Quest24:開店の準備をせよ その2
文字数 8,135文字
食事を終えた優達は4人でサロンに向かった。
「……一緒に行くって分かってたらもっとマシな服を着てきたのに」
「多分、大丈夫だよ」
優は不安を口にするスカーレットに言った。
確かに彼女が着ている服は自分達に比べて見劣りするが、彼女はバーミリオンの娘だ。
冒険者である自分達とは違い、無下に扱われるようなことはないはずだ。
「……これで相手にされなかったらマジでへこむんだけど」
「ユウに任せときゃ大丈夫だよ」
「そう、ね」
フランの言葉にグリンダが同意する。
「へ~、アンタって信頼されてるのね」
「そうだと嬉しいな~」
それなりに実績を積んでいるとは思うが、過分な評価ではないかと不安だ。
まあ、2人の信頼を失わないようにしなければと思いを新たにする。
「ああ、サロンが見えてきましたよ」
優は目を細めた。
煉瓦造りのサロンの前には前回と同じように黒服が立っていた。
「最初に僕が行きますから3人は後から来て下さい」
「任せるよ」
フランの声に背中を押され、黒服に近づいていく。
10歩ほど手前で立ち止まり、深呼吸を繰り返す。
「どうも、お久しぶりです」
優は大きく手を振りながら黒服に近づき、ペコペコと頭を下げた。
「あ、ああ、あの時の……」
「覚えてくれていて嬉しいです」
黒服はしげしげと優の服を眺める。
「ダンジョンで服をダメにしちゃったんで新調したんですよ。何を隠そう、この服を作ったのはバーミリオンさんの娘さんなんです」
「へ~、あのバーミリオンの」
黒服は納得半分、感心半分という風に頷いた。
「後ろにいますよ」
「……魔道士ギルドのグリンダか」
優が振り返って3人を指差すと、黒服は小さく呟いた。
グリンダの防具は露出度が高いので、そっちが気になっているかと思いきや黒服の眼差しは真剣そのものだ。
「グリンダさんは有名人なんですね」
「それほど大きくない街だからな。彼女を知らない冒険者はいないさ。それにしてもグリンダを仲間に引き入れるなんて、どんな手を使ったんだ?」
「運がよかったんですよ」
流石に魔道士ギルドを辞めた彼女が転がり込んできたとは言えない。
「僕達を通して欲しいんですけど、大丈夫ですか?」
「バーミリオンの娘の服は少し問題だが、無下に扱う訳にもいかないからな」
そう言って、黒服はポケットからメリケンサックを取り出した。
余計な装飾が一切ない無骨という言葉を体現したかのような武器だ。
「バーミリオンさんの作品ですね」
「分かるのか?」
「まあ、文脈的に」
優が苦笑すると、黒服も釣られるように笑った。
「そりゃ、そうだな」
「でも、いい武器だってことは何となく分かりますよ」
本当に何となくというレベルでしかないが、バーミリオンの作った武防具は故買屋で売っている物とレベルが違うような気がする。
「このレベルの武器だと何となく分かるよな」
ええ、と優は頷いた。
「ところで、今日は何しに来たんだ?」
「バーソロミューさんに会いに来ました」
「運がよかったな。ついさっき上に向かった所だ」
優は胸を撫で下ろした。
「ユウ、話はつけられたかい?」
「ええ、通っても大丈夫だそうです」
優がフランに答えると、黒服は苦笑しながら道を譲ってくれた。
「頑張れよ」
黒服に肩を叩かれ、サロンに入る。
やはり、前回と同じく1階にいる人は少ない。
二階に移動して視線を巡らせる。
幸いと言うべきか、バーソロミューはすぐに見つかった。
こちらが歩き出すと、彼は恰幅のよい体を揺らしながら近づいてきた。
「お久しぶりです、バーソロミューさん」
「久しぶりだな、ユウ君。君の、いや、君達の噂は聞いている。随分、活躍しているそうじゃないか」
