第52話 生まれ変わり
文字数 1,030文字
地に足がつかないような、体がふわふわするような、おかしな感じがして、真っ直ぐ歩くのも一苦労だったけれど、なんとか家まで帰り着いた。母は、もう出かけた後だ。
自分の部屋に入り、ベッドに倒れ込む。西原有希としての自分は、まだキスすらしたことがない。
それなのに僕は、唇が重なる感触も、舌が絡まり合う感触も知っている。それどころか、肌の上を唇が這う感触も、胸の突起を吸われる感触も、体の中心部を強く貫かれる感触も!
鮮明な記憶に刺激されて、体が反応し、熱く切なく疼く。あぁ、伸くん……。
服を脱ぎ捨て、記憶をたどりながら、一人、恥ずかしい行為にふけった。伸くんの手は、舌は、ここを、こんなふうに……。伸くんの熱く張り詰めたものは、僕の、ここを……!
果てた後、裸のまま少し眠った。目を覚ましてシャワーを浴びた後、部屋に戻ると、スマートフォンが震えていたのだった。
テーブルの向かい側に座った伸が、呆然としたように見つめている。彼は言った。
「僕の話、わかってくれた?」
「つまり君は、行彦の生まれ変わりだと……」
「そうだよ。最後に伸くんと愛し合った後の記憶はないけど、多分、僕の魂は、しばらく眠り続けた後、有希として生まれ変わったんだよ」
「そうなのか……」
口ではそう言いながら、伸は、まだ半信半疑といった表情だ。
「ねぇ。信じて」
伸は、まぶしそうに、彼を見ながら言う。
「君が嘘をつくはずがないし、もしも嘘だとして、君がそんなことを知っているはずがないし、嘘をつくメリットもない。
何より、その顔を見れば、君が行彦であることは疑いようがない。ただ、あまりのことに、びっくりし過ぎて、思考が追いつかないんだ」
「そうだよね」
彼は微笑む。
「僕も、すごくびっくりした。びっくりし過ぎて、さっきは倒れそうになったよ」
「あの後、大丈夫だった? 知らないうちに帰ってしまったから心配したよ」
彼はうれしくなる。あぁ、やっぱり伸くんだ。僕を気遣ってくれる優しさも、心配そうな表情も、あのときのままだ。
「伸くん、ちっとも変わらないね」
だが、伸は苦笑する。
「そんなことないよ。すっかり、おじさんになっただろ?」
「何言ってるの。伸くんは、おじさんなんかじゃないよ。
あのころの伸くんも素敵だったけど、今は、さらに大人の魅力が加わったっていうか。もしかすると、僕は、今のほうが好きかも」
「え……」
彼の言葉に、頬を赤らめた伸を見て、とてもかわいいと思った。それに、やっぱり大好きだ。
自分の部屋に入り、ベッドに倒れ込む。西原有希としての自分は、まだキスすらしたことがない。
それなのに僕は、唇が重なる感触も、舌が絡まり合う感触も知っている。それどころか、肌の上を唇が這う感触も、胸の突起を吸われる感触も、体の中心部を強く貫かれる感触も!
鮮明な記憶に刺激されて、体が反応し、熱く切なく疼く。あぁ、伸くん……。
服を脱ぎ捨て、記憶をたどりながら、一人、恥ずかしい行為にふけった。伸くんの手は、舌は、ここを、こんなふうに……。伸くんの熱く張り詰めたものは、僕の、ここを……!
果てた後、裸のまま少し眠った。目を覚ましてシャワーを浴びた後、部屋に戻ると、スマートフォンが震えていたのだった。
テーブルの向かい側に座った伸が、呆然としたように見つめている。彼は言った。
「僕の話、わかってくれた?」
「つまり君は、行彦の生まれ変わりだと……」
「そうだよ。最後に伸くんと愛し合った後の記憶はないけど、多分、僕の魂は、しばらく眠り続けた後、有希として生まれ変わったんだよ」
「そうなのか……」
口ではそう言いながら、伸は、まだ半信半疑といった表情だ。
「ねぇ。信じて」
伸は、まぶしそうに、彼を見ながら言う。
「君が嘘をつくはずがないし、もしも嘘だとして、君がそんなことを知っているはずがないし、嘘をつくメリットもない。
何より、その顔を見れば、君が行彦であることは疑いようがない。ただ、あまりのことに、びっくりし過ぎて、思考が追いつかないんだ」
「そうだよね」
彼は微笑む。
「僕も、すごくびっくりした。びっくりし過ぎて、さっきは倒れそうになったよ」
「あの後、大丈夫だった? 知らないうちに帰ってしまったから心配したよ」
彼はうれしくなる。あぁ、やっぱり伸くんだ。僕を気遣ってくれる優しさも、心配そうな表情も、あのときのままだ。
「伸くん、ちっとも変わらないね」
だが、伸は苦笑する。
「そんなことないよ。すっかり、おじさんになっただろ?」
「何言ってるの。伸くんは、おじさんなんかじゃないよ。
あのころの伸くんも素敵だったけど、今は、さらに大人の魅力が加わったっていうか。もしかすると、僕は、今のほうが好きかも」
「え……」
彼の言葉に、頬を赤らめた伸を見て、とてもかわいいと思った。それに、やっぱり大好きだ。