全校集会

エピソード文字数 4,116文字

 紅月の部屋でとられた朝食はまるで学園を強襲し現在もその傘下にある異常事態などなかったかのように振る舞われ、四人は臆病な気持ちをおくびにも出さず、むしろ楽観的とも言えた。一般的に人は平和なときに楽観的、困難のときに悲観的になると言われるが、これは経験論に基づいたとも言えない子供だましの迷信で、他人から見れば取るに足らないような些事に躓き自殺をほのめかす人間もいれば、明日の命運もわからない重病で病床につきながらも馬鹿馬鹿しい洒落に快活な笑い声を飛ばす病人もいる。銀太、紅月、楓子の三人は日本軍が現段階では学園に侵入するつもりはなく、あくまで待機しているさまを見て、却って落ち着きを取り戻してしまい、綴に至っては銀太と紅月が無傷で戻ってき、さらには友人である楓子まで朝食に連れてきたことで、この問題は解決してしまったものに感じているようだった。朝食はいつもの三人に加えて、楓子が招かれた具合で朗らかに進み、ただ学園が日本軍に脅かされている興奮は冷めやらぬようで、その話題に多くは触れなかったが紅月はいつもより饒舌だったし、楓子は会話の中で気に入った嫌味や当てこすりを繰り返し、銀太は本来敵対関係にある楓子にも陽気に接し、綴はそのような様子を見せる三人に安堵したようで上機嫌に給仕をした。
 八時になると学園全体に校内放送が流された。スピーカーから注意喚起のチャイムが鳴ると、寮の入居者は放送を聞くためにエントランスホールに集まり、四人も階下に降りてその中に混じった。放送の声の主は生徒会長で、八時半から講堂で緊急集会を催すこと、この集会の参加は任意であること、集会の目的は早朝から騒ぎになっている日本軍の駐在について説明を行うためであることが告知された。校内放送が終わると、エントランスホールに集まった生徒たちのあいだに弛緩した空気が流れ、あたかも放送の告知の中に「日本軍の撤退の決定」も含まれていたようであり、誰もが日本軍の駐在を一時的なもの、あるいは何かの手違いだと考えており、それは銀太たち四人も例外ではなかった。四人は講堂に向かう寮生の流れに乗り、歩き出した。
 講堂は講壇を軸にして扇状に座席が広がっている。座席は傾斜に沿って段になるように配置されており、普段は学年とクラスによって座る場所を指定されているのだが、今はどういうわけか教師陣の姿が見えず、指示もないために、どうやら自由に座って構わないらしく、生徒たちは各々席を取り始めた。銀太たち四人は講壇に近い席を取り、緊急集会まで静かに待つことにした。早いうちは席に着いている生徒はまばらだったが、八時半が近づくごとに埋まっていき、しまいにはほとんどの席が埋まった。学園の生徒はほとんど講堂に集まっているようで、みなが日本軍のことについて憶測を交わしていたために騒がしかったが、八時半になり、講壇の上手から特別科クラスの五人が現れると、生徒たちは普段ならば特別科クラス兼生徒会の人間を――それも一同に会しているところを見る機会など皆無に等しかったために、すぐさま静まり返った。ただし生徒会の人間は全員で七人であり、そのうちの一人である紅月は座席の方にいたし、もう一人に至ってはどこにいるのかわからなかった。紅月は特別科のクラスメートたちが壇上に現れるとすぐに、そのもう一人を探してあたりを見回したが、講堂は広く後尾にいる生徒は顔の見極めもつかないため、あるいはそもそもこの講堂に来ていないために見つけることができなかった。
 壇上にいる五人の中にはいつも以上に神経質に学生服を着つけている守門恒明もいて(ワイシャツには高いカラーをつけており、のりをきかせているのが銀太たちの席からもわかった)、銀太たちの姿を見ると、他の生徒には気がつかれないように秘密めいた仕種でウィンクを二度送った。恒明は特別科クラスに在籍していて、生徒会書記の役割を担っていた。紅月とは直接の先輩後輩の関係に当たるとは言え、紅月がクラスに滅多なことでは顔を見せず、生徒会の仕事もしなかったために接点はほとんどないほどだったが、他のクラスメートに比べて紅月のサボりを大目に見ていたために、恒明は唯一の後輩にどちらかと言えば好感を持っていた。もちろんその好感の根底には紅月が綴の妹分に当たるということもあるのだろうが。

