我が家の言い伝え(11/24)

文字数 777文字

ピーマン嫌い少年は
とてもまじめなのに
頭が良くないことをコンプレックスに思っていて
ピーマンを食べると頭が良くなるらしい
そんな嘘を信じてピーマンを克服したのだが
美味しいと思ったことはなかった

父に連れて行ってもらった定食屋で
ピーマンの肉詰めを父が頼み
僕はラーメンと餃子を食べて
ひとつピーマンの肉詰めをもらった
食べたかったのではなく
ピーマンを食べれば頭が良くなると信じていたからだ
その時はとんかつソースだったのだが
ピーマンが関わる料理で
はじめて美味いと思った
あまりの美味しさに
父はラーメンと餃子を食べることになった

不味いと思いながら食べていた時は
克服したけど
頭は良くならず
美味しいと思ってからは
頭が良くなるかどうかなんてどうでも良くて
とにかくピーマンを食べたら
なぜか成績が上がり始めた

ピーマンを食べると頭が良くなるのか
僕は分からないというか
コンプレックスを利用した
母親の嘘なのだが
まぁ、そんなことはどうでもいい
ピーマンの肉詰めを食べると
頭が良くなると信じた日や
出合った日を思い出す

ピーマン嫌いの息子達にも
当然のようにピーマンを食べると頭が良くなると叱咤した
なに、それ?
妻は冷静に
そんな話聞いたことない
子供に嘘はダメだよ
と怒られ
頭が良くなったらお父さんみたいになれるの?
と息子に聞かれて
応えられない
説得力なし
妻が笑う
頭なんか良くならなくていいから
健康が一番
好き嫌いするとダメ
ピーマンを食べると大きくなれるから
えっ、そうなの?
妻は胸を張って
我が家ではそう伝わっているというのだが
どちらかと言えば小柄なのだ
説得力ないじゃん
だから、ダメなのよ
体じゃなくて心なんだから
堂々としたものだ
僕、心がおおきくなりたい
僕もなりたい

息子達にはものすごく響いたようだ
頭が良くなるなんていう卑しい目的ではなく
心が大きくなるという壮大な目的に向かって
息子達はピーマンの肉詰めをとにかく食べる
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