4 ✿ 成敗!

エピソード文字数 1,305文字



 誰かが、少女が苦しんでいると分かっていたはずなのだ。
 けれど知らぬふりをしてもその子はいつものように学校へ通ってきた。
 いじめを受けていた咲良(さら)は今でも女の子をいじめる男の子が苦手だ。
 あとになって、クラス担任が

あれはね、あの子なりの好意のうら返しなのよ。本当は咲良ちゃんと仲良くしたいだけなの。分かってあげてね?

 七歳の子どもだったが、担任の言葉に耳を疑った。そんなこと言われても、好意的にとれるわけがない。担任は、いじめを表沙汰にしたくないだけなのだ。加害者は口を割らないが、被害者は誰かに話してしまうかもしれない。ならばと被害者本人をうまく言いくるめようとしていた。教師は助けてくれないことを子どもながらに悟った。
 そして、いじめは日に日にエスカレートした。



 あの日、帰り道の公園で、彼らは(こぶし)や足で咲良を痛めつけた。
 砂だらけの靴が、自分のお腹をなんども踏みつける。
 この時の恐怖は忘れられず、咲良は今でも、子どもの靴を見るとぞっとする。
 店に並んだ、新品の子どもの靴ですら目を背けてしまう。
 その小さな靴にこめられた力を憶えているからだ。

「やめて。お願い……やめて!

 けれど男の子たちは咲良がお願いするほど、殴り、蹴り上げた。「やめて」というのがムダだとさとった。彼らは幼くて限度が分からない。もうなにも言えなかった。
 彼らの靴の裏を呆然と見ていた。
 涙があふれたが、泣き顔が「気持ち悪い」と殴られた。


咲良!

 公園にあらわれたのは当時十四歳だった、七つ年上の兄、作だった。
 学校から帰る途中に、咲良がいじめられているのを目撃した作は、
「おまえら…俺の妹になにしてる!」
 作は、竹刀の包みをはらう。彼は「護身用だ」と普段から学校に竹刀を持ちこむ生来の武士であった。授業や部活動以外でふり回すことは一度もなかったが。
「目には目を…」
 この時は例外で、打気に燃えた彼はどもる少年たちへ剣先を合わせた。
「歯には歯を――!!」
 作は妹を傷つけた報復にとイジメっ子たちをめった打ちにし、

成敗!」

 倍返しだ。
「二度と妹に近づくな!」
 逃げるイジメっ子たちへさけぶと、咲良を背負い家に連れ帰った。

  ✿  ❀  ✿

 両親が少年たちの親や学校に連絡を取り、作は咲良の手当てをしてくれた。
「ありがとう…お兄ちゃん…」
「兄として当然だ」
 作はうで組みし、いかめしい面持ちをふっとゆるめて妹の頭をなでた。

「咲良も強くなれ。一人で戦えるくらい。それまでは俺が守ってあげるから」

 この人のように強くなりたい。
 たった一人でも自分を守れるように。
 そして、いつか誰かが助けを求めている時に、自分が手を貸してあげたい。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

帯刀 咲良(たてわき・さら)


高校2年生の、剣道少女。
ドールオタク(俗にいう、シルバニアン)

ジョン・リンデン


インターポールの捜査官。
所属は、IWCI(INTERPOL Wizard Complex for Innovation)


天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生の、合気道少女。
アニオタ。

ラルフ・ローゼンクランツ


インターポールの捜査官。
IWCIのリーダー

マリー・ローゼンクランツ


ラルフのイトコ。

絵画修復士になるためにイタリアの大学で学んでいたが、行方不明になる。

マルコ・ローリエ


インターポールの捜査官。ジョンの同僚。

イタリア人。お菓子が大好き。

レイ・マグノリア


インターポールの捜査官。ジョンの同僚。

フランス人。透視能力者。

鞍馬 勝(くらま・まさる)


警視庁特殊科の捜査官。

日本の魔法使い。忍者。

ブレイク・アンショー


赤の国際手配書が出された犯罪者。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み