 生徒会長が演台の前に立った。精悍な顔つきの巨漢であり、浅く焼けた肌も相まって実年齢よりも青年らしく見え、威風と尊厳に満ちた立ち振る舞いで「空白組」の中でも特に恐れられていたが、それは特別科クラスの持つ権威と無遠慮な憶測に基づくもので仲間内では稀な寛容の気性の持ち主として知られていた。名前を桑折良蔵といった。桑折はマイクの位置を自分の長身に合わせて高くすると、大酒飲みを思わせる嗄れ声で演説を始めた。
生徒会長の桑折良蔵だ。我々、特別科クラスは滅多なことでは諸君の前に姿を現すこともないため、戸惑いを覚えるものもいるだろう。もっとも壇上にいる五人でも、全員ではないのだがな。私がここに立っているのは、明け方から学園で巻き起こっている騒動に説明をつけるためだ。諸君はすでに存じているだろうが、現在、学園は日本軍によって封鎖されている。(ざわめきが聴衆に広がる)……静粛に。言明されて、動揺するのも仕方がないことだ。しかし今は静かに私の話を聞いてほしい。(桑折は聴衆が静まるまでしばらく待つ)学園が封鎖された理由を速やかに説明しなければならないな。日本軍が出動していることからもわかるだろうが、この封鎖は日本政府の英断によるものだ。現在、この学園を発端に未曾有の惨事が起ころうとしている。本日未明、学園内でペストの感染が確認された。感染ルートは未だ不明。日本政府はペストによるパンデミックを防ぐために、光文学園の封鎖を決定した。公式発表による封鎖期間は未定だが、最低でも三週間が予想されるそうだ。この封鎖期間のあいだ、生徒会は理事会の下部組織となり、理事会の決定を生徒諸君に伝達する立場を引き受ける。教職員及び理事会に所属する人間は日本政府との連絡を密にして、対応に集中する。そのために本日の集会の司会は我々に任された。
紅月は空白組から何も聞いていなかったの?
 生徒会長の演説の途中、銀太は隣に座っている紅月に耳打ちした。
何も聞いていない。空白組はこの騒ぎと前々から無関係ではないらしいが、俺をハブって話を進めていたらしいな。
 生徒たちは生徒会長の演説があまりにも理解しがたいものだったために、その内容を解き明かそうとして、胸像のように頭を固定して次の言葉を待ち、騒ぎ立てることもなく静まっていた。まるで生徒会長は宇宙や愛など、人生に深淵を与える話題を話していて、生徒たちは一言でも聞き漏らすとその奥義を理解できなくなると思い込んでいるようだった。しかし言葉の一つひとつは別の言葉の足を引っ張って、演説が進むごとに話は絡まっていった。もしも若輩にも関わらず、瀟洒な皮肉と機知が言える生徒がいたならば、のちにこの集会を「生徒たちは生徒会長の高尚な演説に聞き入っていた」と描写するだろう。
本日は理事会から下された決定を三つ伝える。各々、しかと肝に銘じるように。一つ、封鎖期間中、外界との接触を一切禁じる。学園は電話や輸送などの通信手段は無論、食料や医療品など生活必需品の運搬も断絶される。二つ、いかなる事情が関与していようと学園から脱出した人間は日本政府の許可の下、射殺される。三つ、封鎖期間中、光文学園ではいかなる国の憲法、法律も適用されない。以上だ。何か質問がある人間は挙手を。なければ集会を解散する。
 生徒たちは生徒会長の演説が終わったことに気がついていないかのように、例の胸像のような頭を固定する姿勢で動かなかった。いつもの紅月だったら、「悪い冗談には金と時間をかけないものだぜ」とあてこすりを言って立ち去っただろうが、今は講堂を包んでいる鈍い驚愕のために立ち上がることもできなかった。この集団の金縛りとでも言うべきものが解けるには、二人の犠牲者が必要だった。誰も彼もの意識の空白をついたかのように、いつの間にか最前列に席を取っていた二人の男子生徒が壇上によじ登っていた。喚き散らしていたが何を言っているのかまでは銀太たちのところからでは聞き取れず、しかしその身振りから抗議をしているのだとわかった。
 二人の男子生徒に向かって、特別科クラスの一人、吾妻奈純が前に出た。この女生徒は二年生であり、まんまるとした目と首を軽く右に傾ける癖によって幼く見えたが、和毛の髪をボブカットにし、前髪を生え際近くで切り揃え額を大きく出していたためにその印象は深められていた。吾妻が両手を前に差し出すと、サーカス団が「さかり」のついた象を射殺するために用意するような散弾銃が左右に一丁ずつ具現化した。次の瞬間、空気が炸裂するような発砲音が講堂に響くと、二人の男子生徒の上半身が四散した。壇上に近い席に座っていた生徒たちはその散り散りになった肉片を浴びたり、流れ弾を受けたりして、凍結した生徒たちの時間を再び動かす絶叫を上げた。吾妻は人間の上半身を丸々欠損させるほどの火力を持つ散弾銃を二丁拳銃式に発砲したにも関わらず、反動によって肩の関節が外れることもなく、それどころか次の反乱者を予測してすでに構え直していた。
三つある理事会の決定のうち、最も重要なものを繰り返しておいた方がいいようだ。封鎖された光文学園ではいかなる国の憲法、法律も適用されない。
 生徒会長が壇上に下半身だけ残っている二つの死体に憐憫も嫌悪も感じていない、ほとんど無関心とも言える視線を向けながら、理事会の決定を繰り返したとき、生徒たちは両脇に二つずつ、壇上に向かいあってもう二つずつある出入り口を通り、講堂から逃げ出していた。しかしその足取りは二人の生徒が見世物のように殺害されたとは思えないほど緩慢であり、交わされる会話もひそめられた声で行われた。わずか十五分のあいだに絶え間なく降り注いだ驚愕に生徒たちは俄かに白痴にされたようだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

