第2話(4)

エピソード文字数 3,374文字

『レミア、洗濯と掃除ご苦労様です。そのお礼に近所を案内するよ』

 このように理由付けをし、俺らは外出して数十分近くをうろうろ。AM11時24分になった頃、目的地である『砂場公園(すなばこうえん)』にやってきた。

「おっきな公園(こーえん)だねー。お砂場、でっかーい」
「公園名にもなっている通り、ここの売りは砂場なんだ。他のトコの2倍、砂場の面積があるんだよ」

 余所の砂場のサイズは知らんが、偉い人が言っていたから間違いない。ここの砂場は、2倍あるんだ。

「昔は学校帰りに、ここで悪友と駄弁ってたなぁ。懐かしくって――おっ、知り合い発見だ」

 俺は余所の2倍ある砂場を指差し、レミアの手を引っ張りソコに行く。

「あ、優星おにーちゃんだっ。こんにちは」
「こんにちは、兎瑠(うる)ちゃん。今日もお城を作ってるんだね」

 俺はまず、兎チックで小柄な少女にご挨拶返し。それが終わると目線を右横に動かし、魔王さんに紹介する。

「この子は、草崎(くさざき)兎瑠ちゃん。小学5年生で、父さんの同僚さんの娘さんで、ママさんの御実家は大豊町――ウチの実家の近くにあるスーパーなんだよ」

 TVの占いで『今日のラッキーナンバーは3だよ!』と仰っていたから、3つ連続で紹介して『さん』を3回続けてみました。決してダジャレではありません。

「同僚(どーりょー)さんの娘さんの、ウルちゃんなんだー。こんにちはっ、あたしは黒真レミアってゆー魔王だよーっ」
「まおーっ。レミアおねーちゃん、かっこいいー」

 兎瑠ちゃん、大喜び。
 小5で、今日もお城を作る――でお気づきになられたと思いますが、おしらせしますね。この子は少々、いんやかなーり変わっておりまする。

「ねえ、まおーのレミアおねーちゃん。おねーちゃんって、お城に住んでるのー?」
「んーん。落ち着かないから、お家から通ってるんだよー」
「おーっ、落ち着かないっ。すごーい」
「えへへーっ。どもどもだよー」

 え、なにが凄いの? つーかレミア、小学生と同レベルだぞ。
 そんなことを考えながら、俺はゴクリと唾液を飲み込む。


 ――いよいよ、作戦その3を実行する時が来た――。


 第3弾の内容は、ズバリ………………。お城破壊。
 兎瑠ちゃんがいそうな時間に公園にGO→兎瑠ちゃんと接触→いい歳なんだから、そろそろその遊び止めたら? と嘲笑→実は目障りだったんだよ! と破壊する。
 これが、中身であります。

『お、おいやるのか? その子までショックを受けるぞ?』

 わかってるよ、謎の声さん。だけど小さな子を泣かせるってのは、超々悪印象を与えるんだ。
 今度こそ俺は、鬼になる。

「………………なあ、兎瑠ちゃん。お城作り、なんだけどさ」
「優星おにーちゃんっ、今回のは自信作なの。この高知城、すごい? ねえすごいっ?」
「繊細かつ雄々しい天守を、上手く再現できてるね。毎日毎日クオリティーが上がってて、小さな高知城があるみたいだよ」

 鬼は、持ち上げてから落とすのだ。断じて、揺らいでなどいにゃい。

「とっても褒めてもらえた。兎瑠、仕上げにとりかかる」

 兎瑠ちゃんは満足げに息を吐き、創作活動を再開する。
 ………………。ここで城を蹴り壊したら、最悪人間確定だな。

『ああ。完成寸前でグチャグチャにしたら、相当傷つくぞ?』

 そう、なんだよね。前に悪ガキに壊された時はすっごく泣いてたから、よく知ってる。しかも高知城は一番お気に入りの城だから、それはもう傷付いちゃうよ。

『だろ? これは中止にしとけ』

 そう、だね。あの時の何倍も泣いちゃうから、やっぱりヤメておこう――バカ言うな優星! それだと前回前々回と同じだろ!!


 ――母方の爺ちゃんの口癖、『やると公言してやらないヤツは、クズ』。


 マイグランドファーザー、手厳しい――ではなくて。確かに、有言不実行は情けない。
 彼女には後日大好きな某高知の銘菓(甘いそぼろが素敵な、日記的なやつ)を山ほどあげて死ぬほど土下座したら、きっと恐らく多分なんとかなる! 思い切ってやるぞっ!

