栄光と聖書

文字数 1,110文字

「やられる前にやれ。全回復は教会でしか出来ない」
 なんだよ、その縛りプレイ。いや、ゲームでもそんなもんか。アイテムを使うか、パーティーに回復キャラが居るか。そうでなければ教会か宿屋。いや、重要なのはそこじゃない。

 謎の生き物について行けば、異臭の元。動物用のケージから嫌な臭いが発せられていた。しかし、獣臭くはない。犬なら洗わなければ臭くなるし、小動物ならケージが大き過ぎる。
 謎の生き物を追いつつケージを横目で見た。人の足、それも小さな足が視界に入る。ニュースで明らかになった事件も有ったが、これはまさか。

「来るぞ」
 その直後、目の焦点がおかしい奴が来た。これが、目がイッてるババアだろうか? ならば、やることは一つ。

「グロリア、グラタン、エビドリア!」
 呪文を唱えた瞬間、渡されたロザリオが光りババアに向かって何かを放った。放たれた何かはババアの胸元に向かい……貫いた。え? これってまずくない? 貫通したらまずくない?
 案の定、倒れるババア。困惑で動かない体。ババアに向かって行く謎の生き物。謎の生き物はババアの胸元から何かを回収し、こちらを振り返った。

「オリエンテーションは完了だ」
 奴が言った瞬間、例の教会へ共に転移した。そして、報酬である全回復を説明なしに施される。

「初めてにしては上出来だな」
 言いながら触手で何かを弄ぶ謎の生き物。形からして将棋の駒。そして、ちらっと見えた字から察するに歩兵である。

「可愛いJKならチェス駒なんだがな。おっさんがやると将棋の駒になっちまう」
 なっちまうってなんだよ。そもそも駒はどういうことなんだよ。

「おっさんと言えば将棋。チェスは、可愛いJKか銀髪イケメンの担当だからな」
 どんな理論だ。大体にして、ここは日本。なんだかんだで、盛り上がっているのは将棋だ。そして、盛り上げているのはおっさんだけではない。

「暫くは歩兵集めで肩慣らしだな。角行や飛車レベルは、下手に手出しをすると回復すら不可能になる」
 いや、何だよ歩兵集めって。戦国時代か。

「歩兵になる悪魔は基本的に弱い。欲望のままに暴走する、知性のない悪魔だ。攻撃するにも単調で直線的、速さにも欠ける」
 まあ、将棋の歩兵も前後一つずつしか進めないし。敵陣まで生き残れば成金の語源だが。

「暫くは、雑魚悪魔を封じて貰う。まあ、毎日じゃないから安心しろ」
 安心できるか!

「あ、因みに明日の朝ご飯はこちらで用意する。提示した仕事の対価は払わねばな」
 そうだ、名も知らぬ女性にご飯のお礼を。

「変身解除呪文は、ビブリオ、ビフテキ、ポークカツだ」
 呪文を言うだけ言って、俺だけ転送する謎の生き物。アイツ、名乗らないけど固有名詞あるの?
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登場人物紹介

社畜
流されやすい会社員

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