第二部「偉大なる二十世紀」

忍谷夕吉(しのびたにゆうきち)
第二部の主人公。
賭博師を生業としている。コンプレックスを保持していない無能力者。26歳。
千ヶ谷千陰と組んで、封鎖された東京で成り上がることを計画している。
性格は皮肉屋だが、実業的。
職業柄、変わった特技を多く隠し持っている。

千ヶ谷千陰(ちがやちかげ)

第二部のメインヒロイン。
日本でも有数の名家、千ヶ谷家の長女。23歳。
生粋のお嬢様なのだが、普段着がジャージ(光文学園時代のもの)、主食がラーメン二郎など、俗っぽい。
近寄りがたい兄と可愛くて仕方のない妹がいる。
意外にも本職はハッカー。

シンボル:???

コンプレックス:『カラマーゾフの兄弟』

 ???

千ヶ谷絹人(ちがやきぬひと)

千ヶ谷家の現当主。
千一郎、千陰、千五百の父。
現在の政治情勢は千ヶ谷派と宇津木派に分かれている。
忍谷を千陰の恋人ではないかと疑っている。

シンボル:腕時計
コンプレックス:『ガルガンチュアとパンタグリュエル』
 対象を30分以内のある時点にリセットする。
 本人は物理的な状態だけで、記憶や感情など精神的な状態はリセットできないと言っているが……?

千ヶ谷千一郎(ちがやせんいちろう)

千ヶ谷家の長兄。千陰と千五百の兄。26歳。
次期千ヶ谷家当主。
神経質で気難しい。そのために千陰からは苦手意識を持たれている。

シンボル:???
コンプレックス:「???」

千ヶ谷千五百(ちがやちいほ)

千ヶ谷家の次女。
第二部の時点では行方不明になっている。
千陰は妹を探し出すために忍谷と手を組んでいる。

黒塗ほのか(くろぬりほのか)

日本政府に保護されていた謎の少女。17歳。
「未来を見通す」コンプレックスを保持している。
この能力により、2000年問題を予見していた。
忍谷と千陰のことはなぜか出会う前から知っていた。
はたしてその正体は……?

