教師助手として派遣されて来た。

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