「これもバーソロミューさんのお陰です」
「いやいや、私は大したことをしておらんよ」
優が差し出された手を握り締めて頭を下げると、バーソロミューは鷹揚に言った。
「今日は何の、いや、積もる話もあるだろう。応接スペースに行くか」
優達はバーソロミューに付き従い、応接スペースに移動した。
バーソロミューはどっかりとソファーに腰を下ろし、手で座るように促す。
「ありがとうございます」
優は礼を言ってからソファーに浅く腰を掛けた。
フラン、グリンダ、スカーレットの3人は背後で控えている。
「美しいお嬢さん方ばかりだ。目の保養になる」
彼はそう言ったが、視線は優に注がれている。
「そう言えば再び大量の魔晶石を発見したと聞いたが?」
「あんなに強いモンスターが5階層に出るなんて思いませんでしたよ」
「……駆け出し冒険者と一緒に魔晶石を採取したと聞いたが?」
「ええ、僕達はやり過ぎちゃいましたから」
やり過ぎた? とバーソロミューは鸚鵡返しに言う。
「同業者のやっかみを受けちゃったんですよ。このままじゃ村八分、リンチされることもあると思って先手を打ったんです」
「なるほど、分断工作と言う訳か」
そういうことです、と優は頷いた。
「それでは冒険者ギルドから睨まれるんじゃないかね?」
「う~ん、扱いにくいと思われるかも知れませんが、何とかなると思ってます」
冒険者ギルドと言っているが、自分に睨まれる覚悟はあるのかと言いたいのだろう。
「何とかなるかね?」
「ええ、僕達は誰にも損をさせていません。確かに小さな視点から見れば他人に損害を与えたように見えるかも知れませんが、もっと大きな視点で……ヘカティアやヘカテボルス王国レベルで見れば何も変わっていません」
ほぅ、とバーソロミューは目を細めた。
「駆け出し冒険者はお金を使い、そのお金は人々の懐を潤し、巡り巡って税金として為政者に還元されます。まあ、バーソロミューさんは分かっていると思いますが……」
「もちろんだとも、試すような質問をして悪かった」
「いえ、いえ、当然のことだと思います」
優は内心胸を撫で下ろした。
金は人から人へ、組織から組織へと移動するだけだ。
「ところで、今日は何の用かな?」
「実は……お店を始めたいと思いまして」
ふむ、とバーソロミューはグリンダとスカーレットを見つめた。
「マジックアイテムと服飾品を扱う店かな?」
「その通りです」
「しかし、服飾品はともかく、マジックアイテムはな」
十中八九演技だろうが、バーソロミューは渋い顔をしている。
「僕達は今の状況を変えたいと思っています」
「どういうことだ?」
「品質や価格、サービスを向上させるためには競争原理が必要です。消費者のためにも選択肢は多い方がいい。そう思いませんか?」
「なるほど、なるほど」
バーソロミューはニヤリと笑った。
最初から優と同じことを考えていたのか、説明を聞いて納得したのか分からないが、悪くない反応だだ。
「ところで、水薬の値段はどれくらい下げられるのかね?」
「最低でも100ルラは安くできる、わ」
グリンダがすかさず答えると、バーソロミューは軽く目を見開いた。
「商品全体で言えば20%くらいかし、ら?」
「将来的には消費者に寄り添った組織を立ち上げたいと思っています。と言っても僕達は冒険者なので、誰かに纏め役をお願いするしかないんですけどね」
「ハハッ、若いのに大したものだ」
バーソロミューは愉快そうに自身の太股を叩いた。
「どうでしょう?」
「……ふむ」
バーソロミューは思案するように腕を組み、顎を撫でさすった。
「難しい問題だが、やる価値はあるな」
「ありがとうございます。僕達が新しい組織を立ち上げた際には纏め役をお願いします」
優が礼を言うと、バーソロミューは苦笑いを浮かべた。