シンボル:???
コンプレックス:「???」

赤藤詩音(あかふじしおん)

暗殺を生業としている。千陰の大親友。23歳。
光文学園特別科クラスに在籍していたころは、千陰とコンビを組んでいた。
しかし金さえ積めば仕事を引き受ける性格で、政治的には千ヶ谷派、宇津木派のどちらにも属していない。
名前からわかるとおり、第一部に登場した赤藤梨音の実姉。

シンボル:窓
コンプレックス:『月は無慈悲な夜の女王』
 手で触れた場所に窓を作る。
 その窓は通常の窓と同じ性質を持つ。つまり開閉ができ、向こう側が見通せ、ガラスは壊れやすい。

源次郎助(みなもとじろすけ)

上野にある国内最大の国営カジノのオーナー(所有者)。28歳。
本職は権力者向けの金貸し。
商売人として、天才的な能力を持っている。
政治的には宇津木派に寄っている。
権力者のあいだで、「ゲームマスター」と呼ばれるほどあらゆるゲームに精通している。

シンボル:鎖

コンプレックス:『バック・イン・ブラック』

 対象との契約を遵守させる。具体的には対象が契約を違反した場合、損害を与える。その損害の内容は対象の「同意」によって決定する。

五十鈴凪子(いすずなぎこ)


源の右腕。24歳。

堅物で、軍人のような口調をしている。

二色ほどではないが、戦闘能力に長けており、荒事を頼まれることもある。

拳銃を得物とする。


シンボル:風船

コンプレックス:『クロイツェル・ソナタ』

 シンボルの風船は複数出現する。風船に触れた物体は別の風船に転移する。

二色廻(にしきめぐる)

源の側近。源は「秘書のようなもの」と言っている。
無口で無表情。しかし非常に礼儀正しい。意外に気さくらしい。
忍谷はその体つきから、一目で「戦闘タイプ」の人間と見抜いた。

本文ではスキンヘッドになっているのですが、きゃらふとさんの仕様上、再現できなかったので、頃合を見て、キャラデザを作り直します。

シンボル:???
コンプレックス:「???」

散歩桐雄(さんぽきりお)

上野にある国内最大の国営カジノの経営者。源から業務を委託されている形となる。
現在は経営者として働いているが、ディーラーとしての腕前はまだ落ちていない。
コンプレックスを保持しているかは不明。

森重義生(もりしげよしお)


日本政府に所属する男。立場は源よりも上となる。

日本政府と光文学園の仲介役となるために、源のもとに派遣されてきた。

異常なほどに厚着をしている。

第一部にて秋姫と接触していた男その人。


シンボル:ポーン(黒)

コンプレックス:『ミリオンダラー・ベイビー』

 対象の物体の価値を誤認をさせる。ただし、価値の変動や能力の範囲はミクロなものである。

宇津木将臣(うつぎまさおみ)

大日本帝国第八十六代内閣総理大臣。
千ヶ谷家の最大の政敵。
東京の封鎖政策の主導者。

シンボル:???
コンプレックス:「???」

猫松喜久二(ねこまつきくじ)

権力者の一人。千陰は性格が悪いと言っている。
元大手薬品会社の重役であり、現在は大手銀行に天下りしている。
コンプレックスを持っていない無能力者。

切田善嗣(せったよしつぐ)

宇津木派の人間に雇われた刺客。
絹人の暗殺を目論見るが、千一郎の機転により防がれた。
その後、忍谷と戦闘になる。

シンボル:スプーン
コンプレックス:『バナナフィッシュにうってつけの日』
 砂糖を自由自在に操る。しかし操れるのは乾いた砂糖だけであり、ジュースに溶解しているものなどは操ることができない。

間宮蘖(まみやひこばえ)

宇津木派に雇われた暗殺者。
宇津木側の人間の依頼ばかり引き受けるため、「宇津木の犬」の汚名を着せられている。
しかし暗殺者としての実力は詩音と拮抗する。
オークションのさいには司会を務めていた。

シンボル:???
コンプレックス:『モダン・タイムス』
 自分の身体を軟化する。これにより関節を無視する形で身体を動かせるようになる。
 柔らかくなった身体の痛覚は通常のときと変わらない。

園城ゆゑ(そのしろゆゑ)


光文学園二年十二組の担任教師。28歳。

学園に封鎖線が敷かれるなか、コンプレックスを用いて自力で脱出した。

実は葛籠未造が誘拐した子供たち〈チルドレン〉の一人だった。


シンボル:人体の一部

コンプレックス:『アナベル・リー』

 能力の範囲内の任意の場所に目や口など自分の身体の部品を複製する。

葛籠未造(つづらみぞう)


戦後日本最悪の犯罪者と呼ばれる男。

表向きは死刑の確定から執行まで史上最短で絞首刑に処されたことになっている。

しかし実際は日本政府の庇護下のもと、東京のどこかで生き延びている。

葛籠の犯した犯罪の一つに稀有なコンプレックスを持つ子供を誘拐し、養育していた、というものがある。なぜこのようなことを行っていたのかは不明。

ほのかの予言によると、葛籠が次の「世界の王」である。

第一部「ペストの時代の愛」

大室銀太(おおむろぎんた)

