第1話 ダイジョバナイ選手
文字数 1,320文字
2021/03/31
サッカー全国大会の3回戦を突破した。
城東高校3年の真也は昔からサッカーだけしかしてこず、彼にはサッカー以外なかった。
彼にとって、これは最後の大会だ。
絶対に優勝しなければならない。優勝してJリーガーになるのが、真也の唯一無二の夢なのだ。
「博士、次の相手はなかなか良いディフェンダーがいて強い。何か策はないか?」
「なるほど。では、これでいこう。」
「な、なんですか?それは?」
「これは磁石スパイクだ。」
「じ、磁石スパイク?」
「そう、これはサッカーボールとスパイクをBluetooth接続することにより、サッカーボールとスパイクが当面の間引っ付いた状態でいられるという優れものである。使いたまえ」
「あ、ありがとう」
準々決勝。強豪校である諦京高校と戦った真矢達は前半で64点(満塁ホームラン含む)をあげ、諦京高校はハーフタイムに軽々と白旗を挙げた。
「博士、なんとか勝ったよ。でも、やべーよ。次は大型フォワードがいるんだ。マジ、半端ねえんだよ。なんか良い策はないかよ?」
「これがある。」
「なんだい?そのロープは?」
「これは、その選手の名前をここに書くことによりその選手の足に絡みつき、ギュッと結ぶ、蝶々結びで」
「蝶々結びじゃ弱くない?」
「大丈夫だ。蝶々結びの羽の部分を固結びで結ぶタイプの蝶々結びだ」
「ならば……よし。」
準決勝。ピーというホイッスルと共に慎也は対戦校である西高校の大酒選手の名前をロープに書き込むとロープは大酒選手の足に絡まりつき、蝶々結び。しかし、誰も気付かない。
開始3分で、ハットトリックを決めた信也は勝利を確信した。しかし、そこから大酒選手の反撃が始まった。ロープに足を硬く結ばれた状態で逆立ち、ドリブル、1.2パス、エラシコ、また抜き、自分へのスルーパスからのバイシクルシュートを繰り出し、ハットトリックを決めたのである。
最終的にPKでなんとか勝利した晋也達であった。(例のロープで今度はキーパーの名前を書いた)
「博士勝ったよ。次はいよいよ決勝だ。ただ次のチームはやばい。絶対に勝てないチームだ。キャプテンのラモネス瑠衣子という女が率いてスキがねえんだよ。」
「仕方ない。アレを使うか。」
決勝戦。相手のヴィバルディ川関は優勝候補の筆頭である。余裕の顔つきで既に勝利を確信しているようである。
ホイッスルと共に博士が用意したロボット「落とし穴掘川君」は相手の全選手の周りに落とし穴を掘り、すぐに相手の全選手が落とし穴に落ちた。ハーフタイムには相手校のマネージャーは穴に落ちたそれぞれの選手にスポーツドリンクを落とした。選手同士はなんとか糸電話により、後半の作戦を話し合った。
そして、後半。穴の中から捨て身の作戦で反撃を試みる相手。しかし、間に合わず、信也のチームが0-0(PK3-0)で勝利し、初優勝を果たした。
3ヶ月後、TVの前でブランデーをロックで飲みながら指名を待っていた真矢。しかし、何故か真矢を指名したJリーグのチームは無かった。
「…くそ!何がいけなかったんだよ。クソ野郎。」
慎也は涙が止まらなかった。
数日間、家族も友人も誰も彼に声を掛けなかった。いや、かけられなかった。みんな引越しの準備で忙しかった。