どうやら、新しい組織を立ち上げる予定がないと分かっているようだ。
とは言え、ヘカティアを治める彼にとっては悪くない取引のはずだ。
「よし、許可しよう」
「ありがとうございます。ところで、営業許可証は頂けるのでしょうか?」
「はは、しっかりしているな。今日の夕方にでも届けさせよう」
ありがとうございます、と優は再び頭を下げた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「よくもまあ、口から出任せがポンポン出てくるもんだねぇ」
サロンを出てしばらくすると、フランがそんなことを言った。
「嘘は吐いてないですよ?」
「おまけに悪びれないときてる。ユウは人と話すのが苦手なんだろ?」
「苦手だから名刺を作ったんですよ」
どうだか、とフランは肩を竦めた。
「とても助かっている、わ。私には無理だも、の」
「慣れの問題だと思いますよ」
それでも、誉められて悪い気はしない。
「そうじゃないと思う、わ」
そう言って、グリンダは優の手に自身のそれを重ねた。
ああ、こんなリア充みたいな出来事がやって来るなんて、と歓喜に身を震わせていたらもう片方の手をフランに握り締められた。
それも力一杯。
「ちゃっちゃと冒険者ギルドに行くよ!」
フランが優の腕を引いた次の瞬間、衝撃が両肩を襲った。
グリンダが優の手を握り締めたのだ。
パラメーター的に言えばフランが圧倒できるのだが、本気を出していないのか、拮抗している。
「その手は何だい?」
「フランこそ何のつも、り?」
フランとグリンダは優を挟んで火花を散らした。
「さっさと行くよ!」
フランが優の手を引くと、衝撃が再び両肩を襲った。
見ればグリンダは優の両手を必死に掴んでいる。
「か、肩がもげる」
フランの筋力値は9+5、実に優の4.66――倍である。
グリンダにしても2倍の筋力を持っているのだ。
そんな2人に本気で引っ張られたら千切れてしまう。
な、何かないか、何か! と必死で思考を巡らせる。
ふと脳裏に閃くものがあった。
時代劇で生みの親と育ての親が子どもを巡って争うというエピソードがあった。
その話では大岡越前が2人に白洲で子どもの腕を引かせた。
そして、最後は痛みに耐えかねて泣く子どもの手を放した育ての親を親としていた。
「ふ、2人とも僕のことを、あ、愛しているのなら手、手を放して下さい」
「あたしは1秒でも早く冒険者ギルドに行きたいだけだよ!」
「嫌、よ。ここで手を放したら奪われる、わ」
優は懇願したが、2人はグイグイと腕を引っ張った。
「スカーレット! スカーレット! 助けて!」
「この2人の間に入る勇気はないわ。運がよければ腕1本で済むから」
スカーレットは辛そうに視線を背けた。
プチ、プチという音が体の内側から聞こえたその時、扉がバンッと開いた。
「2人とも何をやっているんですか!」
叫んだのはエリーだ。
いつの間にか冒険者ギルドに着いていたようだ。
彼女の叫び声で我に返ったのか、フランとグリンダは同時に手を放した。
「ユウ君、大丈夫ですか?」
「うう、肩がもげるかと思いました」
「安心して下さい。お姉さんが付いていますからね」
エリーは涙で目を潤ませながら優を抱き締めた。
心配してくれたのだろう。
だから、彼女の息がとても荒いことを指摘するべきではないのだ。
「え、エリーさん、苦しいです」
「失礼しました」
エリーは優から離れると、気まずそうに咳払いした。
「ところで、今日は何の用ですか?」
「お店を開くことになったので、3人の共用口座が作れないか相談に来たんです」
「共用口座、ですか?」
エリーは訝しげに眉根を寄せた。
「……えっと、3人で出資して開店資金にしようと思ったんですけど」