第一部の主人公。
国立光文学園高等部一年八組所属。15歳。
中性的な顔立ちで少女と間違えられることもあるが、性格は偏執的かつ執念深い。
これまで一般市民として生きてきたために戦闘の経験が一切ない。それゆえ学園の封鎖を乗り切るための戦闘では変則的な戦法に頼らざるを得ない。

シンボル:鋏
第一のコンプレックス:『緑の家』
 シンボルの鋏はその強度に関係なく物体を切断する。そのとき物体の連続性は保たれたままになる。切断面を合わせれば、分断したものは再び接合する。
第二のコンプレックス:『石蹴り遊び』
 『緑の家』によって切断した異なる物質を接合する。接合された物体は元の二つの物質の性質が混ざり合う。時間の経過とともに、物質は元の物質のどちらかの性質へと帰着する。
第三のコンプレックス:『百年の孤独』
 シンボルである鋏に「意思」を与える。鋏はその意思を遂行するように自動駆動するようになる。あくまで鋏は意思を与えられただけであり、生物化していたり、能力者が操作したりしているわけではない。
 鋏の移動のさいは床や壁など、物体を切り裂きながらでなければならない。

瀧川紅月(たきがわべにづき)

第一部のメインヒロイン。
大室姉弟の幼馴染。
七人しか在籍していない特別科クラスに唯一の一年生として所属している。生徒会庶務兼任。16歳。
男勝りで、非常に野蛮な言動が目立つ。その反面、緊急事態でも冷静に対処するだけの胆力と機知を持ち合わせている。

シンボル:ハンドベル
第一のコンプレックス:『太陽の塔』
 能力の範囲内にある最も速度の速い物体を爆破する。このとき、能力の対象には能力者自身も含まれる。
第二のコンプレックス:『明日の神話』
 能力の範囲内にある一定の速度の超えたすべての物体を爆破する。この一定の速度はスペクトルによって設定される。

大室綴(おおむろつづり)

銀太の姉。紅月にとっても姉貴分である。
国立光文学園高等部二年十二組(芸術科クラス)所属。17歳。
自分にも他人にも甘く、銀太と紅月の二人を溺愛している。
一人称が「お姉ちゃん」。
文学に精通しており、編纂者を志している。

シンボル:豆本
コンプレックス:『バベルの図書館』
 シンボルの豆本は無限の頁を持ち、際限なく情報を書き込める。文章の記入・消去は念写により行う。このコンプレックスはあくまで「無限に情報を記録する」能力であり、「頁を入れ替えて情報を整理する」能力はない。

埜切秋姫(のぎりあきひめ)

綴のクラスメートであり、親友。銀太とは初めて会ったときから友達以上、恋人未満の関係。
国立光文学園高等部二年十二組(芸術科クラス)所属。16歳。
気弱な性格であり、自分の意見をなかなか出せない。この性格は自分のコンプレックスが他人のものよりも実用性に欠けることと無関係ではない。
癖毛を気にしており、外出するときは必ず帽子を被る。そのために帽子集めも趣味になっている。

シンボル:???
コンプレックス:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
 手で触れた小さな傷を塞ぐ。

須磨楓子(すまかえでこ)

紅月のもう一人の親友。
国立光文学園高等部一年六組所属。16歳。
紅月の「唯一」の親友を名乗っているため、銀太とは犬猿の仲。
高飛車で傲慢だが、これは自分の実力への自信の表れである。実際に普通科クラスの中ではトップクラスの成績を誇る。
学園封鎖後はショッピングモールにて幹部の一人になっている。

シンボル:皮手袋
コンプレックス:『茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)』
 シンボルをつけた拳で殴られた人間はその部位を認識できなくなる。攻撃された部位は透明に見え、同時にその機能も失う。

守門恒明(しゅもんつねあき)

七人いる特別科クラスの一人。生徒会書記兼任。学年は二学年に当たる。17歳。
綴に一目惚れして以来、告白を繰り返している。そのために銀太からは目の仇にされている。
お坊ちゃんであり、物腰が柔らかい反面、ナルシストな言動が目立つ。しかし特別科クラスに所属している以上、頭脳や戦闘の実力は折り紙つき。

