第2話 〈少女〉の発見

文字数 704文字

 ――〈少女〉が発見されたのは、いつなのでしょうか。

 柄谷行人は『近代日本文学の起源』の中で、以下のように述べています。

 児童が客観的に存在していることは誰にとっても自明のようにみえる。しかし、われわれがみているような「児童」はごく近年に発見され形成されたものでしかない 。※1

 同じように、〈少女〉もまた、「発見され形成された」存在だと言えます。
 柄谷行人風に言えば、次のようになるでしょうか。

 少女が客観的に存在していることは誰にとっても自明のようにみえる。しかし、われわれがみているような

〈少女〉はごく近年に発見されたものでしかない。

 少女は昔からずっと存在していました。でも、八〇年代以前の彼女たちはポップ・アイコンとして認知されてはいませんでした。
 今では死語に近いですが、かつては〈小娘〉という、男性――それも少し社会的地位のある中高年男性――の目線による侮蔑的な呼称があり、そうした男性が支配する近代社会において、彼女たちは一人前以下の、取るに足りない存在として扱われることが多かったと思います。

 そうした状況が変わったのは、ポストモダンがキーワードとなる八〇年代初期の、サブカルチャーの世界においてです。特に〈セーラー服と機関銃〉、〈時をかける少女〉といった、〈少女〉を主人公にした映画の大ヒットは、はっきりと時代の変化を顕在化させる現象だったと言えます。

 以下、この二つの映画を例に、ポストモダンの八〇年代において〈少女〉はなぜ

必要があったのか、その問題を考えてみたいと思います。

※1 柄谷行人『近代日本文学の起源』、講談社文芸文庫、一九八八年、一五七頁。
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