「お金の管理をしやすくしたいということですね」
「その通りです」
打てば響くとはこのことか。
エリーは皆まで言わずとも察してくれたようだ。
察しのいい職員は実にありがたい。
「できますか?」
「ええ、大丈夫です」
エリーは軽く胸を叩いて請け負った。
「では、こちらに」
エリーに先導されて冒険者ギルドに入ると、視線が集中した。
ただ、それは以前のような悪意に満ちた眼差しではない。
窺うような視線、好意的な視線が半数を占めている。
こちらに向かってペコリと頭を下げる若い冒険者もいる。
もちろん、若い――駆け出し冒険者が味方になってくれたと楽観はしていない。
儲けさせてもらったから悪口を言うのは控えよう程度の変化だろう。
風向き次第で再び悪意を向けてくる可能性はある。
金の切れ目が縁の切れ目、友情は金で買えないのだ。
エリーはカウンターの中に入ると書類を差し出してきた。
優は書類の文章を目で追い、ある一点で動きを止めた。
「そこは商会……お店の名前です」
「どうしますか?」
「あたしに聞くんじゃないよ」
「任せる、わ」
フランは顔を顰め、グリンダはいつもと変わらぬ表情で言った。
名前の候補くらい決めていると思ったのだが、見込み違いだったようだ。
「じゃあ、『グリンダの店』で」
「もう少し考えた方が……」
「こういうのはシンプルな方がいいかと思って」
優は苦笑いを浮かべるエリーに答えた。
さらに文章を読み進めると、署名欄が複数あった。
「署名欄が複数あるんですが?」
「ユウ君達みたいに共同出資している商会もありますから」
なるほど、と優は頷いた。
「読み終えましたか?」
「はい」
優は店名欄と署名欄に記入し、その場から退いた。
「ったく、店をやるってのは面倒臭いねぇ」
フランはボヤきながら、グリンダは無言で署名した。
「どれくらい口座に入金しますか?」
「5万ルラずつお願いします」
「ユウ君、フラン、グリンダの3名で宜しいですね?」
「はい、それでお願いします」
念を押すように問い掛けてきたので、大きく頷く。
「クエストの発注はグリンダさんにお任せします」
「私がする、の?」
「アンタじゃないと相場が分からないだろ」
フランは溜息交じりに言った。
「あたしらはお茶を飲んでるからしっかりやりな。アンタの夢なんだろ?」
「そう、ね」
グリンダは力強く頷いた。
「さて、移動するよ」
優達は空いているテーブル席に着いた。
優は壁際の席、スカーレットはその隣、フランは対面の席だ。
「ご注文はお決まりですか?」
「豆茶3つ」
フランは注文を取りにきたウェイトレスに指を3本立てて言った。
「奢ってくれるの?」
「あ゛? 自分の分は自分で払うに決まってんだろ」
「80万ルラも稼いだくせにケチね」
フランは身を乗り出して凄んだが、スカーレットは負けじと言い返した。
この世界の女性は随分と図太い性格をしている。
「いつまでもあると思うな、親と金って言うだろ? その気になって無駄遣いしてたら金なんてすぐになくなっちまうよ」
ウェイトレスはクスクスと忍び笑いを漏らしながら厨房に向かった。
「アンタのせいで笑われちまっただろ」
「あたしのせいじゃないわよ」
チッ、とフランは舌打ちして背もたれに寄り掛かった。
「この後はどうするんだい?」
「そうですね。うちに帰って、商品の値段やレイアウト、オープンの日を決めたり、広告を作ったりって感じですね」
「そんなにやることがあるのかい?!」
フランは悲鳴じみた声を上げた。
「……今のは素人考えですから」
グリンダに新規オープンの経験があればかなり楽になるのだが、そうでない場合は手探りで開店準備を進めるしかない。
「プレオープンをするのも手かも知れませんね」
