第4話

文字数 452文字

 大学に進むころには、私のサボテンラジオ園はちょっとした名所になっていた。
 ステージの中央には、サボテンラジオ第一号の「金鯱」と、第二号でパートナーの「弁慶」がなかよく並んで鎮座している。その周りを、さまざまな珍しいサボテンが取り囲んでいる。私はサボテンを動かすことなくチャンネルを変えられるチューナーを開発していたので、純粋に集合体として美しく見えるような並べ方を追求することができた。また、サボテンは形がよく生き生きとしている方が感度がよいので、毎日の手入れを念入りにした。私にとってサボテンたちは家族も同然だった。
 木戸の横には、私が手書きした番組表が毎日貼り出される(まだ国内の放送はなかったので、それぞれのサボテンが受信する放送局や番組に私が勝手に名前をつけ、曜日ごとにリストにしたものだ。レギュラー番組の改変の時期や、祝日の特番などは事前に知ることができないので、番組表が放送と違ってしまうことはよくあった)。ステージのそばにチューニングのブースを作り、チャンネルのリクエストに応えた。
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