シンボル:金平糖
コンプレックス:『重力の虹』
 空中に浮いている物体を垂直に落下させる。このときの落下の速度は少なからず銃弾の速度を超える。

常盤七星(ときわななほし)

特別科クラスの一人。生徒会会計兼任。学年は三学年に当たる。18歳。
紅月と同様、生徒会の義務を放棄しているため、クラスメートからは問題児として見られている。
学園封鎖とともにショッピングモールを制圧し、ここに篭城する。その後ショッピングモールの管理人として、学園内の物資と人材を独占している。

シンボル:注射器
コンプレックス:『美しき水車小屋の娘』
 自分の血液を混ぜた液体を操る。このとき、必要な血液の量は操る液体の体積に比例する。そのため、自分が貧血になるほどの量の液体は操ることができない。

犬童影千代(いぬどうかげちよ)

ショッピングモールの幹部の一人。医療品や生活用品の管理を担っている。
国立光文学園高等部三年二組所属。18歳。
物腰の柔らかい好青年。しかし七星がショッピングモール内で唯一コンプレックスを把握していない人間でもある。そのため七星からは「油断のならない男」として見られている。

シンボル:水銀温度計
コンプレックス:『パルプ・フィクション』
 自分よりも高いところにいる生物の体温を上げ、自分よりも低いところにいる生物の体温を下げる。
 このときの変化率は能力者との上下の距離が離れているほど大きくなる。

赤藤梨音(あかふじりおん)

ショッピングモールの住人の一人。地下倉庫(監房として用いている)の管理を担っている。
国立光文学園高等部二年五組所属。17歳。
幹部ではないが、貴重なコンプレックスを持っているために同等の発言権を持つ。本人曰く、人を閉じ込めるのに適したコンプレックス。
間延びした口調のため、ややとろそうに見える。しかし七星や犬童への意見は鋭く、意外にも人をよく見ている。

シンボル:鍵
コンプレックス:『夏への扉』
 能力の範囲内にある、場所から場所を区切るもの(扉や窓など)に、可能な限り通行の妨害をさせる。
 具体的には、それらが固定されたように開きにくくなり、無理やりこじ開けても即座に閉まるようになる。

桑折良蔵(こおりりょうぞう)

特別科クラスの一人。生徒会会長兼任。学年は三学年に当たる。18歳。
精悍な顔つきをした巨漢。生徒会長という立場も相まって一般クラスの生徒たちから恐れられているが、クラスメート曰く、その性格は寛容。
互いに反目しがちな特別科クラスの人間には珍しく、クラスメートを家族だと考えている(特別科クラスから離反した紅月と七星も例外ではない)。生徒会長である自分はその家長だという自負がある。

シンボル:磁石
コンプレックス:『ペイント・イット・ブラック』
 シンボルを中心にして、同じ物質を集める。このときに物質が集まる速度は、その途中にあったものを破壊するほど速い。
 シンボルの磁石は同時に二個以上具現化することもできる。

立畑照葉(たてはたてりは)

特別科クラスの一人。生徒会副会長兼任。学年は三学年にあたる。17歳。
端正な顔立ちだが、男口調であり、傍若無人な態度が目立つ。
紅月と七星の死刑宣告の撤回を報告するために、銀太たちを訪ねてくる。
見た目に合わず、作中でも珍しい、武術を極めた武闘派。

技術:「炸空術」(さっくうじゅつ)
 手を打ち鳴らすことによって、空気を破裂させ、真空により対象を切断する。これはコンプレックスではなく、純粋な技術。銀太は剣術の系統に入る武術と見た。
シンボル:モノクル
コンプレックス:『鎖に繋がれた犬のダイナミズム』
 モノクルを嵌めた左目では、すべてのものが静止して見える。つまり能力者は左目で一瞬一瞬が止まった世界を見て、右目で流れている世界を見ていることになる。

清美一暁(きよみかずあき)

特別科クラスの一人。生徒会遊撃兼任。学年は三学年に当たる。18歳。
細身だが、非常な長身。髪型は常にオールバックにしている。
性格は慇懃で、馬鹿に思えるほど丁寧な口調で話す。
生徒会の職務を全うしようとしない紅月の交渉役を引き受ける。