「…………ふぅ…………。なあ、兎瑠ちゃん」
「なーに? 優星おにーちゃん」
「い。いっ。い!」
「い?」
「いい、歳なんだからさ。そろそろお城作りをやめたら?」

 言った! 言ってやったぞ!
 うおおおおおおおおっ! 俺は、やれば出来る子なんだ!!

「おにーちゃんは、やめたらいいと思うの? どーして?」
「だって、ダサいじゃん。そんなの流行らないよ?」

 してやりました! 酷い発言、してやりましたよ!
 へっへっへ。胸がチクチクしやがるぜ。

「本音を言うと、それに付き合うのもダルかったんだよ。もうやめようぜ」

 嫌みったらしい口調にして、レミアに嫌なヤツだと植えつける。
 あとちょっと兎瑠ちゃんを傷付けたら、城キックをしよう。ゴメンねマジで。

「大体、なんで暑い中こんなことやってんだよ。クソバカじゃん」
「おにーちゃん……」「ゆーせー君……」

 二人が立ち上がり、俺を見つめてくる。
 今すぐ逃げ出したい気持ちで一杯だが、ここで退いたら全てがおじゃん。俺は、心で懺悔をして続行する。

「そーそー、さっきのべた褒めは社交辞令だ。あんなの0点だよ」
「ひぅ……っ。おにーちゃん……」「ゆーせー、くん……」

 兎瑠ちゃんは涙を流し、レミアは目尻に水滴を溜めた。
 な、なんという罪悪感だ。ぜったいに今晩は眠れない。

「おーいおい、なに泣いてるんだ? 事実を聞いて、悲しくなったのかぁ?」
「ううん、違う。おにーちゃんが優しいから、嬉しくて泣いてるの」


 Д?


 驚愕しちゃって、地球外言語になってしまった。
 ????????????????????? この子、何言ってんの?
「おにーちゃんは……。兎瑠が熱中症になるから、ワザとそうやってるんだよね?」
「は? はっ?」
「ゆーせー君はさっき、『なんで暑い中こんなことやってんだよ』って口にしたっ。あれってほんとーは、早く帰りなさいって伝えてるんだよねっ?」


 おーまいがぁ。予想外の展開になった。


「ば、バッカ。んなわけないだろっ。勘違いすんなっての」
「いつも優しいおにーちゃんが、イジメるはずないもん。完成するまでやめない兎瑠のためって、わかってる」

 がああああああああああ!! 日頃の行いが足を引っ張りやがった!
 おい優星っ、なぜに貴様は悪いことをしてないんだ!? どっさり悪事を働いて、名の知れたワルになっとけよ!!

「悪者になって、ウルちゃんを熱中症から守る……。ますます好きになったよぉ……!」

 レミアちゃん、感涙してるよぉ……!
 ど、どうなってるんだ!? 色紙優星には、好感度を下げられない呪いがかかっているのかっ!?

「あ、アンタら、マジで違うんだよっ。あれは本気なんだ!」
「おにーちゃん……!」「ゆーせーくん……!」

 お前達っ、温かい目で見るな! 好感度を上げないでくれっ!

「兎瑠、おにーちゃんみたいな人と結婚したい。おっきくなったら、お嫁さんにしてね」

 なんかプロポーズまでされちゃったよ!
 こっ、これどうなっちゃうんだ!? 好感度ダウンは、ボクには無理なのか!?


 ――ろ、ろろろろ狼狽するな優星。まだ挽回は可能だ。


『もう無理だろ。諦めな』

 黙れ謎の声っ。俺は世界で一番、『諦める』って単語が嫌いなんだ! 諦めたらそこで、あるかもしれない可能性が全てなくなるだろが!

『でもよ。ここで城を壊しても、力尽くで家に帰そうとしてるって思われるぞ?』

 そうだな、謎の声。
 もう駄目だ。作戦その3は、諦めます。
「…………そうと決まれば……。長居は無用…………」

 うん。ホント長居は無用。もう帰りゅ。

「? おにーちゃん?」
「兎瑠ちゃん、ごめんね。お兄さんは、用事があるから帰るね……。ばいばい……」

 ぼくもちょっとだけ涙しながら、トボトボと歩き出す。
 け、けどでも。けどでも! でもけど!
 まだ、第4弾があるっ。今度こそ成功させるぞっっ!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み