森のルール

文字数 731文字

 翌日、ランプ屋のこびとじいさんが、ヒカリに用があると言って、きのこ料理店にどなり込んできました。
 こびとじいさんはヒカリを見るなり激しい口調で非難します。

「一体どういうつもりだ! モジャリと話をするばかりか、月を飲ませるなんて!」

 こびとじいさんは、昨日の夜の一部始終を見ていたのです。

「モジャリ……」

 ヒカリは確かめるように、その名前をつぶやきました。

「ああ、そうさ、モジャリさ!」

 こびとじいさんはぴょんぴょん飛び上がりながらわめきます。

「あいつは本当にしょうがない奴だ。月はみんなの大事な資源。なのにあいつときたら、月を自分だけのもんだと思っとる。その点このわしはちがうぞ。月の光を利用して、スズランランプを開発した。この森のみんなのためにだ。スズランランプのすばらしいところは……」

「もういいよ。その話は聞き()きたよ」

 こびとの奥さんが口を(はさ)みます。

「この子にはちゃんと言い聞かせておくから、もう許してやっておくれよ」

 こびとじいさんは、まだ何か言い足りないようでしたが、こびと夫妻に追い払われて渋々(しぶしぶ)帰っていきました。

 キノコ料理店の奥さんはヒカリに注意します。

「もうモジャリが来ても話したりしちゃいけないよ」

「どうして?」

 ヒカリは奥さんに聞き返しました。
 あきれ顔の奥さんの横でだんなさんが言います。

「月を飲むなんてことは、この森では誰もしないし、してはいけないことなんだ。みんなで決めた森のルールは守らなきゃいけない。それができない奴は仲間じゃない。そんな奴はのけ者にされて当然さ」

 ヒカリは、やさしいこびと夫妻からピリピリチクチクするような嫌なものを感じました。
 そしてモジャリが自分に会ったときになぜおびえたのかがわかったような気がしました。
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