シンボル:鎖帷子
コンプレックス:『私の名は赤』
 能力者に与えられるダメージ、もしくは能力者が与えるダメージの位置を別の場所に転移させる。

吾妻奈純(あずまなずみ)

特別科クラスの一人。生徒会遊撃兼任。学年は二学年に当たる。16歳。
緊急集会のさい、反抗的な態度を取った男子生徒二名を射殺する。
恒明からは「野蛮な性格」と評される。
生徒会の職務を全うしようとしない七星の交渉役を引き受ける。

シンボル:二丁の散弾銃
コンプレックス:『ライト・マイ・ファイア』

天目小桜(てんめこざくら)

ショッピングモールの住人の一人。光文学園一年普通科。15歳。
犬童をリーダーとした、七星に対する反勢力の一人でもある。
そのコンプレックスを使い、ショッピングモールの住人を暗殺する。
正体を暴かれたさい、仲間の情報を流して命乞いするが、七星に拒否され殺害される。

シンボル:拳銃
コンプレックス:『若きウェルテルの悩み』
 シンボルは驚いた人間に憑依する。その人間がもう一度驚いたとき、身体を乗っ取り、拳銃自殺させる。
 このとき、周りにいる人間の中で最も早く驚いた人間に改めて憑依する。

也則允彦(なりのりまさひこ)

ショッピングモールの住人の一人。光文学園三年六組所属。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
プロレス同好会会長。
銀太はその戦闘能力を高く買ったが、紅月は「馬鹿」と一蹴した。

シンボル:プロレスマスク
コンプレックス:『ボーン・トゥ・ラン』
 身体に触れたものを吸着する。
 格闘技の固め技はほとんどの場合、抜け出す技術も見つけられている。しかしこの能力と組み合わせれば、相性の悪いコンプレックスを持っていない限り、抜け出すことは不可能になる。

毒島慈(ぶすじまめぐむ)

ショッピングモールの住人の一人。光文学園一年八組所属。銀太とはクラスメートである。16歳。
ショッピングモールの反勢力チームの一人。
醜男であり、女性に恨みを持っている。しかし銀太は見た目以上に卑屈な性格に問題があると言っている。

シンボル:???
コンプレックス:『目=気球』
 自分に対して嫌悪した人間の大腸にサナダムシのように寄生する。
 能力者は寄生主から少しずつ栄養を奪い、三日ほどで死に至らしめる。そのあいだ、人質を取っている状態にもなる。

一重柳子(ひとえりゅうこ)

ショッピングモールの住人の一人。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
殲滅戦が始まってからも、自分のコンプレックスを使って周りの人間を欺き、フードコートでくつろいでいた。
身なりを異様に気にし、学園封鎖の中でも衣服の手入れをかかさない。

シンボル:メモ帳
コンプレックス:『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』
 メモ帳を読んだ人間は、そこに書かれた言葉を言うことができなくなる。その言葉を言おうとした場合、言い間違えるようになる。このとき、その人間は自分が別の言葉を言っていることに気がつかない。

八木沼篤(やぎぬまあつし)

ショッピングモールの住人の一人。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
殲滅戦が始まると同時にショッピングモールから脱出を試みるが、赤藤の『夏への扉』の能力を知らなかったために自動ドアに挟まれ、身動きが取れなくなる。
その後、楓子により自動ドアから引きずり出される。楓子に奇襲をかけるも、『茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)』によって返り討ちにされる。
コンプレックスを保持しているが、詳細は不明。

時谷圭吾(ときやけいご)

ショッピングモールの住人の一人。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
赤藤の『夏への扉』により、眼鏡屋に閉じ込められる。そのため、そもそも殲滅戦が始まったことを知らなかった。
銀太の能力で眼鏡屋から救出されるが、同時にその場にいた七星から死刑宣告を受ける。命乞いをするが、七星に拒絶され首を刎ねられる。
コンプレックスを保持しているが、詳細は不明。

殺人犯

第一部のラスボス。
生徒会暗殺。
大室綴、守門恒明、常盤七星、犬童影千代を殺害した。

シンボル:バタフライナイフ
第一のコンプレックス:『フルメタル・ジャケット』
 シンボルでつけた傷を自由に開閉する。この能力は生物にも無生物にも有効。
第二のコンプレックス:『地獄の黙示録』
 シンボルでつけた傷を自由に移動させる。このときの移動速度は人間が全速力で走るよりも速い。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色