第118話  入れ替わり体質の敗北 2

文字数 2,904文字



 ※


 新しい家族を迎えて二時間後。この頃になると、ももやまろにも若干余裕が出てきたのか、わりと好き勝手に行動し始めていた。


 俺も付きっきりではいられない。洗濯なり夜飯の準備などをしていると、スマホに着弾したのは平八さんのラインであった。

約束の物を持ってまいりました。あと五分でお伺いします
お、はえーな平八さん

 約束のブツと言うものは何か。それを語ろうとした瞬間にピンポーンとインターホンが鳴った。


 五分というより五秒だろ。

 などと心の中で突っ込みながら、俺はまろを抱きかかえて玄関へ向かう。

おお、これはまた可愛いミニチュアダックスですな

へ~。平八さんも犬種は分かるんですね。


ほら。まろちゃん。平八おじさんだぞ。俺の家族だから安心するわん!

安心するわん? ですと?

平八めは、犬にはわりと詳しいですぞ。

その昔。トイプードルを飼っておりましたゆえ。

 平八さんがトイプードルを? ちょっと想像できないんだが。

では、お近づきのしるしにこれをどうぞ。

平八めは、あなた達の味方でございます。


 平八さんはコンビニ袋からジャーキーを取り出すと、早速まろに咥えさせる。

 やっぱりこの辺は平八さんも分かってるらしい。

  

 抱っこされながらも、まろはジャーキーに夢中である。

 あぁ、なんて可愛いんだろうか。

 

では、楓蓮お嬢様。平日には平八めがこの子達をお預かりすればよろしいのですね?

お願いします。でもスケジュール的に無理なようならすぐに言って下さい。

一応はこの子達を譲ってくれた方にも、預かってくれるとは言われましたが……毎日お世話になるのはどうかと思って……

分かりました。基本は聖奈お嬢様の送り迎えがありますゆえ、大丈夫かと思われます。

お任せ下さい。わんちゃんの世話には、平八めにも自信がございますぞ。

 頼もしい限りだ。 これで平日の昼間は大丈夫だろう。

 バイトに行く時間は華凛に任せて、休日はがっつりわんちゃんと戯れる。これでバッチリだ。

よかったぁ~これでまろちゃんも安心だぞ。

 この二時間で抱きかかえスキルは習得したぞ。最初はやたら怖がっていたが、今では震えたりもしない。

 それよりも俺の顔をクンクン匂う仕草にメロメロである。

さて。あまりお時間がございませんので、用件だけを
 そう言いながら平八さんは紙袋を手渡してくる。
これは?
これが平八スペシャルでございますれば、それを着用することにより、楓蓮お嬢様のおっぱいは安泰でございますぞ

 あ~。今平八さんが言ったとおりだ。

 つまり俺は、胸が垂れるという話を平八さんにこそーっとしておいたのだ。


 平八さんはすぐに対応しますと言ってたが、まさか今日の内に持ってくるなんて思いもしなかったぜ。

できれば。その補正下着を装着した状態を是非ともツイッタにアップさせて頂きたく存じます
分かりましたっ! 協力します!

 ニコっと笑顔を見せると、平八さんの無表情が更に無表情となっていた。


 今日の俺は凄まじく機嫌が良い。

 それもこれもきっと……ももちゃんとまろちゃんという新しい家族が出来たから。これに尽きる。


 一度まろちゃんをリビングでリリースすると、平八さん推奨の補正下着を装備する。


 お、全然違和感なし。付けててもあんま気にならない。補正下着って事で締め付けがキツイんじゃないかと思ったが、全然平気だぞ。



 そして玄関に戻ろうとするのだが……





 すると、なんとまろちゃんが俺に付いてくるのだ。 

 しかも、尻尾をフリフリして、申し訳なさそうに覗き込んでくるのだ。     

 な、なんだよそのピュアな瞳は!

ああっ…… お、俺を。俺を飼い主だと認めてくれたのか?

そうなのか? まろちゃん!

大丈夫だよ。どこにも行かないからねっ。


ああっもうダメだこれ。完全に堕ちちまった。

そんな切実な目で見つめられたら、惚れるしかねーだろ!

 その時、まろちゃんが得体の知れない声を発したのだ。 
すーすーすー。と何処から声を出しているのか謎すぎる。
そんな弱々しい声を出しながら、俺の視線の遥か下から円らな瞳で覗き込まれると、無意識にしゃがみこんだ。

ほら、おいで
 まろちゃんを腕で抱きかかえると、あまりの可愛さに頬ずりしまくっていた。

 さっきから俺のハートにずっきゅん刺さりまくって、もうデレッデレになってしまう。

あ~んもう! 可愛い。可愛すぎるっ!

ダメだこれ。ダメなやつだ。ああもう可愛すぎて……顔がふにゃけるぅ

これはこれは……楓蓮お嬢様の純正デレ顔100%でございますれば、爆レア確定ですな。

そんな仕草を見せられては、大抵の男なら一撃で堕ちるでしょうな。いやはや、さすがは麗華さんの娘でございます。

 いつもなら反論しそうだが、今に限ってはどうでも良かった。

 男でも女でも、可愛いものには、デレてしまうだろ?


 と、平八さんが喋っている間にも、まろの求愛行動? が止まらず、とうとう鼻先をペロられてしまった。

はぁう! ああっ。き、きゃわいい! もうっ!

まろちゃん大好きっ!

 その間にもバシバシ写メを取られるが、全然気にならない。
抱っこしたところも撮ってください!

 平八さんのカメラワークスキルはすげーからな。

 そんなこんなで大量に写メを撮ってもらい、早速お気に入りの一枚をスマホの壁紙にすると、俺はもう笑顔がダダ漏れになってしまう。

 

ご協力感謝いたしますぞ。これでおっぱい職人としての面目も立ちます。
いえいえ。俺も精進しますんで、何でも言って下さいね!
 終始笑顔で平八さんを見送ると、再びまろちゃんを愛でる作業に没頭していた。

 

 まさか。俺がこれほどまでにわんちゃんに激ハマリするとは……

 テレビや動画で見てても可愛いなぁとは思っていたが、実物は全然別モノだったわ。

 紫苑さんがマジョリーナちゃんにデレっぱになるのも、今ようやく理解できた気がする。

 ※ 


 平八さんが帰り、暫くすると華凛はスマホをやり始めてしまった。

だって。イベントもやらないと
 こんな日はやらなくていいだろ。とは思うものの、俺だってももちゃんとも友好関係を築かなければいけない。 

   

 二匹のわんちゃんにベタ惚れした俺は終始ご機嫌だった。




 そして……問題の時間がやってきた。

よし華凛。俺から行く
うん。いいよ。あっ……ねぇねぇ! 魔優お姉ちゃんもイベントやるって! やろうよ!

 あ~ちなみに言わせて貰うが、


 先日ソシャゲーをやってた時に現れた手練れの二人組※なのだが、まさかのミユマユちゃん達だったのには驚いたぜ。



 二人ともガチガチの重課金さんがね……


 しかも何キャラも持っており、かなりソシャゲーにハマっているらしいが……



 すまんが魔優。俺は今それどころではないのだ。


 ここからだ。ここから入れ替わり体質である俺たちの試練が待っているのだ。


 ようやく慣れてきたももまろ達に、もう一つ大事なことを教えないといけない。


 楓蓮と華凛はわんちゃん達に認められたが……


 俺達が蓮と凛になった時。果たしてももまろは分かってくれるのか、そのテストを今から行うのであった。

――――――――――――


次回、入れ替わり体質の敗北 3



手練れの二人組※ 81話 おっぱい職人より

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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