「ぷ、プレ?」
フランが訝しげに眉根を寄せる。
「プレオープンです。正式なオープン前にお客さんを招待して問題点を洗い出すんです」
ちょっと、とスカーレットが肘で脇腹を小突いてきた。
「何?」
「どうして、そんなアイディアがポンポン出てくるの?」
「これくらい普通だよ、普通」
「まあ、言いたくないならいいんだけど」
スカーレットは拗ねたように唇を尖らせた。
今一つ納得していないようだが、日本で中学生をしていればこのくらいの知識は身に付く。
「お待たせしました。豆茶です」
ウェイトレスが豆茶を優達の前に置いた。
「ご注文はお揃いでしょうか?」
「ああ、揃ってるよ」
「他にご注文がある時はお呼び下さい」
ウェイトレスは一礼すると別のテーブルに向かった。
フランは豆茶を飲むと背もたれに寄り掛かった。
「疲れたんですか?」
「いや、そんなんじゃないよ。自分の店を持てると思ったら……」
「アンタの店じゃないでしょ」
「5万ルラも出してんだからあたしの店でいいだろ!」
フランはムッとしたように言った。
開店資金の1/3を出しているのだから間違いではない。
「じゃあ、それでいいわよ。で、疲れたんじゃないなら何なの?」
「感慨に浸ってたんだよ」
「は?」
「底辺冒険者が自分の店を手に入れたんだ。感慨に浸ってもおかしくないだろ」
そう言って、フランはグラスの縁に指を這わせた。
「そういう意味じゃ到達点ね。引退は考えてないの?」
「後遺症が残るような怪我でもすりゃ考えるけどね。あたしはユウの気が済むまで付き合うつもりだよ。グリンダは……まあ、あたしとはベクトルが違うけど、最後まで付き合うつもりみたいだね」
「なんで、こいつの気が済むまでなのよ?」
「ユウの家族はダンジョンで行方不明になってるんだよ」
スカーレットは気まずそうな表情を浮かべた。
「まあ、骨くらいは拾ってあげないとね」
「……そう」
努めて明るく言ったつもりなのだが、スカーレットの表情は晴れない。
グリンダとエリーが戻ってきたのはそんな時だった。
「終わった、わ」
「2人ともこちらの書類に署名をお願いします」
エリーが分厚い書類の束をフランの前に置いた。
「こいつは何だい?」
「見ての通り、クエストの発注書です」
「そんなこと見りゃ分かるよ。あたしが聞きたいのは発注書が目の前にある理由だよ」
「報酬が共用口座からの引き落としなので、3人の署名が必要なんです」
「は~、面倒臭いねぇ」
どうぞ、とエリーがテーブルの上にペンとインクを置いた。
「……薬草の採取量が少ないのはどうしてだい?」
「採取量を多くすると依頼達成までに時間が掛かるから、よ」
グリンダがフランの質問に答える。
採取量を少なめに、クエストの発注数を増やした方が効率はいいだろう。
「ったく、面倒臭いねぇ」
フランはボヤきながら発注書に署名していく。
「……解毒薬、抗麻痺薬に、気付け薬まで作るのかい?」
「魔道士ギルドで扱っていた商品は全て作る、わ」
そう答えるグリンダの瞳はギラギラと輝いている。
口調がいつも通りなので分かりにくいが、闘志が溢れているようだ。
「じゃあ、薬を入れる瓶も必要ですね」
「あたしの方で手配しておくわよ」
優が視線を向けると、スカーレットは溜息交じりに答えた。
「で、いくつ必要なの?」
「最低でも300本は欲しい、わ」
「……300本」
グリンダが呟くと、スカーレットは神妙な面持ちで言った。
「無理な、の?」
「一カ所じゃ厳しいと思うから何カ所かに声を掛けてみるわ」
「球状に加工した魔晶石も欲しいのだけれ、ど」
「OK、そっちも何とかするわ」
やはり、溜息交じりだ。
「キングサイズのベッドもお願いします」
「……分かったわよ」
スカーレットは深々と溜息を吐いた。