第66話

文字数 2,706文字


源三郎江戸日記(弟二部)66

そうで御座りますかそれは残念な事で御座りましたというと、いいのじあよ、将軍なんぞになると幕閣は大奥を含めて魑魅魍魎の世界じあからな、気軽にそなた等とも話せなくなるわ、
と言うので、綱豊様は上様とは少ししか歳ははなれていませぬ、結局は紀州様に鉢が回ってきますというと、そうなんじあよ、そうなると一番先に考えなければならんのが火事じあな、

これだけ町屋が蜜集していると延焼は広がるからのうと言うので、大名の火消しだけでは間に合いませぬ、大名は大名屋敷を守る事を優先しますので、町火消しを作る必要があるのです、
もし火事でやけ野原になったら、お上が規制して延焼を防ぐ為道幅を広げるのが寛容ですと言うと、沢山の町火消しを作れば幕府が維持費をはらわねばならん、財政に余裕がないだろう、
と言うので、

江戸の町を分割して町火消しを沢山作り、その町内の商人に維持費の三分の1を負担させ幕府が3分の1を負担して、後の3分の1は町火消しが稼ぐのです、火事のないときは便利屋を営み、
担当している町衆からの相談事を受けてこれを解決してやり、報酬も貰うのです、人探し、口入業、喧嘩揉め事の仲裁等色々とあります、そうすれば幕府の負担は少なくてすみます、
大名火消しは武家屋敷だけ担当させれば良いのですと言うと、

なる程それなら安くて済むわけじあな、中々の知恵じあな心に留めて置くぞと言うので、紀州にはくえと言う美味い魚があるそうですなと言うと、参勤交代で江戸にくると食できぬが、
あれは刺し身で食うとうまいぞと言うので、それでは船に海水の樽をつんでその中に入れて江戸に運べば刺し身で食できますというと、2日も樽にいれておけば死んでしまうわと笑う、
ので、

死ぬのは海水の中の空気がなくなるからで御座います、魚はエラで水中から空気を取り込むのです、その空気が少なくなって死ぬのです、空気を海水に送り込めば死ぬ事はありませぬ、
エサは米ぬかをダンゴにした物を少し入れておけば良いのです、空気は竹で作った水鉄砲で水の変わり空気を送り込むのです、人が手でやると大変ですから、船に風車をつけてその、
回転するところを水車の、

持ちつきみたいな構造にして上下に運動を変えて水鉄砲の取ってが上下に動くようにして、引いたときは水が逆流しないように弁を閉め上の空気穴が開き、押したときは水側にある弁、
が開き空気の弁が閉じるようにして、空気の取り込み口は細い竹の芯を抜き曲げ樽に入れればよいわけですと絵に描くと、なる程それは面白いな、みかんの時期が過ぎれば、こんどは、
生きた魚を江戸に持ってくるわけじあな、

それでは紀州は、1年中儲かるではないかと言うと、紀州の網本の頭取と玄海屋で話してみてくれ、その道具を作る代金は紀州藩が負担するぞと言うので、ハイ、これは2万両相殺して、
下されたお礼に御座いますと言うと、そちと話しているとなんぼでも儲かるな、昼間じあが前祝いとしょうと言って、腰元に膳の用意をさせて、網本への文をしたためて渡したのです、

すつぱいみかんは御座いませぬかと言うと、だれも食わんだろうと言うので、実は妻が懐妊してつわりなので御座います、どうも、つわりだと、すつぱい物が好きなんだそうですと、
言うので、そうか、甘いみかんだけでなく、すっぱいみかんも売れるのじあなそれも商いになるか、帰りに紀伊国屋に立ち寄り話してくれと言って笑ったのです、さあ飲んでくれと、
言って、

褒美にこの小太刀を取らせよう、備前兼定じあと渡すので恐れ入りますと受け取ったのです、これは誰かに下げ渡すとまずいので御座いましょうと言うと、そちにやった物じあどうし、
ょうと勝手にしてよいぞ、それで、叉一儲けするのであろうというので、読まれましたなと笑ったのです、それが出来れば江戸でくえが食できるな、それは楽しみじあなと大喜びした、
のです、

紀州藩の上屋敷を下がり、日本橋の紀伊国屋に顔を出すと、番頭がこれはご家老様、主人は和歌山に戻っていますと言うので、今日はすっぱいみかんを買いに来たんじあがと言うと、
そんなのを食べるのですかと言うので、妻がつわりなのじあと言うと、それはおめでとう御座ります、ありますよ、酸っぱいみかんがあれば交換する事になっています、完熟でも、
糖度の低いものがあるのですよと言って、

根岸の寮に届けておきますと言うので、いかほどじあと言うと、売れないものです、お代は結構ですというので、江戸にはつわりの者も沢山いるじあろう、つわり用のみかんとして、
箱にかいておれば売れるだろう、どうせ、腐らすのじあから大分安くてもいいではないかと言って、2朱銀を出すと、なる程それは妙案ですな、さつそく、店先にならべますと喜んだ、
のです、それを

その足で上杉の上屋敷に行き、次席家老に紀州公がそ知恵と相殺してくれたと借用証文を渡すと、何と、2万両を返さなくてもいいので御座るかと言うので、そうじあよ、これで4万、
両は返した事になる、玄海屋の分は返さなくても良いわ、さすれば6万両返した事になる、後3万両じあこれは利息半分にしてもらう年末に利息を取りに来るように言うので、1500両、
を払ってくれと言うと、

昨日の1万両で10年は払えますよと言うので、来年には全部返すから、その後は払う必要はなくなるぞ、これは内密じあそれを知れば、幕府に賦役を押し付けられるからのうと言うと、
ハイ、まだ沢山借りていて、大変だと言うておきます、利息は用意して、置きますといったのです、しかし、ご家老の知恵で借財は総てなくなりますよ、私は楽ですよと笑ったのです、

上屋敷を出て深川に船で戻り若狭屋に顔を出して、紀州公の相殺の話をすると驚いてそれは叉儲かりましなと笑ったのです、若狭屋からの借財1万両だが、利息は今月払うので、何とか、
500両にまけてくれんかのうと言うと、いいですよ、利息もたなあげにしてありますと言うので、いや、余裕が出たので払うぞ、越後屋、と他の店にも利息半分にしてくれるように頼ん、
で欲しいのじあがと言うと、

わかりました、この年の暮れに来て貰えるのは大喜びしますよ、それがしにも500両貰えるのです、これはご家老の一年かんの扶持米の金寸と同じの大きな金です、来年も返さないで、
くだされ、みんなその方が喜びますと言うので、毎年利息は1500両じあって、来年からは払うぞと言うと、しかし、利息を値切るとは商売人ですな、厭だといったら、全額返すつもり、
でございますね、

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