でも卒業できない男ダビデ
文字数 842文字
受け入れがたい現実に頭を抱えるダビデだが、イタズラにしては手が込みすぎている。衛兵まで使って部外者のダビデを騙す理由があるとは思えない。
何より、エリコに入る前は見えなかった城壁が突然現れたことにも説明がついてしまう。理解はできずとも納得するしかない。
となると、まず最初に確認すべきことがある。
エリコは城壁に囲まれた町であり、ラハブの家はその城壁に埋め込まれるように建てられている。つまり窓を飛び出せばそこは町の外の上空。そして、その下には。
駆けつけた王女ミカル……だった生体兵器にまたがり、西を指差す。その先にあるのはつい先日出てきたばかりの首都エルサレム。
地を割るばかりの速度で駆け出したダビデたちの背中に、ラハブは口に手を当てて叫ぶ。
うなだれるダビデを振り落とさんばかりに速度を増したミカルの姿は、暮れなずむ西の地平線へとたちまちに消えていった。