第27話新しい年の始まり

文字数 1,405文字

そして
「おはようございます」
「明けましておめでとうございます」
の挨拶と共に、また新たな一年が動き出した。
元旦は真知子特製のお節料理と、お餅とで始まった。
その後、9時過ぎに梓、そして10時過ぎに祥子と、二人の娘たちは友達との約束が有るとのことで出掛けていった。
そこで残った俺と真知子は畳の上でゴロゴロしながら、ノンビリと過ごすことにした。
本を読み、疲れたら居眠りをし、おやつを食べる、そしてまた本を読み、居眠りをする。
するとアッという間に日も暮れ始め、何もしない一日が過ぎていこうとしていた。
そこで俺は真知子に話し掛けてみた。
「お正月中、ずっとこうしていると体も鈍ってしまうから、明日はどこかに出掛けてみないか?
例えば初詣とか映画館とかに」
すると真知子がこう返してきた。
「私、たまには温泉に行ってみたいな。
今年は特に寒いし。
それにまだ去年の手術の影響からか、最近は体調もいまいちなんだ」
その言葉に俺は驚いた。
それは妻が手術後の体調について、今まで一度も不安を漏らしたことが無かったからである。
俺は真知子の最近の動作からして、勝手に復調しているものだとばかり信じ込んでいたのであった。
そこで俺は山梨県北杜市の研究所へと赴任していた時に聞いていた、仲間たちからの情報を思い出してみた。
それは研究所と同じ北杜市内にある温泉で、その効能も豊かであり、全国各地から湯治へと人々が訪れているという話であった。
しかし俺はその温泉名を忘れてしまっていたのだ。
そこでさっそく地図帳を取りに行き、山梨県のページを開いて、北杜市にある温泉を探してみた。
すると聞き覚えのある温泉名が温泉マークと共に載っていた。
「あ、そうだここだ、増富温泉だ。
ここの温泉のことを仲間たちが話してくれていたんだ」
その時の話として、その温泉はなんでもラジウムの量が豊富であり、難病を抱えている方々にも効果が期待できるとの事で、全国各地から湯治にやって来ているそうだ。
俺は気になり、さっそくスマホで老舗温泉宿の電話番号を調べ、直ぐに連絡をとってみたのである。
すると正月の三が日は予約で一杯という事なのだが、4日以降であれば空室が有るとのことだった。
俺はその話を隣にいる真知子に告げると、指でOKのサインを出してくれたので、2泊3日の予定で予約を取ることにした。
その後娘たちも帰宅し、夕食はお節料理とカップラーメンとで軽く済ませることにした。
そして4人でラーメンを啜りながら北杜市にある温泉の話になり、そこで俺が増富温泉の効能を伝えると、娘たちも快く賛成してくれた。
そして梓が
「たまには夫婦水入らずでノンビリと行って来なよ。
家のことは大丈夫だし、お母さんは去年の病気のことも有るんだから。
何も考えないでユックリと湯治をしてきて下さい」
との言葉を掛けてくれた。
するとそれを頷きながら聞いていた祥子も語りだしたのである。
「お母さんは家にいると、どうしても家事が気になって動き回ってしまうでしょ。
それが温泉宿ならば当然、上げ膳、据え膳になる訳だし、何もしなくていいじゃん。
折角のいい機会なんだから体のためにも行ってきなよ」
と賛同してくれた。
その娘たちの気遣いを有り難く頂戴し、4日の日から二人でその増富温泉へ行ってみることにした。
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