最終話 二人を繋ぐ手紙

文字数 1,933文字

『拝啓 ユースケ様
 やっとこっちの状況が落ち着いたので、早速手紙を出しました。元気にしてたかは……聞くまでもないよね、ユースケのことだもん。あれからユズハさんは大丈夫だったのかな? それが一番の気がかりだけど、ユースケならきっと何とか出来たんだろうなとも思ってます。ユズハさんのことを教えてくれたら嬉しいかな。
 何か偉そうな人が私の国の戸籍情報を調べるために私の国の人と連絡し合ってたんだけど、この間ようやく確認出来たらしくて、その結果、私のいた国では私の戸籍は存在してなかったみたい。多分私の両親がそういう届け出?をしてなかったからだと思う。私は法律上、存在しない人間になっちゃった。不思議な感じで、私はあまりショックじゃなかったんだけど、偉そうな人たちも慣れた感じで全然動揺していないのが少しイラっとしたな。私みたいな人はこの世界にはたくさんいるみたい。
 それに何か思うところがあったのか?それとも情状酌量の余地ってやつがあったのか?私は刑期を終えたら望遠国で住むことを許されました。本当に嬉しかったです。ただ、それでも当分ユースケに会いに行けそうにないのが残念で寂しいけど……。でも、これでいつか必ずまた会えるっていう希望がより現実的になって良かったです。
 こっちの生活だけど、多分ユースケが思ってるほどは哀しくはないよ。比較的良い方だと思う。私みたいな違反をした人は、微妙に刑務所の中でも普通の人とは違う区画で過ごすことになっているらしく、私みたいな外国人は案外多かった。その中で、ニナっていう友達が出来た。衣食住も保証されてるし。毎日掃除したり田んぼや畑を耕したり、変な機械の部品の製造を流れ作業でやることになっているけど、今までと違う仕事は私にとってはとても新鮮で楽しいよ!
 外の情報だってその気になれば調べることが出来ます。シンブン?というやつが毎日読めるようになっていて、ニナが毎日朝食のときに私の元へやってきてはそれを読んで食べています。私もそのシンブンを覗き見して、色々なことを新しく知っていっています。その仕入れた情報の中で、ユースケの話が出て来たときは本当に嬉しかったよ。何でも、大学校の卒業研究発表で、何千人といる卒業生の中で十人とちょっとしか選ばれない優秀研究賞ってやつに選ばれたんだって? いよいよ、ユースケが世界中の人から必要とされるようになってきたってことだよね? それを知ったときは、まだ私と離れて一年も経っていないのにもう随分遠いところに行ってしまったんだなあって、シミジミ思いました。そんなユースケが眩しくて、カッコよくて、本当に素敵です。その情報を知ったとき、思わずニナや他の人に自慢しちゃったもん。
 宇宙船は、これならできそう? それとも、ユースケはまだまだって言うかな? 私のミサンガはまだ切れてません。こういう言い方って何か不思議な感じがするけど、このミサンガが切れていないうちはユースケも頑張てるんだなあって心が勇気づけられるし、切れたらきっとユースケもとうとう実現できそうなんだって喜ぶことになるんだろうなあって考えています。
 凄い言い方するけど、私のことはまだ好きですか? 言っておくけど、全然私のこと忘れて、もっとユースケを支えられるような人と結婚したって良いんだからね! 私はユースケが幸せになれるのを一番に祈ってるから。私はユースケに人生を勇気づけられた、それだけで本当に人生で一番大切なものを貰えたって気がして、ユースケに出会えた意味はあったんだって思えるから。
 これからもユースケの研究が上手くいくことを祈っています。応援しています。私も、元気でやっているので心配しないでね。

敬具 フローラより

追伸 上ではああ書いたけど、私は今でもユースケのことが大好きです。変わらないユースケが、何より好きです。いつかの日にも言ったと思うけど、自分の身の回りのことについて話すユースケの生き生きとした話し方に、ああ、この人は本当に人を疑うとかそういうの一切知らないんだなって分かって、一緒にいるだけで温かくなれるの。貴方みたいな人はこっちにもいません。ユースケ、いつかまた絶対会いに行くからね。それじゃあ、元気でね』

『フローラへ

 ユズハは大丈夫! それと、絶対会いに行く!!! あと、俺もずっとフローラのこと好きだから!!! 会いに行くから、またそのときに!!! 話したいこといっぱいあるんだから、待ってろよ!!!

ユースケより

追伸 あの日、俺にユズハの方へ行くように背中を押してくれて、本当にありがとう。行かなかったら俺、絶対後悔してた。その感謝の想いも伝えたい。とにかく、話したいこといっぱいあるんだからな!!!』
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登場人物紹介

ユースケ

主人公。能天気で素直な性格。生まれつき体の弱い妹のユリを溺愛する。

ユズハ

ユースケの幼馴染み。ユースケと違って真面目なしっかり者。

ユリ

ユースケの妹。体が弱く学校に通えず、母親の手伝いをして過ごしている。

タケノリ

ユースケやユズハの幼馴染み。フットサル部に所属する好青年。

カズキ

ユースケたちの友達。ユースケと並んで成績が悪いお調子者。

セイイチロウ

ユースケたちの友達。長身ながら臆病者。ユズハに好意を寄せている。

アカリ

ユースケたちと幼馴染みでユズハの親友。ユースケに好意を寄せる。

ユミ

ユースケたちの同級生で学年一の成績を誇る。

リュウト

ユースケと同期のイケメン枠。工学府に所属する。

ユキオ

臆病でびくびくしている。ユースケ、リュウトと同じく工学府に所属する。

チヒロ

リュウトの彼女。友好関係が広い。社会開発学府に所属する。

フローラ

突如大学校の書店で働き始めたブロンドヘアの美女。

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