第2話(1)

エピソード文字数 1,588文字

(よし。おっぱじめますか)

 ニンマリから約5時間後の、AM6時。俺はレミアが寝ている部屋の前で、息を潜めて立っていた。

『おいお前。これから何をするつもりなんだ?』

 また謎の御声が聞こえてきたので、御説明しましょう。僕がこれからやろうとしているのは、『嫌われ作戦』だ。

(レミアが俺と住みたくないと思えば、おのずと契約は解除される。今からそうなるように、好感度を下げまくるのだ)

 これを夜に思い付き、高知名物・芋ケンピ(定番のノーマルなモノからガーリック味など様々なバージョンあり、おやつにもおつまみにもなる最高の一品。一度食べるとクセになるので、皆様是非どうぞ!)を齧りつつ徹夜して煮詰め、第4弾まで用意した。こんなにあれば、愛想を尽かしてくれることでしょうっ。

(さーて。あの子が寝ているうちに、その1をやりますか)

 記念すべき、第1弾。それはズバリ――母さんの『寝ている間に催眠術』からヒントを得た、『寝てる間にイタズラをする』。

(まず部屋に忍び込み、墨で顔に落書き。そうやってる間に目覚めさせれば、光の速さで幻滅するのである)

 顔に墨をつけられて、喜ぶ人はいない。上手くいけば、即座に帰るに違いないよね。

(許してよ、レミア。嫌な思いをさせてしまうけど、俺は何としても――……。嫌な想い、か)

 顔に落書きなんてされたら、泣いちゃうかもしれない。最悪心に傷を負ってしまい、墨を見ただけで負の記憶が蘇るようになる可能性がある。

(………………墨で落書きは、やめだな。ほっぺを筆でくすぐるだけにしよう)

 これなら、ダメージは減る。そこまで害はない――と、言い切れるのか?

(寝てる時に悪意を以て触られるのだって、充分嫌だ。……これでもトラウマになる可能性はあるな)

 うん。だとしたら、触る、もボツだ。

(そうなると、あれか? 枕元に座り、起きたら『可愛い寝顔だったね、小ネコちゃん』とニヒルに微笑む、にするかなぁ)

 いくらなんでも、それはトラウマにならないでしょう。これなら安全に、『勝手に侵入した』って部分で不快に――

(勝手に、侵入……。相手の立場になって考えてみると、そもそもソコが恐怖だよな)

 出会って間もない異性が、意識がない時に入ってきていた。ソレが怖くなって以後は寝付けなくなり、不眠症になるかもだ。

(………………。こんな危険性があるなら、そうだね。寝てる時に何かする系は、やめにしよう)

 作戦は第4弾まであるんだ。あと3つ残っているから、ここで何もしなくても左程支障はない。

「というワケで、その1はお仕舞い。本日は晴れで朝陽が綺麗だから、起こして見せよっかな」

 次の作戦までは時間があるし、どうせ来たのならこっちの日本を楽しんでもらいたいからね。迷惑かもしれないけど、俺が好きな光景を満喫して頂こう。
「おーいレミアー。朝ですよー」

 トントン扉を叩き、呼びかける。その際サービスで「チュンチュン」とスズメの鳴き真似をしたら、あまりに似てなくて軽く凹みました。

「レミアちゃーん。起きてくれー」

 ノックと呼びかけを繰り返す。が、内側から返事はない。
 懲りずにチュンチュンを付け足してみても、返事はない。

「こりゃ、熟睡してるんだな。些か気が引けるが、入って起こしますか」

 どうしても拝んで頂きたい故、拙者は入室する。急に古風になったのは、中に女の子がおり緊張しているからでござるよ。

「お、お邪魔しまーす。アナタを起こすために、入ってきましたよー」

 ビックリさせないよう大声を出し、しっかり足音を立ててベッドに向かう。これだけ音を出したら、着く前に目を覚ますよね――ん?

「あれ? レミア、いないぞ?」

 なんと、ベッドはからっぽ。魔王様の御姿はなかった。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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