第3話 神々の憂い

文字数 1,436文字

『…感じているか?カゼノイシ。』
『…ええ、あなたも感じているのね。』

ツチノイシの問いにカゼノイシは、少し悲しげに答えた。

『どうやら、この流れは止められぬ…。』
『そうね…。フーナや他の三人がこれ以上力を使わなければ、私達の懸念も無いけれど…。』
『…そうはならないな。』
『多分ね…。』

すると、ヒノイシが念を送る。

『…わしは「ヒトノイシを作れ」などと言っていた自分を、今では恥じているよ。』
『そうね…。私も人間を知ろうとしなかった自分を恥じているわ。』

ミズノイシが共感すると、カゼノイシが語った。

『アマノイシは始めから一貫していたわ。彼らの手助けはするなと。それはつまり「人間の運命は人間が決めるべき」だという事。その時に私達は気づくべきだった。…いえ、気づいた所で変わらなかったわね…。』
『人間もまた、自然が生み出した意志。我らはそれに気づかなければならなかった…。全ては繋がっている…我ら「神」の存在でさえ自然の意志なのだから。そして彼らも…』

ツチノイシの言葉を受け、ヒノイシが問う。

『彼らに言うべきか?この先の事を…。』
『言ってどうなるの?彼らは自分達が持つ「神の目」に気づき始めている…。』

ミズノイシは、これから来る変化に抗えない事を感じていた。ツチノイシが共感する。

『そうだな…彼らに伝えた所で彼らの意志で行動している以上、何も変わらぬ。アマノイシが言う『罪』とは、人間もまた自然が生み出した事に気づかず、我らと人間を切り離して考えていた事。我らは人間の愚かさを憂いていた…だが、憂うべきは我ら自身だったのだ…そして、そんな愚かな我らにもたらされたのが、あの四人であろう…。それは、我らに与えられた『罰』なのかもしれん。あの四人もまた自然が生み出した『意志』そのものなのだから。』
『それに気づいたところで、もう遅いわね…。あの四人がこの世界に生み出された時点で、私達の運命も決まっていた。』

カゼノイシが、自らを嘲笑した。ミズノイシが納得したように語る。

『「先ずは、国を滅ぼせ」…アマノイシがそう言ったのは、彼らに世界を見せる為だったのね。国を滅ぼすこと自体が目的ではない。彼らが「国」と言う概念から解き放たれる事が目的だった…。』
『だが、カチはまだナッカを守ろうとしている…。』

ヒノイシは不安を隠せなかった。

『例え、守ろうとしても恐らく結果は変わらないわ。守る為に使う力で、彼は覚醒してしまう。恐らく他の三人も…。』

カゼノイシの意見に諦めたように、ヒノイシはため息をついた。

『…わしらは「神」という存在である事に、あぐらをかいてしまっていたのかもしれん…。』
『そうね。私の中に既にミツが存在し始めている…。いえ、既に

私がいるだけかもしれないわ。』

ミズノイシの感覚は、他の神々も感じていた。そしてその感覚は徐々に増している事にも気づいていた。自分達が

感覚を…。

『覚悟しなければならないだろう。彼らの「意志」が何を選択するかで、我らの運命は決まる。』

ツチノイシの意見に皆賛同したが、カゼノイシは静かに笑った。

『どうなってしまうのかは分からないけど、私は感じるわ。例えどうなってもフーナと一緒にいられる事を…だから、そう悲観したことでもないかもしれないわね…。』

四神は、カゼノイシの言葉に少し救われたような気がしていた…。
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登場人物紹介

アマノイシ(創造の神)

ヒノイシ(火の神)

カチの目を持つ

ミズノイシ(水の神)

ミツの目を持つ

カゼノイシ(風の神)

フーナの目を持つ

ツチノイシ(土の神)

オングの目を持つ

カチ(ナッカ国のカチ)

・鍛冶職人。右目に眼帯をしている。

・左手の指を二本失う(第1章第3話)

・仕事仲間のヌイトをクイに殺される。(第1章第3話)

・ヒノイシと共にある。

ミツ(トステ国のミツ)

・着物の染め師

・トヌマ(クイ)に好意を持つ(第1章第5話)

・幼馴染のカイヤの夫ロトが戦で死亡(第1章第6話)

・妃マルナのお気に入り

・ミズノイシと共にある。

フーナ(ナッカ国のフーナ)

・旅芸人一座の担い手

・同じ舞い手のチルミがタズ将軍(ドガ)に殺される。(第1章第8話)

・クイを装い逃亡中

・カゼノイシと共にある

オング(トステ国のオング)

・クイであるが普段は炭鉱夫。

・トヌマとは知り合い。

・鍛冶職人虐殺に加担。ヌイトを殺害する。

・養子ノアを失う(第1章第12話)

・ツチノイシと共にある。

ゴンガ(ナッカ国)

カチの友人。大将に就任する。

クナル(ナッカ国)

ナッカ国元帥。

ムタイ(ナッカ国)

元大将

ネスロ(ナッカ)

中将でムタイの腹心の部下

デング(ナッカ国)

フーナのいる一座の座長。娘チルミをタズ将軍(ドガ)に殺される

トヌマ(トステ)

・クイでオングの知り合い。

・マルナの護衛。

マルナ(トステ)

天子スミナルの妃

カイヤ(トステ国)

ミツの幼馴染。夫(ロト)を戦で失う。

ガイダル(センゴク村)

センゴクに住む老婆。

グイダル(センゴク)

センゴクに住む老夫

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